2025年2月1日(土)から江口絵理さん、かわさきしゅんいちさんの受賞コメントやスタッフの推薦コメント、選考委員の選外の1冊などを掲載した小冊子の無料配布をしております!ぜひ店頭にお越しください。
キノベス!キッズ2025
(2023年12月~2024年11月出版の児童書・絵本/第4回)
キノベス!キッズ2025 第1位『クジラがしんだら』
江口絵理さん特別寄稿
この絵本が生まれたきっかけは、私が偶然、深海の鯨骨生物群集を研究する藤原義弘さんにお会いしたことでした。いま聞いた不思議な世界を本にして多くの人に届けたい。ならばどんな本にするのがいいだろう? 頭の中でアイデアを揺らす日々が続きました。
何年も何も食べていなかったのに、突如、2000年分のごちそうが上から降ってくるという僥倖に沸く生きものたち。食べつくした後、海流任せで次のクジラに向けて旅立つ、はかない運命の生きものたち――。
そうだ、深海の生きものたちが抱く不安や喜びを、読み手が体で感じてもらえるような絵本にしよう、とようやく思い定めたのは、件の出会いから10年もの月日が過ぎたときでした。
その後の険しい道のりを経て仕上がった『クジラがしんだら』が、なんと、キノベス・キッズ2025で1位に選んでいただけたとのこと。ありがとうございます。この受賞が全国の読者のもとに本書を届ける、強い「海流」となってくれますように。
江口絵理(えぐち えり)
児童書作家。著書に日本絵本賞を受賞した『ゆらゆらチンアナゴ』(ほるぷ出版)や『ボノボ』(そうえん社)、『高崎山のベンツ』(ポプラ社)、『アフリカで、バッグの会社はじめました~寄り道多め、仲本千津の進んできた道~』(さ・え・ら書房)ほか子ども向けの動物の本多数。雑誌やウェブでの人物インタビュー記事や『未来を変える目標―SDGsアイデアブック』(Think the Earth)の執筆なども手がける。かわさきしゅんいち さん特別寄稿
キノベス!キッズ2025にて『クジラがしんだら』を1位に選んでいただき、本当にありがとうございます!
この本には死んだクジラが登場します。死んだときくと、悲しまないといけないのかなあ? と思うお子さんもいるかもしれませんが、どんな気持ちで読んでも大丈夫です。深海魚にワクワクしたり、後半生き物が少なくなった様子にちょっとさみしい気持ちになったり、その子が素直に感じたことを大切にしてほしいと思います。
死んだクジラが食べられ、骨までなくなるのに100年以上かかるともいわれています。僕の祖父が今年92歳になるのですが、彼が生まれる前に死んだクジラの骨が、いまこの瞬間もどこかの海底で生き物たちに利用されているかもしれません。
クジラから解き放たれた命のかけらは、さまざまな生き物や海流などを巡って、僕ら人間が食べる生き物にもつながっています。そんな風に生き物たちは見えない線で繋がり互いに循環しているんですが、これがめちゃくちゃ面白いのです。
この世界は美しい緻密な面白さで満ち溢れています。それを伝えることができたらなによりです。
©少年写真新聞社かわさきしゅんいち
生物画家、イラストレーター。2017年 『うみがめぐり』(仮説社)で絵本作家デビュー。挿絵の仕事に『眠れなくなるほど面白い 図解 古生物』(日本文芸社)、『地球生命 無脊椎の興亡史』(技術評論社)など多数。ギャラリーでの個展、ZINの発行など精力的に活動。恐竜、絶滅した古生物、現生生物のなかでも海の生きものを描くことが多い。分類や進化、生態系の話が好き。*プロフィールは当時のものです。
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(2023年12月~2024年11月出版の児童書・絵本/第4回)