紀伊國屋じんぶん大賞2013
(2013年1月~11月出版の人文書/第4回)
紀伊國屋じんぶん大賞2013 大賞
『動きすぎてはいけない-ジル・ドゥル-ズと生成変化の哲学』
千葉雅也さん 受賞コメント第4回の紀伊國屋じんぶん大賞に選んでいただきまして、ありがとうございます。
今回が初の単著で、出版して半年も経っていませんから、実に驚きました。すぐにこうしたご評価をいただき、気恥ずかしいというか、戸惑ってもいます。
快速で読める本ではないでしょうし、あるいは、分かる/分からないのバランスがあちこちで変わる本でしょうから、多くの読者に恵まれているのは、本当にありがたいことです。序論では、情報社会における「接続過剰」の状況から部分的に「切断」される、という同時代のテーマを出していますが、本論で行われるのは、細かいテクスト分析です。本書では、同時代のテーマを考えるためにこそ、歴史をさかのぼって細かく字句を解釈しなおす必要がある、ということを体感してもらいたいのです。
タイトルに掲げた「動きすぎてはいけない」というフレーズは、ドゥルーズ自身の文、「生成変化を乱したくなければ、動きすぎてはいけない」からの引用であり、本書は、この箴言めいた文をめぐる長い注釈です。また、切断という言葉にしても、その本体は、『千のプラトー』の「序――リゾーム」で言われる「非意味的切断」であり、本書はこの概念をめぐる長い注釈でもあります。他にも焦点になりうる言葉は色々含まれていますので、「この本は、生成変化論であると言っているけれども、実のところは、生成変化論というよりも◯◯論ではないのか」といった解釈の可能性を感じてもらえたら、嬉しいです。
本書をひとつの港として、哲学や、芸術論・批評や、精神分析などの本も、散策してみてください。歴史のなかで多様に吟味されてきた概念や議論が、皆さんの生に少しでもヒントを提供することがあるとしたら、人文学に携わるものとしてそれ以上の喜びはありません。
千葉雅也(ちば・まさや)
1978年生まれ。哲学/表象文化論。フランス現代哲学の研究と、美術・文学・ファッションなどの批評を連関させて行う。NHK・Eテレ「哲子の部屋」に出演するなど、いま注目の哲学者。*プロフィールは当時のものです。
紀伊國屋じんぶん大賞2013
(2013年1月~11月出版の人文書/第4回)
*「紀伊國屋じんぶん大賞2013」は2013年1月~11月に刊行された人文書を対象とし、2013年11月5日~12月10日の期間に読者の皆さまからアンケートを募りました。
*当企画における「人文書」とは、「哲学・思想、心理、宗教、歴史、社会、教育学、批評・評論」のジャンルに該当する書籍(文庫・新書含む)としております。
*推薦コメントの執筆者名は、一般応募の方は「さん」で統一させていただき、選考委員は(選)、紀伊國屋書店一般スタッフ(当時)は(紀)を併記しています。

