紀伊國屋書店:紀伊國屋じんぶん大賞2025 大賞 福尾匠さん『非美学 ― ジル・ドゥルーズの言葉と物』読者と選ぶ人文書ベスト30

ただ今、開催中

紀伊國屋じんぶん大賞2025 大賞 福尾匠さん『非美学 ― ジル・ドゥルーズの言葉と物』読者と選ぶ人文書ベスト30

「読者の皆さまと共に優れた人文書を紹介し、魅力ある『書店空間』を作っていきたい」――との思いから立ち上げた「紀伊國屋じんぶん大賞」は、今年で15回目を迎えました。おかげさまで、本年もたくさんのご応募と推薦コメントをお寄せいただきました。一般読者の方々からいただいた推薦投票を元に、出版社、紀伊國屋書店社員による推薦を加味し、選考委員による持ち点評価を加え事務局にて集計し、ベスト30を選定いたしました。

※2023年11月以降に刊行された人文書を対象とし、2024年11月1日~11月30日の期間に、推薦投票を募りました。当企画における「人文書」とは、「哲学・思想、心理、宗教、歴史、社会、教育学、批評・評論」のジャンルに該当する書籍(文庫・新書含む)としております。

2025年2月1日(土)から福尾匠さんの受賞コメントや、スタッフや読者の皆様の推薦コメント、選考委員の選外の1冊などを掲載した小冊子を無料配布しております!※在庫がなくなり次第終了となります

ランキングのベスト30すべてをフェア展開する店舗は下記7店舗です。
札幌本店 新宿本店 横浜店 梅田本店 グランフロント大阪店 広島店 福岡本店

じんぶん大賞2025フェア開催店舗ベスト30
札幌本店新宿本店横浜店梅田本店グランフロント大阪店広島店福岡本店

ベスト10
仙台店前橋店さいたま新都心店浦和パルコ店川越店流山おおたかの森店セブンパークアリオ柏店小田急町田店アリオ亀有店ららぽーと横浜店西武東戸塚S.C.店イトーヨーカドー川崎店新潟店富山店金沢大和店プライムツリー赤池店本町店京橋店天王寺ミオ店アリオ鳳店川西店エブリイ津高店ゆめタウン広島店ゆめタウン出雲店ゆめタウン下松店徳島店ゆめタウン徳島店久留米店佐賀店長崎店アミュプラザみやざき店

ベスト5
福井店mozoワンダーシティ店名古屋空港店高槻阪急スクエア店堺北花田店泉北店加古川店クレド岡山店ゆめタウン廿日市店丸亀店いよてつ髙島屋店ゆめタウン博多店熊本はません店熊本光の森店あらおシティモール店アミュプラザおおいた店鹿児島店
※終了いたしました※ 紀伊國屋じんぶん大賞2025大賞 受賞者トークイベント
〈第322回新宿セミナー@Kinokuniya〉ジル・ドゥルーズ生誕100年 & 紀伊國屋じんぶん大賞2025大賞記念 & 第2回じんぶんやRETURNS開催記念 千葉雅也×福尾匠 トークイベント(2025年2月4日(火)19:00~/紀伊國屋ホール)
※終了いたしました※ 紀伊國屋じんぶん大賞2025記念企画 開催
『非美学』福尾匠さんと巡る 夜の新宿本店 人文書ツアー(2025年2月17日(月)21:15~/新宿本店3F 人文書コーナー)

紀伊國屋じんぶん大賞2025

(2023年11月~2024年11月出版の人文書/第15回)

紀伊國屋じんぶん大賞2025 大賞『非美学 ― ジル・ドゥルーズの言葉と物』
福尾匠さん特別寄稿

じんぶん大賞 受賞の言葉

 このたびは紀伊國屋じんぶん大賞という栄誉ある賞に選んでいただき、ありがとうございます。

 『非美学』は博士論文をもとにしたドゥルーズについての研究書で、博論執筆とその改稿とで合わせて7年ほどかけて書いたのですが、その時間がこのようなかたちで報われて嬉しく思っております。本書はけっして読みやすい・わかりやすいタイプの本ではないかもしれませんが、本書の難しさは、少なくとも僕にとっては「考える」ということそのものの難しさであり、読者のみなさまには本書を思考のドキュメントとして受け取っていただけたのかなと想像します。

 人文書の世界はいま、なかなか難しい局面に立たされていると思います。一方で、毎日のように話題がコロコロ変わり、そのたびに知識や価値観の「アップデート」を迫られるような世界に、書くのに数年かかるような噛み応えのある本は受け入れられにくいでしょう。他方でだからといって、「歴史」や「教養」や「大学」といった権威に寄りかかりつつ、専門的な内容をわかりやすく噛み砕いて伝えるというのも、必要なことではあるでしょうが、疑われているのがそうした権威である以上、対症療法的な効果しか持ちえないでしょう。そして実際、人文書の世界は、話題の高速回転としての〈喫緊〉と、権威としての知識がストックされる〈悠久〉とに引き裂かれており、「考える」ということのサイズ感を見失っているように僕には見えます。

 『非美学』という本は、「哲学する」ということが実際何をどのようにすることであるのかということを考えた本です。そして僕はこの本で、「哲学する」ことについて、プロに対しては厳しい条件を突きつけつつ、アマチュアの、あるいは非専門家の方には条件を広く取ってもらうよう促すという、二重のスタンスを取っているのだと思います。

 つまり、プロは、たんに昔のテクストを細かく注釈したり、すでにある理論を新しい話題に当てはめることに満足していてはダメです。それは結局〈喫緊〉と〈悠久〉の距離から利ざやを取っているだけです。しかし、それでは哲学書を読み込んで新たな理論を自分で作らないと「哲学する」ことはできないのかというと、そうではない。

 難しい本を、理解はできていないかもしれないけどなぜか文章に引っ張られるように没頭して読んでしまうこと、日々の些細な出来事がきっかけで以前読んだ本がふと思い出されること、あるいはたとえば映画を観終わって、客席に明かりが灯った瞬間に、自分が受け取ったものの行き場のなさに戸惑うこと、そしてそうしたものすべてが自分というひとりの人間のなかで重なりあっていること。「哲学する」こと、あるいは「考える」ことは、こうした重なりのなかにしかないと思います。

 僕の本が読者のみなさまそれぞれの、そうした重なりのなかのひとつになることができれば嬉しいです。

紀伊國屋じんぶん大賞2025 福尾匠さん

福尾匠(ふくお たくみ)
1992年生まれ。哲学者、批評家。博士(学術)。 初の著作『眼がスクリーンになるとき ゼロから読むドゥルーズ『シネマ』』(フィルムアート社刊)が人文書読者を中心に熱烈な支持を集め(「紀伊國屋じんぶん大賞2019」第5位)、文芸誌「群像」での連載「言葉と物」、哲学を売る試み「哲学の店 フィロショピー」を催すなど、常にその動向が注目を浴びている。2024年6月に刊行した『非美学――ジル・ドゥルーズの言葉と物』は、2021年3月に提出された自身の博士論文を約3年の歳月をかけリライト、確かな手つきで磨き上げられたドゥルーズ論=批評論。氏の“主著”と呼ぶにふさわしい力作となった。2024年11月には、著者のデビュー以来の批評=エッセイを一挙収録した『ひとごと――クリティカル・エッセイズ』を上梓。

*プロフィールは当時のものです。

▶2025 小冊子 PDF版

選考評 紀伊國屋じんぶん大賞2025選考委員
①大賞『非美学』
 確かに誰もにとって読みやすい本ではないですが、人文書を読むというのは多少「背伸びする読書」であって欲しいと考えます。通読できなくても、すべて理解できなくても、心を掴むフレーズや概念、新しい世界の見方の発見は、人文書を読むことの楽しみの一つです。その新鮮さと魅力、また多くの人にとって切実だと思われるテーマを備えた本書が、将来にわたって読み継がれていくことを期待し、書店員として強く推します。
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②紀伊國屋じんぶん大賞2025 選考評
 わたしたち選考委員の顔ぶれは多様である。といっても社外の方にはあまり関係がないことなのだが、これを機に少しふれておきたい。研究者・研究機関・図書館の方々と日々仕事をさせて頂いている営業スタッフ、彼女/彼らを支える学術書・雑誌などの各専門バックアップ部隊(和洋問わず)、本社管理部門所属の者もいれば長く海外店に勤務している者……。また、国内店舗勤務者でも、その勤務地域や業務内容はまちまちである。
 こうした顔ぶれで選考するとはどういうことだろうか、と自問する。例えば、日々研究者の方々と仕事をさせて頂いているスタッフが想定する「人文書」と、店頭で不特定多数の方に接客販売をさせて頂いているスタッフが想定する「人文書」では、「微細な差異」が存在する。選考の場では、それは時として穏やかに、時として激しく顕在化し、とらえどころのない何ものかとしてわたしたちを縛る。「人文書」なるものは決して自明なものではない。
 しかし、そうした様々な現場で働いている選考委員でこの一年を振り返ってみると、それなりの意見の一致というものが見られるのだから、これは不思議なことではある。とはいえ、一致した意見の中からもれるものも少なくない。「選外の一冊」を各委員があげているが、一冊どころかあと何冊かでも、という思いはある。ここにあがっていない著作も含めたすべての「人文書」に敬意を表するとともに、2024年を彩った人文書ラインナップたらんと願ったものであることを記しておきたい。

歴代 紀伊國屋じんぶん大賞
20242023202220212020201920182017201620152013201220112010
*紀伊國屋じんぶん大賞2014は欠番です。
紀伊國屋じんぶん大賞の歴史

紀伊國屋じんぶん大賞は「今こそ!人文書宣言」企画第20弾として、読者の皆様に"2010年に刊行された「人文書」ベスト3"についてアンケートを募集したところから始まります。
紀伊國屋書店新宿本店5階人文書売場(当時)にて扱っている書籍(小ジャンル分類:哲学・歴史・宗教・心理・教育・文芸批評)に限定させていただきました。

その後「紀伊國屋じんぶん大賞 読者と選ぶ人文書ベスト30」として毎年アンケートを募集。翌年の初めにベスト30を集めたブックフェアを開催するようになりました。

2014年から名称をフェア開催年に変更。第4回目までは「2013年のベスト30」=「じんぶん大賞2013」としていましたが、第5回目は「2014年のベスト30」=「紀伊國屋じんぶん大賞2015」と表記するようになりました。そのため、2014年は欠番となっております。

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じんぶんくん
2024年、紀伊國屋書店新宿本店人文書売場に誕生した、月がわりの選書棚「じんぶんや」。
"じんぶんくん"はその選書リストを掲載していた小冊子の4コママンガとして生まれたキャラクターです。(紀伊國屋じんぶん大賞2016小冊子より)
紀伊國屋じんぶん大賞のポスターや小冊子にもたびたび登場しています。

じんぶんくんじんぶんくんじんぶんくん

紀伊國屋じんぶん大賞2025

(2023年11月~2024年11月出版の人文書/第15回)

紀伊國屋じんぶん大賞2025 👑 大賞 👑

推薦コメント
〈「常に新たな概念を創造すること、それこそが哲学の目的である」のは、不信の距離は何かを創造することで初めてポジティブなものとなるからだ。しかしそれでもまだ話は半分しか終わっていない。ドゥルーズが何を創造したかは、われわれがそこから何かを創造するまで誰も知らないのだ。〉では我々は『非美学』から何を創造するのだろうか。東浩紀さん、平倉圭さん、千葉雅也さんに連なる「知の新星」の誕生を心より喜びたい。
伊藤稔/新宿本店
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哲学とは何か。晩年、この大いなる問いを著書のタイトルにしてそのまま受け止めたドゥルーズの思考を、気鋭の哲学者が美学=感性論との関係から読み解く力作。『ひとごと─クリティカル・エッセイズ』もとても良かったのですが、骨太の人文書であるこちらを推薦します。
(選)小山大樹
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ドゥルーズの著作は難しい印象もあり実際読み込むのが難しいのですが、福尾氏は難易度の高いものをフラットに解剖する力があり、違う風景を見ることができます。
匿名希望さん(出版関係)
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哲学と芸術との幸福な出会いから離れて、本書はこれまで惰性的に「それでよし」と見做されてきた関係性の欺瞞を告発します。この問題意識をワンフレーズで表すなら、「共依存への抵抗」でしょう。それでもなお哲学は自分の足で立っていられるのだろうか? シビアで苦味のある著者の視線は10年後の世界へと向けられています。
匿名希望さん(一般)
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「哲学者は概念の友である」(『哲学とは何か』)として、その友愛はいかなる形を取るべきなのか? ドゥルーズを読み、懐疑し、突き放す先で、哲学そのもののありようを問う力作。今後25年間の日本における思想展開を決定づけうる可能性が、この本にはある。
皐月偽さん(学生)
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2位

推薦コメント
ものの見方を現代思想を使ってこんな風に説明できてしまえることに感動しました。難しい哲学が身近なものに感じられるし、思想を実際に使えるようになるかもしれないと思えたところがよかったです。
YT/西武東戸塚S.C.店
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千葉雅也先生の哲学入門編 三部作『勉強の哲学』『現代思想入門』『センスの哲学』。哲学だから言葉の定義から始まって、私たちに新しい視点をくれる。入門編と思っても、読みやすさにだまされてはいけない。実は哲学的思考の練習になっている。読めば、何かが少し変わって見えたり聞こえたり感じたりする。
mattun161さん(教員)
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「この曲聴いてるやつはセンスがいい」「この絵の良さがわかるやつはセンスがいい」最近、そんな言葉が特にポップカルチャーに対して、若者の間でよく使われているように思う。しかし、一体センスってなんなんだ? センスがいいとは? その作品を「生み出す」わけではなく、「聴くこと」「好むこと」「選ぶこと」もセンスがいいうちに入るのか? この本は、そんな疑問・逡巡を少しずつ紐解きながら、私たちを「センスのその先」へ連れて行ってくれます。冒頭のような言葉や、それをめぐる論争にうんざりしている人にこそ、そしてそれ以外の人もぜひ読んでほしい一冊です。
渡辺彩葉さん (学生)
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3位

推薦コメント
タイトルに惹かれて読み進めると、そこには重厚な読書史、労働史。しかしそんなことには気付かずに読み進めることができるのはひとえに著者の筆力ゆえだろう。半身(はんみ)労働社会を提唱する、社会的な本でありつつ、その本体は『花束みたいな恋をした』論。さまざまな技巧が詰まった一冊。
倉津拓也さん(書店員)
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本を売ることを生業としている私ですが、主な読書時間はほぼ通勤中のみで、家ではYouTubeかゲームに時間を費やしてばかり。どうしてこうなってしまうのか? 本書は読書史と労働史を概観しながらその一因を解きほぐし、壮大な提言も行いつつ、最後に〈働きながら本を読むコツ〉という優しいアドバイスを提示しています。この仕事に感謝と敬意を込めて、一票を投じます。
(選)小山大樹
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タイトルを見て「まさに自分…!」と思い手に取りました。メッセージ性が強く、仕事に対して葛藤を抱えながら働く全ての労働者に、勇気と希望を与えてくれる一冊だと思います。また、読者がタイトルの答えを求め読み進めても、直ぐに知ることはできない、という本書の構造も、皮肉的で最高でした。本書は、読了後に本書の「ノイズ」の部分も含め楽しめたか読者に対し自然に問いかけ、読者の深層心理に踏み込みます。現代の日本社会へ物申す、革命的な一冊です。
優しいパスカルさん(会社員)
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4位

推薦コメント
自分が体験している世界を、他者に説明するのは難しい。例えば私に見えている色は、他者にも同じ色に見えているのだろうか。タイトルは「普通」なら一本の時間軸が、著者の世界にはいくつも並行して有るという意味だという。自分と他者がいつも同じ方を向いているのは、実は幻想なのかもしれないと考えさせられる一冊。
岡橋渉さん(出版関係)

5位

推薦コメント
学部生でもなけりゃもちろん研究者でもないのにタイトルに惹かれて購入。とにかくプラグマティックに徹しているので論文など書く当てもない僕でもひょっとして書けるのでは? と思わせるところがすごい。アカデミック・ライティングとはうたっているが実はビジネス上の様々なドキュメント作成にも応用できそうだと思った。学部生の息子に読ませたい。
ロビーさん(会社員)

6位

推薦コメント
コロナをタイトルに冠すると記事が読まれない時代らしい。終わったことにしたい社会。でもあの時「やりすぎてしまった」わたしたちを問わずに終わらせれば、それこそこの社会終わるだろ。フィールドワークにおいて現地の人を不快にしないという原則を、「しかし、この原則は踏み越えることにした」著者渾身の一冊。わたしたちが失ってはいけないものとは何か。とくに6章のフィールドワークと考察が白眉。
wara51さん(出版関係)

7位

推薦コメント
生活に関するエッセイや論考を読むとき、それはあまりにも個人的すぎるのに、似たような感覚を抱いている他人が居るという事実に驚くことがある。日々の中に染み込んでいる『汚さ』について、じっくり考える時間をくれる一冊。鼻をつまんで蓋をする前に、一度覗いてみることをお勧めします。
松本彩香/横浜営業部

8位

推薦コメント
「いざとなればすぐ呼び覚ますことのできる亡霊のように」サイードの名前を聞くようになった、と本書にある。政治に関わりをもち、媒体としての言葉が力をもっていた時代の最後に生きた研究者・批評家のテクストを読者は残響のように聞く。その隔たりと連絡を確かめることができる一冊だと思います。
匿名希望さん(会社員)

9位

推薦コメント
「こころのケアははじめるものではなくて、はじまってしまうものである」という書き出しの通り、大切な誰かがいる人すべてが遭遇し得る、ケアという雨の日の過ごし方。ケアをするという事態になった自分の驚きや不安や、至らなさを肯定した上で、どう傘を差し掛けるべきか、の実践を説いてくれる、今年いちばん気持ちが軽くなった本です。そしてなにより、面白い!
kyarakoさん(出版関係)

10位

推薦コメント
アクセシビリティと聞くと、なんだか「配慮しなきゃいけない」ような圧を感じる。しかし著者はアクセシビリティを考えることが「面白い」ことであることを強調する。アートや娯楽を通じて、障害のある人が世界とつながることを考えることは、わたしたちの世界を豊かでタフなものにつくり変える実は早道であると教えてくれる、啓発の書。
匿名希望さん(出版関係)

11位

推薦コメント
職場で「あの人は仕事ができる・できない」と簡単に言われるが、その基準がいかに曖昧で恣意的なものであるかに気づかされる。いま「仕事ができる」とされている人も、フィールドが変われば一瞬にして「できない人」と見なされるかもしれない。組織開発者としての著者の思いが文章からひしひしと伝わってくる、渾身の書。
中西史也さん(出版関係)

12位

推薦コメント
わくわくする書き出しでした。当事者研究と異界(この世の日常的なことわりと違う世界)、読み進めて行くうちにこれまでの興味がまたイメージの世界で動き出して、新しいコンスタレーションが浮かんできました。なるほど、ガタリ・中井久夫が足元を照らし、異界へ誘ってくれました。
匿名希望さん(一般)

13位

推薦コメント
恋愛は、「当たり前」とされている人間関係の在り方ではあるが、実は誰もその実像を把握しておらず、その定義を共有していない。本書は、多様なトピックに触れることで改めて「恋愛」という言葉が指す幅の広さと曖昧さを提示している。恋愛関係に悩む人、「恋愛」それ自体に疑問や忌避感がある人にぜひ手に取ってもらいたい一冊。
(選)山田萌果

14位

推薦コメント
記録に残すと省かれてしまうような、何気ない一言や光景がいつまでも頭に残る事がある。日常の中に潜む哲学に真摯に向き合い、世界と対話しながら綴られたエッセイ。じーんと心に残る読後感に浸ってほしい。
(選)池田匡隆

15位

推薦コメント
アイヌ「を」まなざす、のではなく、アイヌ「が」まなざす。さまざまな立場の当事者5人のインタビューが、マジョリティである日本人の特権性や不正義を問いただす。自分の偽善を突きつけられるのは、正直つらかったが、それこそが本書の意図でもあろう。覚悟して読んで欲しい。
(選)松野享一

16位

推薦コメント
カリブ海地域の文学にはまだ読んだことが無い面白い小説や詩がたくさんありそうという動機で連載時から読んでいましたが、西欧思想以外の考え方を紹介していただいた事で、世の中の思想がいかに西欧基準なのか知りました。構造による支配に対抗する為の「創造」が徐々に発展していく過程としての文学の奥深さ。
匿名希望さん(一般)

17位

推薦コメント
そもそもゲーマーじゃないので楽しめるか訝しがりながら本を開いたのですが、ゲーマーじゃなくても楽しく読める本でした。ゲームに込められたフェミニズムやクィア性を知って、ゲームの世界にも闘いがあり、また自分が息のできる領域が広がってるんだなあと感じられました。
ゆまぴさん(研究者)

18位

推薦コメント
例えば推し活に熱中する人を指して「あの人は病気だから……」と口に出す。でも本当に病気なのかどうかは当人でさえも分からない。そもそも病気か否かの基準とは? 一見、とても難しい問いに思えるのですが、明快な解が与えられてとても視界が開けました。
(選)髙部知史

19位

推薦コメント
4000年に及ぶ古代地中海世界の巨大な歴史を総覧するシリーズの第1巻は、人々がまだ「神々の声を聞けた」時代から始まります。過ぎ去り死んで行った人々の心は現代人には理解できませんが、その近さも遠さも味わえる1冊です。
(選)後藤渚

20位

推薦コメント
今まさに読まれなければならない一冊を、入門書として平易になるよう工夫がなされており、これを緊急出版した、著者や編集者、出版社の胆力に背筋が伸びる思いでした。
河合麻衣さん(出版関係)

21位

推薦コメント
何事にもコミットメントしきれないことに悩んでいた自分にとって、本当にどストライクな本でした。鶴見俊輔やデューイなど哲学・思想から「衝動」という概念に迫る奥深さ、しかし机上の空論に終わらない身近な具体例。個人的には「いいなと思う人や物事に、試しに働きかけてみることで、世界の側から何かが返ってくるのを楽しみにする」というアドバイスの即効性にグッときました。
藤井翔太さん(出版関係)

22位

推薦コメント
現在唯一の麻雀漫画歴史書。ニッチでマイナーなジャンルだと思っていたが、編纂されることで、奥深い歴史が存在していた事実に興奮した。読み応えがあり、麻雀漫画に触れたことのある方はもちろん、ない方も楽しめる一冊。
tukinyamiさん(会社員)

23位

推薦コメント
一般的な民俗学があつかう民間伝承などと、伝播のスピードや情報量が大きく違うネット上の怪談やホラーを、体系的にまとめ上げるという画期的な試み。ネット文化の発展史的な側面もあり、このような分野をうさん臭さから敬遠する人にこそ読んでもらいたい。
(選)西口正一郎

24位

推薦コメント
自分はいわゆる「歴史モノ」が好きで、そういう作品に何かロマンのようなものを感じていたが、その歴史を形作っているのは、ほかならぬ自分自身であり、この世に存在するすべての人、生き物、自然なのだとはじめて気づいた。自分もこの世界の当事者であり、だから、他国について学ぶこと、「世界」史を学ぶことの大切さがはじめてわかった。
匿名希望さん(会社員)

25位

推薦コメント
誰かの為、がうまくいかない時、何が起こっているのか。哲学、文学、人類学、経済学、サブカルチャー、多様なジャンルを横断しながら、利他・ケア・傷について考察する。たとえ今が苦しくても、私たちはいつだって、新しい劇を始める事ができる。誰かと関わる事で、私が変わる。救われる。その思考の軌跡。
塩谷奈帆子/流山おおたかの森店

26位

推薦コメント
著者は郊外のニュータウンで子育てをしていた時期に、得体のしれない孤独に苛まれていた。当時感じた違和感を原体験に、筆者はなぜある街からは人が去り、ある街は人を惹きつけるのかを突き止める。自分は大切にされている、と感じられる街の条件をひもとく、真摯な文献研究と、深いフィールドワークに基づいた希望の書。
(選) 藤木耀

27位

推薦コメント
コロナ期、ポストコロナ期の授業や石牟礼道子の文学、舞台や映画の『フランケンシュタイン』など、扱う「声」の範囲がとても広く、著者も複数いることによって「声」というものに対する光の当て方が多角的になり立体感があったように思われます。特に、中村邦生さんの『草枕』を扱った論文は音読と吃音という学生時代を思い起こされる内容で少し苦しくなりつつも散文と音声とのかかわりを感じやすく、面白かったです。
(選)坂下慧

28位

推薦コメント
飯塚事件として知られ、いまだ冤罪の疑いも残る1992年冬の女児誘拐殺人事件。藪の中から掬い取られる警察・報道・被告人家族・弁護団の言葉にはそれぞれの正義と恐怖が見え隠れし、読者が信じようとする正義の傾向をも浮き彫りにする。誠実なドキュメンタリーだと思います。
(選)後藤渚

29位

推薦コメント
何事も効率優先の現代社会において、精神世界に没入する事の意味を考えさせられた。また、筆者の若かりし頃の熱意を感じ、一緒に行動している様にワクワクドキドキした。今年一番読んで面白かった本でした。
匿名希望さん(一般)

30位

推薦コメント
「人類の生み出してきたあらゆる物語を、その核となるアイデアごとに分析し網羅する無類の大事典」と言われてもよくわからないのだが、その圧倒的な存在感(B5判・1368頁・4段組・上製函入・3kg)と美麗な造本・デザインに惹かれ、一度ページを捲れば、その魔力に時間が溶けてゆく。出版史に残る一冊ではあるまいか。
(選)松野享一

「紀伊國屋じんぶん大賞 2025」選考委員が選ぶ! 選外この1冊

推薦コメント
インターセクショナリティとは、ジェンダー、人種、階級など複数の要因が交差することによって起こる差別や社会的な不平等を捉える枠組みのこと。本書は、既になじみ深くなったこの枠組みの有用性を改めて問い、多様な分野に跨り分析を試みている。複雑な現代社会の様相を捉えるのにも適した一冊。
山田萌果/札幌本店

推薦コメント
ハイデガーやサルトルなど、今では高名な「哲学者」として知られている人々もやはり当時を生きた人間であり、彼らの思想もまた人間離れした学問なのではなく、生活に根差したものから創出されたものであることを再確認できた。
東二町順也/新宿本店
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はじめて哲学史を学んだときに感じた、あの自由さ・快活さ・そして情熱! 第二次世界大戦という激動の時代、実存主義者たちはどのように生き抜いたのか。概念・用語の解説と伝記を織り交ぜながら、その群像劇を丁寧に描いたノンフィクション。実存主義がもつノスタルジックな温度を、これでもかと感じることができる一冊です。
小山大樹/北海道営業部
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推薦コメント
過去に雑誌に連載していた文章を集めた本ということで扱っているコンテンツは少し前のものにはなるのですが、その内容はいまだに通用するものだと思います。個人的に2010年代は学生だったので、まどマギやピングドラムなど思春期のあの時に見ていたものが扱われているという点においてすごく共感できる内容でした。
坂下慧/新宿本店

推薦コメント
知覚や運動は勿論のこと、感情、記憶、認知、言語、意識などが脳のどのような仕組みで発達、学習し機能しているのかが、これまでの研究の歴史から最新の知見までを踏まえ理解できる一冊。脳がおこなう予測と予測誤差の修正が重要な鍵となり、過去を考え、未来を考える人間の高度な知性の謎を読み解く。
西口正一郎/横浜店

推薦コメント
私たち一人一人が日々食べ、働き、あるいはケアし/され…、そうした文字通りの「生活(者)」を本書は基礎に置く。そこに秘められた社会変革の可能性をマルクスを通じて見出していくのだが、型紙に「生活(者)」をあてはめるようなものでは決してない。ぜひ「序章」だけでも読んでみてほしい。創造性にあふれた理論書である。
大籔宏一/梅田本店

推薦コメント
収入や資産、勤務先などのデータ化された情報があればいい現代日本と、人柄まで調査され、誠実な人と認識されなければ融資してもらえない江戸時代と、果たしてどちらが生きやすいのか。淡々とした筆致に反して、当時の社会、風俗、倫理観など、市井の人々のリアルな感覚が伝わってくる。
武内一貴/グランフロント大阪店

推薦コメント
カーソンが残した自然哲学に、森田真生の続編が共鳴し完成した美しい一冊。植物は枯れて堆肥になり、土を耕しまた次の命をつなぐ。私たちは未来に何を残せるのか、何を託すのか。まずは〝ワンダー〟を受け入れる土壌が必要だ。
池田匡隆/ゆめタウン下松店

推薦コメント
バトラーについての博論本を刊行している著者による、ぐっと読みやすくなったバトラー入門。本書はバトラーの本を読む際に必要となる様々な哲学的前提を「あえて」横に置いて書かれており、そのこと自体の政治性・メッセージ性も重要。『ジェンダー・トラブル』が、より多くの必要な人に届く契機になってほしい。
藤本浩介/シンガポール本店

推薦コメント
アメリカに端を発する自己啓発本隆盛の意味と流れが理解できる。自己啓発本の多種多様さや、それを生み出した時代背景などの分析は非常に興味深く読めた。今自分たちが売っている本がどういう経緯でそこにあるのかがわかる。自己啓発本が好きな方、書店関係者は面白さ倍増。
生武正基/営業企画部

推薦コメント
「困難はあるが、必ず実現できる!」太陽系を抜け、天の川銀河を越えるほどの星間旅行。そんな無茶な、しかしワクワクする挑戦を、要する歳月・宇宙船の設計から乗船者の健康問題まで本気で考え未来に渡す。人の時間は限りがあれど、人の思考はいかに自由かと実感させられます。無性にSFが読みたくなりました。
後藤渚/横浜営業部

推薦コメント
半世紀以上にわたり「採訪」(語り部を訪ねて民話を採集すること)を行ってきた著者が描く語り部たちの生き方。生活と物語との密接不可分な関係が行間から滲み出てきて、語り部たちの生き方と民話を時々混同しそうになる、とても面白い読書体験でした。
髙部知史/京都営業部

推薦コメント
若手研究者によって書かれた、ヒエログリフをはじめとする古代エジプト文字の解読が空間・時間を超えた壮大なプロジェクトであることを示す1冊。最新の研究動向やデータベースの紹介もあり、もっと知りたい! と思わされました。次作ではさらに掘り下げてほしい!
滋野峻也/京都営業部

推薦コメント
明治初期、西洋音楽を耳にしたことがない日本人は、楽譜が読めないどころかドレミの音階にもなじみがない。そんな中、音色のみならず音程など全てを自らコントロールしなければならないこの楽器はどのように受容され、製作までされるようになったのか。緻密な史料調査に敬服、本書につづく次回の著作も楽しみに待ちたい。
津畑優子/学術和書部

推薦コメント
近年注目の歴史学者であるイヴァン・ジャブロンカが、男性性・家父長制とそれに抗するフェミニズムの歴史を、旧石器時代から現代まで、全球的な視座で(日本の事例も頻繁に登場)縦横に論じた、圧巻の歴史書。新たな男性性が求められている現在、多くの人に参考になることが期待される一冊。
松野享一/学術和書部

推薦コメント
社会的人間として生きられない宿命を持つ人間。われわれは他者や社会からの承認を必要とする一方、能力主義や政治権力によって、承認のあり方自体は歪み、個人の尊厳は困難な状況にある。経済学者である著者は、「承認」をキーワードに、国内外の豊富な事例を援用しつつ、人権や民主主義、社会参加を足元から考える。
藤木耀/学術洋書部

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