※2023年11月以降に刊行された人文書を対象とし、2024年11月1日~11月30日の期間に、推薦投票を募りました。当企画における「人文書」とは、「哲学・思想、心理、宗教、歴史、社会、教育学、批評・評論」のジャンルに該当する書籍(文庫・新書含む)としております。
2025年2月1日(土)から福尾匠さんの受賞コメントや、スタッフや読者の皆様の推薦コメント、選考委員の選外の1冊などを掲載した小冊子を無料配布しております!※在庫がなくなり次第終了となります
ランキングのベスト30すべてをフェア展開する店舗は下記7店舗です。
札幌本店 新宿本店 横浜店 梅田本店 グランフロント大阪店 広島店 福岡本店じんぶん大賞2025フェア開催店舗
ベスト30
札幌本店/新宿本店/横浜店/梅田本店/グランフロント大阪店/広島店/福岡本店
ベスト10
仙台店/前橋店/さいたま新都心店/浦和パルコ店/川越店/流山おおたかの森店/セブンパークアリオ柏店/小田急町田店/アリオ亀有店/ららぽーと横浜店/西武東戸塚S.C.店/イトーヨーカドー川崎店/新潟店/富山店/金沢大和店/プライムツリー赤池店/本町店/京橋店/ 天王寺ミオ店/アリオ鳳店/川西店/エブリイ津高店/ゆめタウン広島店/ ゆめタウン出雲店/ゆめタウン下松店/徳島店/ゆめタウン徳島店/久留米店/佐賀店/長崎店/アミュプラザみやざき店
ベスト5
福井店/mozoワンダーシティ店/名古屋空港店/高槻阪急スクエア店/堺北花田店/泉北店/加古川店/クレド岡山店/ゆめタウン廿日市店/丸亀店/いよてつ髙島屋店/ゆめタウン博多店/熊本はません店/熊本光の森店/あらおシティモール店/アミュプラザおおいた店/鹿児島店
※終了いたしました※ 紀伊國屋じんぶん大賞2025大賞 受賞者トークイベント
▶〈第322回新宿セミナー@Kinokuniya〉ジル・ドゥルーズ生誕100年 & 紀伊國屋じんぶん大賞2025大賞記念 & 第2回じんぶんやRETURNS開催記念 千葉雅也×福尾匠 トークイベント(2025年2月4日(火)19:00~/紀伊國屋ホール)
※終了いたしました※ 紀伊國屋じんぶん大賞2025記念企画 開催
▶『非美学』福尾匠さんと巡る 夜の新宿本店 人文書ツアー(2025年2月17日(月)21:15~/新宿本店3F 人文書コーナー)
紀伊國屋じんぶん大賞2025
(2023年11月~2024年11月出版の人文書/第15回)
紀伊國屋じんぶん大賞2025 大賞『非美学 ― ジル・ドゥルーズの言葉と物』
福尾匠さん特別寄稿じんぶん大賞 受賞の言葉
このたびは紀伊國屋じんぶん大賞という栄誉ある賞に選んでいただき、ありがとうございます。
『非美学』は博士論文をもとにしたドゥルーズについての研究書で、博論執筆とその改稿とで合わせて7年ほどかけて書いたのですが、その時間がこのようなかたちで報われて嬉しく思っております。本書はけっして読みやすい・わかりやすいタイプの本ではないかもしれませんが、本書の難しさは、少なくとも僕にとっては「考える」ということそのものの難しさであり、読者のみなさまには本書を思考のドキュメントとして受け取っていただけたのかなと想像します。
人文書の世界はいま、なかなか難しい局面に立たされていると思います。一方で、毎日のように話題がコロコロ変わり、そのたびに知識や価値観の「アップデート」を迫られるような世界に、書くのに数年かかるような噛み応えのある本は受け入れられにくいでしょう。他方でだからといって、「歴史」や「教養」や「大学」といった権威に寄りかかりつつ、専門的な内容をわかりやすく噛み砕いて伝えるというのも、必要なことではあるでしょうが、疑われているのがそうした権威である以上、対症療法的な効果しか持ちえないでしょう。そして実際、人文書の世界は、話題の高速回転としての〈喫緊〉と、権威としての知識がストックされる〈悠久〉とに引き裂かれており、「考える」ということのサイズ感を見失っているように僕には見えます。
『非美学』という本は、「哲学する」ということが実際何をどのようにすることであるのかということを考えた本です。そして僕はこの本で、「哲学する」ことについて、プロに対しては厳しい条件を突きつけつつ、アマチュアの、あるいは非専門家の方には条件を広く取ってもらうよう促すという、二重のスタンスを取っているのだと思います。
つまり、プロは、たんに昔のテクストを細かく注釈したり、すでにある理論を新しい話題に当てはめることに満足していてはダメです。それは結局〈喫緊〉と〈悠久〉の距離から利ざやを取っているだけです。しかし、それでは哲学書を読み込んで新たな理論を自分で作らないと「哲学する」ことはできないのかというと、そうではない。
難しい本を、理解はできていないかもしれないけどなぜか文章に引っ張られるように没頭して読んでしまうこと、日々の些細な出来事がきっかけで以前読んだ本がふと思い出されること、あるいはたとえば映画を観終わって、客席に明かりが灯った瞬間に、自分が受け取ったものの行き場のなさに戸惑うこと、そしてそうしたものすべてが自分というひとりの人間のなかで重なりあっていること。「哲学する」こと、あるいは「考える」ことは、こうした重なりのなかにしかないと思います。
僕の本が読者のみなさまそれぞれの、そうした重なりのなかのひとつになることができれば嬉しいです。
福尾匠(ふくお たくみ)
1992年生まれ。哲学者、批評家。博士(学術)。 初の著作『眼がスクリーンになるとき ゼロから読むドゥルーズ『シネマ』』(フィルムアート社刊)が人文書読者を中心に熱烈な支持を集め(「紀伊國屋じんぶん大賞2019」第5位)、文芸誌「群像」での連載「言葉と物」、哲学を売る試み「哲学の店 フィロショピー」を催すなど、常にその動向が注目を浴びている。2024年6月に刊行した『非美学――ジル・ドゥルーズの言葉と物』は、2021年3月に提出された自身の博士論文を約3年の歳月をかけリライト、確かな手つきで磨き上げられたドゥルーズ論=批評論。氏の“主著”と呼ぶにふさわしい力作となった。2024年11月には、著者のデビュー以来の批評=エッセイを一挙収録した『ひとごと――クリティカル・エッセイズ』を上梓。*プロフィールは当時のものです。
▶2025 小冊子 PDF版
選考評 紀伊國屋じんぶん大賞2025選考委員
確かに誰もにとって読みやすい本ではないですが、人文書を読むというのは多少「背伸びする読書」であって欲しいと考えます。通読できなくても、すべて理解できなくても、心を掴むフレーズや概念、新しい世界の見方の発見は、人文書を読むことの楽しみの一つです。その新鮮さと魅力、また多くの人にとって切実だと思われるテーマを備えた本書が、将来にわたって読み継がれていくことを期待し、書店員として強く推します。
----------------------------------------
②紀伊國屋じんぶん大賞2025 選考評
わたしたち選考委員の顔ぶれは多様である。といっても社外の方にはあまり関係がないことなのだが、これを機に少しふれておきたい。研究者・研究機関・図書館の方々と日々仕事をさせて頂いている営業スタッフ、彼女/彼らを支える学術書・雑誌などの各専門バックアップ部隊(和洋問わず)、本社管理部門所属の者もいれば長く海外店に勤務している者……。また、国内店舗勤務者でも、その勤務地域や業務内容はまちまちである。
こうした顔ぶれで選考するとはどういうことだろうか、と自問する。例えば、日々研究者の方々と仕事をさせて頂いているスタッフが想定する「人文書」と、店頭で不特定多数の方に接客販売をさせて頂いているスタッフが想定する「人文書」では、「微細な差異」が存在する。選考の場では、それは時として穏やかに、時として激しく顕在化し、とらえどころのない何ものかとしてわたしたちを縛る。「人文書」なるものは決して自明なものではない。
しかし、そうした様々な現場で働いている選考委員でこの一年を振り返ってみると、それなりの意見の一致というものが見られるのだから、これは不思議なことではある。とはいえ、一致した意見の中からもれるものも少なくない。「選外の一冊」を各委員があげているが、一冊どころかあと何冊かでも、という思いはある。ここにあがっていない著作も含めたすべての「人文書」に敬意を表するとともに、2024年を彩った人文書ラインナップたらんと願ったものであることを記しておきたい。
歴代 紀伊國屋じんぶん大賞
紀伊國屋じんぶん大賞の歴史
紀伊國屋じんぶん大賞は「今こそ!人文書宣言」企画第20弾として、読者の皆様に"2010年に刊行された「人文書」ベスト3"※についてアンケートを募集したところから始まります。
※紀伊國屋書店新宿本店5階人文書売場(当時)にて扱っている書籍(小ジャンル分類:哲学・歴史・宗教・心理・教育・文芸批評)に限定させていただきました。
その後「紀伊國屋じんぶん大賞 読者と選ぶ人文書ベスト30」として毎年アンケートを募集。翌年の初めにベスト30を集めたブックフェアを開催するようになりました。
2014年から名称をフェア開催年に変更。第4回目までは「2013年のベスト30」=「じんぶん大賞2013」としていましたが、第5回目は「2014年のベスト30」=「紀伊國屋じんぶん大賞2015」と表記するようになりました。そのため、2014年は欠番となっております。
----------
じんぶんくん
2024年、紀伊國屋書店新宿本店人文書売場に誕生した、月がわりの選書棚「じんぶんや」。
"じんぶんくん"はその選書リストを掲載していた小冊子の4コママンガとして生まれたキャラクターです。(紀伊國屋じんぶん大賞2016小冊子より)
紀伊國屋じんぶん大賞のポスターや小冊子にもたびたび登場しています。



紀伊國屋じんぶん大賞2025
(2023年11月~2024年11月出版の人文書/第15回)