紀伊國屋書店:紀伊國屋じんぶん大賞2020 読者と選ぶ2019年の人文書ベスト30

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紀伊國屋じんぶん大賞2020 読者と選ぶ2019年の人文書ベスト30

紀伊國屋じんぶん大賞2020

(2018年12月~2019年11月出版の人文書/第10回)

紀伊國屋じんぶん大賞2020 大賞
『居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書』
東畑開人さん 特別寄稿
居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書

「人間」という巨大な世界に向き合う

 紀伊國屋じんぶん大賞の受賞、格別な思いでいます。その理由を以下に書きます。

 僕の専門分野は臨床心理学です。この学問はここ20年で着実に専門化を遂げてきました。公認心理師という国家資格ができて、心の専門家になるための訓練制度やカリキュラムが整備されました。僕らは膨大な専門用語を習得し、専門的な技法を身につけるようになりました。

 そのことは基本的には良きことです。心という傷つきやすいものを扱ううえで、きちんとしたトレーニングがなされて、プロフェッショナルとしての倫理を内面化することは不可欠なことだからです。

 だけど、そのことによって臨床心理学は少しずつ「人文」から離れていったように思います。

 かつて臨床心理学の書物は「人文」の世界にたしかに存在していました。しかし、それは徐々に純粋な専門家向けの本か、セルフヘルプに役立つユーザー向けの本かに引き裂かれていきました。その両者のあわいである「人文」の色彩が薄くなっていったように思うのです。

 専門化するとは、つまりそういうことです。

 しかし、僕らの仕事は本質的には人文的なものです。なぜなら、「心」というものの性質上、僕らの仕事は「人間が生きていくこと」に関わらざるをえないからです。それはまさに〝Humanities=人文〟の領域です。

 実際、『居るのはつらいよ』で取り上げたのは、僕らの業界では多くの人が知っている基礎的な概念や理論ですが、それらの知を学んだとき、僕はただ専門家として知識を習得しているという以上に、人間についてのなにがしかに触れているという実感をもっていました。そして多くの同業者と同様に、それこそがこの学問の魅力だと感じていました。

 今回の受賞が格別であったのは、そのような人文知としての臨床心理学の蓄積を、多くの人と共有できた証のように思ったからです。

 僕らは小さな場所で仕事をしています。小さな施設で、小さな部屋で、小さな声で。だけど、そこには「人間」という巨大な世界が広がっています。そういうことを語ることができる臨床家であれるよう、これからもこの仕事に向き合っていきたいと思っています。

東畑開人さん
©千葉雄登

東畑開人(とうはた・かいと)
1983年生まれ。京都大学大学院教育学研究科博士課程修了。沖縄の精神科クリニックでの勤務を経て、2014年より十文字学園女子大学へ。准教授。2017年に白金高輪カウンセリングルームを開業。臨床心理学が専門で、関心は精神分析・医療人類学。主な著書に、『美と深層心理学』京都大学学術出版会、『野の医者は笑う』誠信書房、『日本のありふれた心理療法』誠信書房がある。本書『居るのはつらいよ』で、第19回大佛次郎論壇賞受賞。

*プロフィールは当時のものです。


紀伊國屋じんぶん大賞2020

(2018年12月~2019年11月出版の人文書/第10回)

*「紀伊國屋じんぶん大賞2020」は2018年12月~2019年11月(店頭発売日基準)に刊行された人文書を対象とし、2019年11月1日~12月10日の期間に読者の皆さまからアンケートを募りました。
*当企画における「人文書」とは、「哲学・思想、心理、宗教、歴史、社会、教育学、批評・評論」のジャンルに該当する書籍(文庫・新書含む)としております。
*推薦コメントの執筆者名は、一般応募の方は「さん」で統一させていただき、選考委員は(選)、紀伊國屋書店一般スタッフは所属部署(当時)を併記しています。

紀伊國屋じんぶん大賞2020 👑 大賞 👑

推薦コメント
ひょんなことから沖縄の精神科デイケア施設で働くことになった心理士。そこではただ「居ること」が求められた! なにもしないことはこんなにも難しい。施設のスタッフやメンバーたちとの触れ合いの中でケアとセラピーの関係に思いをはせる。普段われわれが無意識的に感じ、うまく距離をとっている他人との関係性。日常から少しはみ出た人たちと出会い、自分の日常でのあり方にも疑問をもつ。ほのぼの、笑い、そして感動もありのエンタメ冒険小説(?)心理学関係者、デイケア・サービスに興味がある方はもちろん、なんだか最近せかせかして疲れているなと感じるあなたへ贈る癒しの本です。
玉本千幸/新宿本店
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ケアとセラピーの違いを明確にし、病む人にとって何が治癒的な関わりとなるのかが物語のように読みやすく書かれていて、臨床家必読の一冊だと思う。専門書的な内容が面白く読めるので心理療法や精神分析を身近に感じられ、臨床家でない知り合いにも薦められる。
佐藤ちひろさん
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その思想的な潜在性は予感しながらも、「ケア」という営みが一体どういうことなのか、実はよくわかっていなかった。その実際は「ただ、いる、だけ」。実在を肯定し保護するところの「ケア」は、現代社会の大きな課題であるフェミニズムをはじめ、グレタ・トゥンベリさんや伊藤詩織さんらが強いられている"一人での闘い"などを考える時、重要な鍵概念だと思う。
(選)小山大樹
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「ただ居るだけ」それがどれだけ負担となるのか、本書を読み進めていくと実感をともなって想像することができる。ケアとセラピーとはそれぞれどのようなものかを徹底的に考え抜く。血を吐きながら「居る」ことで見えてくる。体験を物語ることで著者が救われることはあっただろうか。笑ったり頭を抱え込んだりしながら読むなかで、そのような思いになった。
橋本亮二さん
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デイケア施設で働く心理士の著者が、「ただ座っているだけ」の居心地の悪さと、そこに隠された意義を、一人の人間として捉えた傑作。人間の価値が「生産性」で測られる時代になった。私たちはみな何処かの弱者。"誰かの自由を犠牲にして、自分たちだけが自由になることはできない"(高橋源一郎)
(選)池田匡隆
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2位

推薦コメント
「みんなが差別を批判できる時代」......世の中に存在する差別や差別をめぐる出来事について、いくつかの関連書をもとに論考された一冊。感情的にならずあくまでも淡々と書かれているのが印象的だ。「差別」と聞くと、なぜか遠い場所の言葉のような気がする。それはきっと「差別」について何も知らないからだと思う。だからこの本を読む。「知らなかった」でやり過ごしてしまわないように。
木村麻美/新宿本店
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「差別をやめろ」と声を荒げる人たちの、その目的はわかるけど、なんか言い方に引っかかる。正しいことばのはずなのに、その口調の強さに乗り切れない。そんなあなたが抱えてるかたちにならないもやもやは、きっと大事な何かを含んでる。優しい世界を求めるあなたに、寄り添ってくれる批評のことばがここにある。
(選)中島宏樹
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「いま目の前にある分断にどう向き合えばいい?」という問いについて考えるための優れた道具となる〝使える〟一冊。
広平稲泉さん
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現代の差別の構図について、これ以上ないほどクリアに解明してみせた一冊。本書の最も大きな功績は、左右上下の思想の別なく読者に届いたことだろうと思う。本書を下敷きにすることによって、初めてわたしたちはさまざまな議論が始められるのだ。
住本麻子さん
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3位

推薦コメント
研究という最高の楽しみを大学に閉じ込めておくのはもったいない。野武士のような研究者たちによる、人生を好き勝手やるための材料集。読者を"あさって"の行動へと駆り立てる編者の文章にも注目。ど迫力の山本哲士さんインタビューはコピーして持ち歩いています。
塩原淳一朗さん
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所属のない人間が研究成果を広く世に発表する、一昔前は困難であったことがネットの発達により現在は多くの人に開かれている。しかしオープンなはずの現代社会でも在野の研究者困難は多いのが現実。本書はその実例と可能性を提示する。この本を読んで「こんな自由なやり方もあるのか......」と著者達に続く在野研究者たちに期待したい。
(選)生武正基
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かつてない刺激的な奇書といっていいだろう。大学の外の学問なんて、かつてはトンデモと相場が決まっていた。しかし、大学が危機にある今、本来の意味でのアカデミックな生き方がここにある。進路に迷う学生にこそ読んでほしい。職業生活を送ることと、知的生活を送ることは相成り立つのだ。
もとこさん
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研究するとはどういうことだろうか。研究というものは大学という枠のなかだけのものなのだろうか。大学という組織に属さずに、いろいろな職業につきながら「研究」を続けている研究者十数人の、研究の実践と方法が書かれた本書。研究が続けたくて修士、博士に進みたいけど、大学の教員になれるかも分からないし、とお悩みの大学生・大学院生にぜひ読んでいただきたい一冊。明日はないけど明後日はきっとあるという不思議な明るさにはげまされるはずだ。
中山修一さん
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4位

推薦コメント
フェミニズムの観点から、『シンデレラ』や『アナと雪の女王』など、多くの人たちに愛されている作品にも遠慮なく嚙みつく問題作。これまで純粋に楽しんでいた美しい物語から、無意識のうちに押しつけられていた価値観に気づいたとき、ぞっとしました。
藤井茜さん
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フェミニズム批評の視点によって、作品鑑賞はもっと面白くなるということを鮮やかに、軽やかに実践した痛快な一冊。そのことを多くの読者に伝えるために選ばれたであろう、「不真面目」さという戦略は切実なものと思われる。大ヒット映画や著名作品など身近な題材から、一歩踏み込んだ問題に自然に導いてくれる。
(選)藤本浩介
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5位

推薦コメント
香港在住のタンザニア人たちの破天荒な社会を参与観察した記録は読み物として純粋に面白い。また、彼らの〝いまここ〟を生きる姿勢、「誰も信頼できないし、誰でも状況によって信頼できる」という弾力性の高い考え方は非常に示唆に富む。
S・Oさん
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香港に集まるアフリカ系交易人によってゆるやかに築かれた経済システムやセーフティネットは、「完全」を求め、「不確実性」をできるだけ排除しようとする既存のシステムと比べると、一見不完全で不確実性に満ちあふれたものに感じられる。しかしながら、「チョンキンマンションのボス」であるカラマをはじめとする、彼らのいきいきとした魅力あふれる描写には、どこか息苦しさを感じざるをえない私たちの世界を乗り越えていくための、なにか大きなヒントのようなものが、隠されているようにおもいます。
(選)林下沙代
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6位

推薦コメント
ライプニッツ、フッサール、フロイト、ダマシオ、デリダなど、様々な人々による記号論と脳科学に関する知見を自由自在に行き来しながら、現代の人文知が扱うべき現場を明確に照らし出した意欲的な著作で、今年発売された人文書の中で最も衝撃を受けました。
小林茂さん
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難しい内容かと思って読み始めたが、易しい口語での説明に徹しており、とてもわかりやすい内容だった。世界中の言語が環境の輪郭を象形化し記号化したものが元になっている話を講師の二人がわかりやすく驚きを持って伝えている。読者としても驚き、新しい発見を共有できる講義であった。
白井正輝さん
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7位

推薦コメント
間違いなく2019年を代表する1冊。母と子の視点からイギリスの中学校生活が、抜群の観察力をもって描き出される。自分と他者、拒絶と寛容......子どもが日々のなかで向き合う問題は、個々の家庭の問題にとどまらず、その街の、その国の、そして世界の問題に否応なく接続していることを気づかせてくれる。
(選)相澤哲洋
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子どもが、小学校、中学校と進学するなか、人種や階級といった差別と向き合える力をつける様子が描かれており、『子どもたちの階級闘争』で幼児だった子がこんなに大きくなって、と、うれしく読んだ。
岡庭由佳さん
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8位

推薦コメント
きちんとメモをとれる全盲の女性、下半身不随なのに痛みを感じる男性。11人の障害者の声を集めるとそこには今までみたことのなかった体と記憶の不思議な世界がまっていた! 世界って、人って本当に無限大だと感じること間違いなし。読後は自分の体との関係についてしみじみと考えたくなります。
玉本千幸/新宿本店
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ボタンを留めるのに苦戦する幼い子を見守りながら、普段の生活で何気なく行っている行動は、経験を重ね記憶した体によるものなのだと思い至る。本書は、そんな個々の体に刻まれた記憶・時間性、そして体と心の不可思議な関係という迷宮に読者を誘う。私の体の私らしさは、どのように育まれてきたのか立ち返る契機を得た。
(選)津畑優子
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9位

推薦コメント
タイトル通りの本である。本当に。なんだこれはとおもったがタイトル通りの本なのだ。近代文学について学校の授業でさらりと触れた程度の私にとっても、明治の文学はその当時のよほどの天才が残したものであり、さらに通俗的な読み物が溢れていたことは想像ができる。しかしその庶民に楽しまれた読み物がどんな様子であったか、想像もしたことが無かった。題材は舞姫だけにとどまらず、近代日本の小説の成り立ちからたどることができる。なんにでも馬丁が出て活躍しまくる。読後に暗い映画を見たが馬丁が出てくれば万事解決と思いながら鑑賞するくらいに馬丁が強い。本書によって現代と当時の価値観の違いに驚嘆するもよし、はたまた引用された小説から明治の空気を吸い込むもよし、とにもかくにも作者の探究心に驚かれたし。その知の力はまさしく今年の人文書の代表と言っていいほど私達の手元を照らしてくれている。
古賀那由美さん
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忘れ去られた「明治娯楽物語」を発掘することで、日本近代文学を新しい視点から洗い直したユニークな文学史研究書。「明治娯楽物語」は荒唐無稽でユーモアたっぷり。「こんな小説が存在したのか!」という驚きに加え、著者の機知に富んだ語り口は抱腹絶倒。まさか文学史研究で大笑いするとは思わなかった。
川本直さん
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10位

推薦コメント
ポップな表紙と帯に誘われて、軽い気持ちで手に取って、そして読み進めていくうちに「急に具合が悪くなる」。読了後に動けなくなる本などそうそうあるものではない。生と死を巡る哲学者と人類学者の文字通り全身全霊の往復書簡を堪能して欲しい。
(選)松野享一
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壮絶である。なぜなら、見送られる者と見送る者とのいのちをかけた対話(往復書簡)である。この場では、生きること、死ぬことは、もはや「観念」ではない。「いま」「ここ」に生きると踏み出すものに贈られた、勇気の物語だろう。哲学者のご冥福を祈りながら。
池田昌恵さん
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11位

推薦コメント
人間の知性が持っているダサカッコワルイ部分を「天然知能」と呼んでみることから始まる、人間知性の特異性とその可能性。外部という未来に開かれた知性のあり方が、損なわれようとしている私たちの思考をその天然さでもって導いてくれる。天然知能由来の、自由な知性を携えて。
(選)中島宏樹

12位

推薦コメント
自分がいま生きている世界は、こんなにも豊かで美しいのだということを、「言葉」で見せてくれた本。小学校から大学まで、自分は16年間学校教育を受けたけれど、そこでは知り得なかった、本当の意味での「学問」の喜びを、この本に教えてもらいました。
MHさん

13位

推薦コメント
著者は大乗仏教の「華厳経」と最新科学を結びつけることにより、人の心の言葉にできない部分に光を当てる「レンマ学」を立ち上げた。そこで思い浮かぶのが、ウィトゲンシュタインの超有名な言葉「語りえぬことについては、沈黙しなければならない」。語りえぬこととは何だろう? それを探求する「レンマ学」の挑戦から目が離せない。
幸田一男/広島店

14位

推薦コメント
戦争に反対する唯一の手段は、各自の生活を美しくして、それに執着することである。吉田健一の言葉は、今こそ知られてほしい。若手中心の企画で、新しい本が出たことが本当に嬉しいです。酒や食べ物のエッセイから読み始め、詩の翻訳、評論、小説と辿ってきたのですが、その幅広い活動を網羅してくれているすてきな本です。
佐々野悟さん

15位

推薦コメント
文化人類学という広くて深い器の中には、ブリコラージュによって集められた「野生の思考」たちがいっぱい詰め込まれている。「時間と空間を超える自由な想像力」が、日常的な疑問と抽象的な難問の間を自在に行き来する思考の筋道を、多彩に多様に準備してくれる。そんな文化人類学の思考法を少しのぞいてみませんか?
(選)中島宏樹

16位

推薦コメント
現代に生きるわたしたちは、古くなったものを捨て、新しいものを次々と購入する。そのため、「腐敗」や「分解」といった再生工程に目を向けることが少ない。「分解」を中心に据えた本書は、わたしたちの凝り固まった一方的で直線的な事物の据え方を柔らかくし、循環可能な円環的思考を提示してくれる。
山田萌果/札幌本店

17位

推薦コメント
絵画や彫刻だけでなく、舞台やダンス、インスタレーションまでを含む芸術制作全般に関して、その内実をひたすら「かたち」そのものが持つ思考のあり方から読み解こうとする、精密で徹底的な批評集。抽象的な概念と具体的な「かたち」の間の、決してどちらか一方に還元されない、緊張感に満ちたせめぎ合いが全編にわたって持続する。
(選)藤本浩介

18位

推薦コメント
平成の日本が育ててしまった闇を正しく葬るために必読の労作。「右傾化」や「ネトウヨ」は他人事になりがちだが、彼ら自身の論理と多様なクラスタの相関図を内在的に描き出す本書のアプローチで、実は自分も近いところにいたのではないかと震撼させられた。
(選)野間健司

19位

推薦コメント
生物学の巨人ダーウィン。彼の尊敬する二人の神々︱︱リンナエウスとキュビエは、老アリストテレスと比べれば単なる小学生に過ぎなかった。「生物学者アリストテレス」は自然界をいかに豊かに理解し、生物学を構想したのか。現代生物学者の手によって詳らかにされる進化論以前の生物学への流麗なる招待状。
(選)井村直道

20位

推薦コメント
時間の流れはわたしたちに固有の「特殊な眺め」に過ぎないことを解き明かし、現代物理学の知見を感覚的に説明してくれる快著。時間をめぐる考察は、人間とは何なのかという問い(そして答え)へとたどり着く。
(選)相澤哲洋

21位

推薦コメント
西周という、多くの日本人が名前を耳にしたことはあるが、その業績の本当の価値はまだまだよく知られていない偉人に光を当てなおす一冊。西は「哲学」をはじめ、現代でも日常的に使われている数多くの熟語の考案者だが、その背景に隠された、江戸と明治、ふたつの時代を生きた西ならではの知的ドラマを丹念に追った1・2章は圧巻。平易な語り口は読みやすく、コンパクトな小著だが、通説をくつがえすだけのパワーを秘めている。
柳原一徳さん

22位

推薦コメント
筆者が観光客として、つまり何の使命もなく、訪れた場所で見聞をしていくうちに、歴史をさかのぼり、その時代の人々の交錯する思いに考えを巡らせる。人々の思いはその土地の記憶として正しく残されていくのか。現在そして未来の私達のありようを問う。こうしていつのまにか読者は哲学に巻き込まれる。
やすこさん

23位

推薦コメント
小著ながら、内容的にも「木澤佐登志」という書き手を知ることができたという意味でも、今年一番の衝撃作。著者の知識量と、整序されつつもドライヴ感のある書きぶりに圧倒され、紹介される思想やサブカルチャーは身近ではなかったが、確かに「現実」の一側面を描き出していると、実感をもって納得させられた。
trrさん

24位

推薦コメント
芸術の創造を志す人の多くは、自らの精神の病いについて一度は考えたことがあるのではないだろうか。なぜ自分は病み、それを文章や絵やあらゆる何かをもって表現するのだろうかと。その病みと表現の関係が歴史・思想的にどう位置づけられ、今自分がどこにいて、これからの創造がどこに向かおうとしているのか、そういうことを考えさせてくれた。何かを創造するすべての人にとって必読の書。
yukinoさん

25位

推薦コメント
料理研究家、料理本を批評している本は今まであまり目にすることはありませんでした。筆者は元々、映画の評論家。日々の自宅での料理をしながら、様々なレシピに見る料理家の哲学をそこに見る。
阿部恵さん

26位

推薦コメント
社会を「慣習の束」ととらえ、その起源と特徴を明らかにしてゆく。中でも「全体を規定している」という雇用慣行に力点が置かれている。本書を踏まえない「働き方改革」はありえないだろう。
幸田一男/広島店

27位

推薦コメント
2011年の東日本大震災は、東京電力福島第一原発の事故による放射性物質の拡散という甚大な被害をももたらした。著者は、チェルノブイリの被災地ベラルーシの例に学び、原子力災害後の福島で安心して暮らすための活動を始めた。その過程を綴った類例のないドキュメントである。
山本貴光さん

28位

推薦コメント
移民であり同性愛者であった著者が、自分自身の人生を匿名の症例として書き上げた精神医学書。アメリカで著者は非常に大きな影響力があったが、本書はその内容の過激なことから生前は出版されなかった。LGBTムーブメントがやっと市民権を得つつある今日の日本で、この本が翻訳出版されたことの意義はとても大きいと思う。
街場の精神科医さん

29位

推薦コメント
ストレートに感情や考えをぶつけることを回避し、共感を示しつつ毒気を抜いたそれをそっと差し出すのが是とされる現代社会。ハラスメントや自殺はメディアで扱われるだけのものではなく、「普通に」働く私たちの日常と地続きの問題だ。働く人々の感情や生と死を考察する上で欠かすことのできない重要な書。
(選)津畑優子

30位

推薦コメント
第二次大戦の独ソ戦による戦争犠牲者はソ連で2700万人! ドイツで600万人以上。信じ難い数字です。ヒトラーとスターリン、二十世紀が生んだ最強・最悪とも言える独裁者二人による、惨憺たる戦争の実態が手に取るようによく分かります。
佐藤高廣/カタロギングサービス部

紀伊國屋じんぶん大賞2020選外〜思い入れたっぷりなこの一冊〜

推薦コメント
誰もが経済と無関係では生きられない。経済とは社会のしくみであり、世界のなりたちそのものだから。経済を学ぶことは、世界のなかで自分はどう生きるかを考えることであり、自分にとっての本当の幸せとは何かを探ることにつながる。
相澤哲洋/総務部

推薦コメント
著者は情報あふれる現代の社会において「明確さは力だ」というがまさに至言。人類が直面する諸問題の冷静な分析を読むことで大きな視点で自分(達)の立ち位置を確認できた。前二作も世界的ベストセラーとなったが、むしろ本作こそが多くの社会で広く読まれるべきだろう。
生武正基/新宿本店

推薦コメント
非常に真面目な「愛」の本だ。固定概念がガラガラと崩れ、多くのことを考えさせられた。人文書を読む醍醐味が、この本には詰まっている。
池田匡隆/広島店

推薦コメント
脳・神経のメカニズムとその役割解明に熱い視線が注がれる今日。神経科学の隆盛に伴い肥大化するマトリックス的世界観より、われわれはいかに脱出することができるのか。自己決定する人間〈精神〉の確保を急務とした気鋭の哲学者による神経からの奴隷解放宣言。
井村直道/水戸営業所

推薦コメント
現代の日本社会で移民問題の現在地を、日常から1つ上の視点で考えるための必読書。
植松由布子/京都営業部

推薦コメント
600頁超の分厚さにたじろいではいけない。手に取ればそんなことは気にならないほど頁をめくる手は止まらない。性急は厳に慎むべきだが、「いま」この一冊を読む意義を考えずにはいられない。
大籔宏一/ゆめタウン徳島店

推薦コメント
家父長制のなかで抑圧される女性たちに護身術となる言葉を授けるため、強者の言動に潜む矛盾と身勝手さを暴きながら、容易くかき消される弱者の経験を丁寧にすくい上げた、著者渾身の一冊。
小林翔太/中部営業部

推薦コメント
この表紙のインパクトとシュールさ、そして本書が書店の棚の中で(良い意味で)浮いていることに心を打たれた。見た目に反し、中は本格的な人類学書。視点が多様かつアクターが多すぎてこの場でまとめることは難しいが、その研究成果は正鵠を射ているように思える。加えて、幕間のマツタケ談義や行間の植物・菌類イラストのおかげで、本書の持つ雰囲気はずいぶんと優しく柔らかい。価格以上のボリュームと内容、私が保証します。
小山大樹/札幌本店

推薦コメント
「家族」という社会の基本単位の中で隠され、繰り返される性暴力。暴力が暴力が生む不幸な連鎖に抗うために、まずは現実を直視してみること。ムゴいやキモいで済ませて蓋をするのではなく、まずは本書に触れ考え始めることから。
髙部知史/京都営業部

推薦コメント
個人的な偏見ではなく、家父長制が根底にある社会におけるミソジニー。その文脈の中に居続ける限り、男女平等の名の下に女性の社会進出が進むことになろうとも、「社会的地位を奪うこと」に対する制裁を科されるだろうという著者の指摘に愕然とした。私たちはこの社会でミソジニーにいかにして立ち向かうべきなのだろう。
津畑優子/データベース営業部

推薦コメント
歴史をこえ、大陸をこえ、そして種をこえて営まれるヒトと犬の共同作業。ヒトの文明やコミュニケーション形成にいつも寄り添ってきた犬に想像力を膨らませたときに見えてくる、この不思議な隣人の魅力と真理。
中島宏樹/横浜店

推薦コメント
医学と民間療法、科学と宗教が未分化の時代、人々を虜にした心身技法の諸相。東洋の神秘と見せて、実は西洋の翻訳、逆輸入を経た、グローバルかつ近代的な現象。その妖しくも人間を超え出ようとする人間的過ぎる営みの、研究対象としての魅力に負けそうになる本。
野間健司/書籍・データベース営業部

推薦コメント
「翻訳は、私たちのあいだのちがいを見る(あるいは尊重する)のを助けるのだ」と著者はいう。専門用語から平易な言葉への言い換えは? マイナー言語へ翻訳する意義は? 機械翻訳や動画の自動字幕がポピュラーになった昨今だからこそ、「翻訳」の見えない役割を意識する重要性を訴えたい。
花田葉月/雑誌営業部

推薦コメント
筆者自身の家族の歴史と生まれ育った地域の歴史を丁寧に解きほぐし、編まれた労作。多様な存在との向き合いかたや、それぞれが生きていく場所をつくっていくということについて。あらためて自分のまわりをぐるっと見渡しながら、深く考えさせられる一冊でした。
林下沙代/札幌本店

推薦コメント
年末にさえ出ていなければ確実に上位に入っていたであろうタイトル。私以外の担当者もほぼ読んでいました! 以下私も含む彼らのコメントを紹介します。「宮崎駿監督の思考がこの本を読んでわかった気がした。」「ナウシカをここまで読み込んだ解説書がかつてあっただろうか。」「この本を読んでナウシカをもう一度読み直した。涙が止まらなかった。」「本当のナウシカに会えた気がした。」一行たりとも飛ばし読みしたくない本です。とにかく読んでみてください。
東二町順也/新宿本店

推薦コメント
ようやく刊行された、手に取りやすいベンヤミンの入門書。2つの大戦の時代を生きたベンヤミンの生涯を辿りつつ、代表的な著作のエッセンスを抽出してその思想の見取り図を示してくれる。ベンヤミンが気になっている方はぜひこの一冊から読んでもらいたい。
藤本浩介/台湾エリア

推薦コメント
サブカルチャー評論のレベルを一気に引き上げる労作。戦前国策映画、戦後ドキュメンタリー映画、近代建築など多彩な分野を博捜し、戦後突然現れた「怪獣」という表象の背景を探り出す手際は興奮間違いなし。
星正和/新宿本店

推薦コメント
近年急速に注目を集めつつあるオープンダイアローグ(精神病などに対する「開かれた対話」を中心とした治療的介入の手法/システム/思想)の創始者ふたりによる決定版というべきガイド。その実践的・思想的広がりとともに、今後読み継がれていくだろう未来の定番書。
松野享一/書籍・データベース営業部

推薦コメント
「宇宙には何千億も恒星があるのに、地球にだけ知的生命体がいるのはおかしい」というフェルミのパラドクスから始まる、宇宙物理学、進化生物学、心理学などさまざまな分野の第一人者の考察。「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか」。人類の永遠の問いの答えは、「われわれ」でないものを探すことで得られるのかもしれない。
森永達三/本町店

推薦コメント
鮮やかな表紙に目を奪われ、思わず手に取り。本文を読んで、金子文子、エミリー・デイヴィソン、マーガレット・スキニダー、3人の女性の艶やかな人生に心が躍り、読む手が止まらなくなり。読み終わってもまた、再読してしまいたい、そんな本です。
池田飛鳥/事務局

推薦コメント
『説教したがる男たち』や『ウォークス』などで読者を魅了してきた作家・批評家が、自伝的な回想を織り交ぜながら、「迷うこと」を軸に読者を思索へ誘う芳醇なエッセイ。ブックデザインも翻訳も見事な一冊。
和泉仁士/事務局

推薦コメント
行き詰まる民主主義に特効薬の処方箋はないが、諦めてはいけない。民主主義は多数決ではなく選挙ですらないとする抽選制は、古代アテネの制度を甦らせるだけの思考実験ではなく、現在も世界各地で試行されているソーシャルデザインの取り組みだ。
四井志郎/事務局

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