キノベス!キッズ2023 第1位『大ピンチずかん』
鈴木のりたけ さん特別寄稿キノベス!キッズ2023の第1位に「大ピンチずかん」を選んでいただき、光栄です。たくさんの人が、自分に心当たりのある大ピンチを本の中に見つけて「それ、あるある!」と楽しんでくれたという証ですね。うれしいです。
この本は、わたしが、日々大小さまざまな失敗をするわが家の子どもたちを観察している中で生まれました。些細なことでも、初体験の子どもたちにとっては大ピンチなんですよね。親が救いの手を差しのべたり、一緒に解決してあげるのもいいですが、頼りっきりになられるのも困りもの。子どもたちには、大ピンチに見舞われても、それを自分の力で乗り越える強さを身につけてもらいたい! そのためには、大ピンチに慣れ親しんで、大ピンチに直面しても心の平静を保ち、客観的に状況を把握することが必要になります。「あっ、今オレ、大ピンチだ!」「大ピンチレベル50越えだ!」「よくある大ピンチで星4つ!」とか、そんなことを言っているうちに「あれ、なんだか心のドキドキが収まったよ」なんていうふうに感じられればしめたもの。もう失敗の後始末も上手に自分でできるはず!
まあ、そんなふうに全部が全部これ一冊でうまくいくとは限りませんが、少なくとも、ヒステリックな状況に、笑いの花を一輪咲かせることはできるはずです。
この本を推していただいたみなさんがおそらくそうであったように、子どもだけでなく、大人にも誰にでも大ピンチの心当たりはあるはずです。わたしは先日、父親手作りピザを家族に取り分けるときに、ほぼ毎回チーズがずり落ちるという大ピンチに見舞われました。もう、がっくりです。こんなふうに、いったん本から離れても、大ピンチ体験を語り合ってもらうことで、人と人との距離が縮まれば、それもまた作者としては幸せなことです。
この度はすばらしい賞をありがとうございました。
鈴木のりたけ(すずき のりたけ)
1975年、静岡県浜松市生まれ。グラフィックデザイナーを経て絵本作家となる。『ぼくのトイレ』(PHP研究所)で第17回日本絵本賞読者賞。『しごとば 東京スカイツリー』(ブロンズ新社)で第62回小学館児童出版文化賞受賞。第2回やなせたかし文化賞受賞。ほかの作品に「しごとば」シリーズ、『たべもんどう』「おでこはめえほん」シリーズ(ブロンズ新社)、『ぼくのおふろ』『す~べりだい』『ぶららんこ』『ぼくのがっこう』(PHP研究所)、『おしりをしりたい』『カ どこいった?』『大ピンチずかん』(小学館)、『かわ』(幻冬舎)、『とんでもない』『なんでもない』(アリス館)、『うちゅうずし』(角川書店)などがある。「しごとば」シリーズではスケッチブックとカメラを手に様々な仕事の現場に潜入取材し、独自の視点と遊び心あふれる手法で仕事を切り取った内容は、老若男女問わず好評を博している。千葉県在住。2男1女の父。
▶2023 小冊子 PDF版/Kinoppy電子書籍版 ▶贈賞式 2023年2月28日*受賞者コメント動画
▼「キノベス!キッズ2023」選考委員が選ぶ! 未来へつなぐこの1冊
ベスト10を選んだ選考委員に、キノベス!キッズ2023では惜しくもランク外になってしまったものの個人的にはとってもオススメしたい1冊を挙げてもらいました。
キノベス!キッズ2023
(2022年12月~2023年11月出版の児童書・絵本/第3回)
*推薦コメントの執筆者名に併記されている所属部署は当時のものです。現在は閉店している店舗もあります。