

早稲田短歌会を経て、現在「羽根と根」同人で活動する
佐々木朔(ささき・さく)さんの第一歌集。
価格 ¥2,200(本体¥2,000)
書肆侃侃房(2025/02発売)
帯文:飛浩隆/栞:川野芽生・榊原紘・平岡直子
著者サイン本ございます。こちらから!
サイン本完売致しました!

ウェブストアで『往信』(サイン本含む)をご購入のお客様には、佐々木朔さん書き下ろしのショートエッセイが読めるペーパーを1部、特典としてお付けします!(店舗受取を含む)
※特典は終了いたしました。



早稲田短歌会を経て、現在「羽根と根」同人で活動する
佐々木朔(ささき・さく)さんの第一歌集。
価格 ¥2,200(本体¥2,000)
書肆侃侃房(2025/02発売)
帯文:飛浩隆/栞:川野芽生・榊原紘・平岡直子
著者サイン本ございます。こちらから!
サイン本完売致しました!

ウェブストアで『往信』(サイン本含む)をご購入のお客様には、佐々木朔さん書き下ろしのショートエッセイが読めるペーパーを1部、特典としてお付けします!(店舗受取を含む)
※特典は終了いたしました。

「さようなら、二重に愛するお方よ! ア トゥーリン トゥランバール トゥルン アンバルタネン、運命によって支配された運命の支配者よ! ああ、死ぬのが仕合せです!」
『指輪物語』の前史。よりスケールが大きく非人間的で、たぶん人生で一番読み返した本。私にとっての神話。カタカナの登場人物や地名が大量に出てきても、一人の人物に呼称が十個あっても臆さなくなったことは、その後の(主に海外文学の)読書を大いに助けただろう。
「さようなら、二重に愛するお方よ! ア トゥーリン トゥランバール トゥルン アンバルタネン、運命によって支配された運命の支配者よ! ああ、死ぬのが仕合せです!」
『指輪物語』の前史。よりスケールが大きく非人間的で、たぶん人生で一番読み返した本。私にとっての神話。カタカナの登場人物や地名が大量に出てきても、一人の人物に呼称が十個あっても臆さなくなったことは、その後の(主に海外文学の)読書を大いに助けただろう。
ジュールはこのあとその一千年に及ぶ少年時代よりも、はるかに長い生を生きることになったが、その朝のジュリーの姿、赤い瓦と青い空のただなかに一本の若木のように佇っていたジュリーの白さを忘れることはなかった。
美しさも、痛みも、感情も、まるで脳に鮮烈な映像が流し込まれたかのように体感させてくれる文章。栞文で私の歌について「ある事柄の、前後の時間が揺れている」と評していただいたけれど、それはどこかで飛浩隆の文章を範としてきたからだと思う。起床から連作を始めたがることもこの小説の影響かもしれない。
「人間の行動は、お料理のようなもの、思想や感情は調味料なの。さくらんぼにお塩をかける人も、お菓子にお酢をかける人も、将来、ろくなことになりはしない……」
事典小説として有名? だけれど、三つの宗教による(とされる)書が一巻に収められているという点にこそ面白さがある気がする。書によって項目立ても、同名の項目の記述も異なる。登場人物は夢から夢へ、項目から項目へ渡り歩き、転生する。物語の単線性にあらゆる角度から抗する小説。
「……知ってるだろう、あんただって? そうすれば人間たちのいる本当の時代へ帰れるんだ、人間らしい人間のいるところへ。ほんとは、こんな過去につなぎとめられてるんじゃない。こんな原始惑星に」
「ビームしておくれ、ふるさとへ」が特に好き。終盤の唐突な展開は、小説としてはほとんど破綻している気がするけれど、破綻こそが痛切さを感じさせることもある。
そして、後々になって我が国民の宝を豊かにしてくれるのは相も変わらず、とりわけ学校の教師から憎まれ、しばしば罰せられ、道を踏み外し追放された輩なのである。しかし多くの者は――どれくらいの数になるか誰が知ろう?――静かな反抗のなかで消耗し、破滅していくのだ。
「まるで自分のような」主人公の破滅が痛快で、十代のころは道を踏み外したと感じるたび読み返していた。中高一貫男子進学校の入学前の課題図書にこの本を選んだ先生は偉かったと思う。
こうしてわたしには、自分が他人のことばによってちびちびと食われてゆく、うわさ話のエーテルの中に溶かされてゆくのが見える。しかもこの「うわさ話」は、わたしのことが話題でなくなってからも、なおつづけられてゆくことだろう。益もない、しかし倦むことを知らぬ言語のエネルギーが、わたしについての追憶にさえ打ち勝つことだろう。
人生でもっとも役に立った恋愛ハウツー本。人間関係でしんどいときに頓服する麻薬。
小説などではよく最後に女が死んでその死体がとてもきれいに見えるものです。でもわたしは美しい死体にはなりたくない。
子どものころ、近所の高校で観せられた演劇に出てきた、飛び降りてから地面に叩き付けられるまでに途方もなく後悔したと泣き叫ぶ少女の幽霊。おそらく「教育的」だったその劇に植え付けられたトラウマを、文章の奔流で押し流してくれた本。(性)暴力について、読者の属性にかかわらずその被害を感覚させる小説だとも思う。
行きて負ふかなしみぞここ鳥髪(ルビ:とりかみ)に雪降るさらば明日も降りなむ
好きな歌人を聞かれたらまず山中智恵子と答えるし、勿論好きな歌はたくさんあるけれど、突き詰めれば好きなのはこの一首、もっと言えばそのなかの「さらば」の三音で、そのことをずっと考えている。世界の法則を書き換える三音。憧れるし、自分の歌でも、これに負けないなにかを成したい。
夏の本棚にこけしが並んでる 地震がきたら倒れるかもね
蝶や黄金虫の羽根が好きだろう肥沃さがあなたのいいとこだろう
はじめて読んだときはよく分からない歌が多く、戸惑った。しばらく経って、散歩かなにかをしていたとき、そんなことはまったく考えていなかったはずなのに、突然、五島諭の歌が分かったと感じた。その瞬間から、私は本当の意味で「歌人」になったのかもしれない。
モスクワへ! モスクワへ! モスクワへ!
長編小説が不得意なのにうっかりロシア文学専攻に入ってしまったぼんくら学生を救ってくれたのがチェーホフ。学生時代は小劇場の演劇をけっこう観ていたけれど、チェーホフをやると知ったらできるだけ足を運んでいた。多面的で、いろいろな感情を乗せられる台詞が多いから、演出によって印象がぜんぜん違って面白かった。
「なぜおまえたちはタンクの壁を叩かなかったんだ。なぜタンクの壁を叩かなかったんだ。なぜだ。なぜだ。なぜだ」
なぜだ。なぜだ。なぜだ。犠牲者たちへの問いの形を取りながら、その実は世界の不条理への糾問だろう。月並みな言葉だけれど、読了後「文学の力」というものについての考えが頭から離れなかった。作者が爆殺されてから五十年経っても続いている不条理が、一刻も早く、不可逆に終わることを願う。
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