司馬文学のエッセンスを凝縮した、珠玉の箴言集。
人の世とは何か。人間とは、日本人とは――国民作家・司馬遼太郎が遺した珠玉の言葉の数々。心を打つ箴言と出会える、ファン垂涎の一冊。
「人の運命は九割は自分の不明による罪だ」(『竜馬がゆく 六』)、「ある人物をひとに観察させるとき、よほどの器量の者にそれを見せなければ印象をあやまる」(『夏草の賦 上』)、「一世をうごかすには、人気が必要であるであろう。が、同時に一世をうごかすには、まったくひとから黙殺されているという在り方も必要であるかもしれない」(『花神 下』)――『竜馬がゆく』『坂の上の雲』『菜の花の沖』などの膨大な作品群によって、人間とは何か、日本とは、日本人とは何かを問いつづけた国民作家・司馬遼太郎。本書は数ある名作・名随想のなかから、混迷の現代社会を生きる上での道標とすべき珠玉の言葉を、テーマ別によりすぐった箴言集である。
▼歴史・文明への透徹した洞察、人間への温かく、そしてたしかな眼差し……。司馬文学の魅力を濃密に凝縮したファン垂涎の一冊であるとともに、司馬作品に初めて触れる若い世代にもお薦めしたい好著である。
国民的作家・池波正太郎の箴言集を文庫化。
国民的作家・池波正太郎の作品群から言葉を精選して編んだ箴言集をついに文庫化! 人間を知り尽くした男の味わい深い名言に沈思する。
人は、死ぬところに向かって生きている――人間を“有限の生命体”と捉え、絶えず、生きることの“はかなさ”と“おもしろさ”を作品に刻み続けた池波正太郎。従来の時代小説ファンのみならず、じつに広範な読者の心を魅了した池波作品は、現代においても多くの人に支持され続けている。
▼本書は、池波正太郎の残した膨大な小説・エッセイ群の中から、「人生と処世」「男と女」「歴史のドラマに学ぶ」など、テーマ別に言葉を選りすぐって編んだ箴言集。
▼「人は、おのれの変わり様に気づかぬものよ。なれど、余人の変化は見のがさぬ」(『真田太平記 十』)「ともあれ、人間というものは、辻褄の合わねえ生きものでございますから」(『剣客商売/浮沈』)「人のこころの奥底には、おのれでさえわからぬ魔物が棲んでいるものだ」(『鬼平犯科帳 十』)など、人間の心の奥底を知った男だから言える、味わい深いことば。そこに人間の本質を見出すことができる。
中国で、「三国志」を超える壮大な歴史ロマンとして人気の「楊家将」。日本では翻訳すら出ていなかったこの物語だが、舞台は10世紀末の中国である。宋に帰順した軍閥・楊家は、領土を北から脅かす遼と対峙するため、北辺の守りについていた。建国の苦悩のなか、伝説の英雄・楊業と息子たちの熱き闘いが始まる。衝撃の登場を果たし、第38回吉川英治文学賞に輝いた北方『楊家将』、待望の文庫化。
国境を挟み、宋遼二国は一触即発の状態に。伝説の英雄・楊業と息子たちの前に、遼の名将・耶律休哥が立ちはだかる。白い毛をたなびかせて北の土漠を疾駆するこの男は、「白き狼」と恐れられていた。宋軍生え抜きの将軍たちも、楊一族に次々と難問を突きつける。決戦の秋!運命に導かれるようにして戦場に向かう男たち。滅びゆく者たちの叫びが戦場に谺する。北方『楊家将』、慟哭の終章。
女のものと思われる緑釉の香合を肌身離さず持つ男・千利休は、おのれの美学だけで時の権力者・秀吉に対峙し、天下一の茶頭へと昇り詰めていく。しかしその鋭さゆえに秀吉に疎まれ、切腹を命ぜられる。利休の研ぎ澄まされた感性、艶やかで気迫に満ちた人生を生み出した恋とは、どのようなものだったのか。思いがけない手法で利休伝説のベールが剥がされていく長編歴史小説。第140回直木賞受賞作。
時は幕末、京の都―。大政奉還を目前に控え、徳川慶喜暗殺未遂事件が起こった。幕閣から犯人探索の密命を受けたのは、坂本龍馬と新選組副長土方歳三。しかし二人に与えられた時間は、わずか二日間だった。いがみ合い、衝突しながら捜査を続ける二人が最後に行きついた人物とは?そして龍馬暗殺の真相を知った土方は?幕末維新のオールキャストでおくる、傑作エンタテインメント長編小説。
恋愛や結婚、進路やキャリア、挫折や別れ、病気や大切な人の喪失…。さまざまな年代の女性たちが、それぞれに迷いや悩みを抱えながらも、誰かと出会うことで、何かを見つけることで、今までは「すべて」だと思っていた世界から、自分の殻を破り、人生の再スタートを切る。寄り道したり、つまずいたりしながらも、独立していく女性たちの姿を鮮やかに描いた、24の心温まる短篇集。
思い出は心を豊かにもすれば、苦しめもする―小さなガラス瓶、古いお守り袋、折り鶴…、そうした小さな手がかりから、依頼人の思い出に寄り添うようにして、人や物を捜し出していく“思い出探偵”。京都御所を臨む地で「思い出探偵社」を始めた元刑事の実相浩二郎は、他のメンバーと共に思い出と格闘し、依頼人の人生の謎を解き明かす。乱歩賞作家が紡ぎ出す、せつなさと懐かしさが溢れるミステリー。
本所亀沢町にある「おけら長屋」は騒動の宝庫だ。大家の徳兵衛、米屋奉公人の万造、左官の八五郎、後家女のお染―ひと癖ある住人が入り乱れて、毎日がお祭り騒ぎ。そんなおけら長屋に、わけあり浪人の島田鉄斎がやってきて…。貧しいくせにお節介、そそっかしいけど情に厚い。そんな庶民が織りなす、江戸落語さながらの笑いと情緒にあふれる連作時代小説。文庫書き下ろし。
文庫本未収録の三篇を加え、茂七親分の物語が再び動き始めた!茂七とは、手下の糸吉、権三とともに江戸の下町で起こる難事件に立ち向かう岡っ引き。謎の稲荷寿司屋、超能力をもつ拝み屋の少年など、気になる登場人物も目白押し。鰹、白魚、柿など季節を彩る「初もの」を巧みに織り込んだ物語は、ときに妖しく、哀しく、優しく艶やかに人々の心に忍び寄る。ミヤベ・ワールド全開の人情捕物ばなし。
「エルトゥールル号の恩返しですよ」―イラン・イラク戦争の最中の昭和六十年、フセイン大統領が、四十八時間以後のイラン領空の航空機無差別攻撃を宣告。日本政府が救援機を出せない中、イランに取り残された二百人以上の日本人救出に動いた国があった…。そのトルコ政府の英断の裏に秘められた、明治二十三年の「エルトゥールル号遭難事件」とは。百年の時空を超えた日本とトルコの友情を描く感動の歴史長編。
おりんの両親が江戸深川に開いた料理屋「ふね屋」に、抜き身の刀が現れ、暴れ出す。成仏できずにいる亡者・おどろ髪の仕業だった。その姿を見ることができたのは、おりんただ一人。しかもこの屋敷には、おどろ髪以外にも亡者が住み着いていた。調べていくうちに、三十年前の忌まわしい事件が浮かび上がり…。人間の心に巣食う闇を見つめつつ成長していくおりんの健気さが胸に迫る。怖く、切なく、心に沁みる物語。
天領の豊後日田で、私塾・咸宜園を主宰する広瀬淡窓と、家業を継いだ弟・久兵衛。画期的な教育方針を打ち出す淡窓へも、商人としてひたむきに生きる久兵衛へも、お上の執拗な嫌がらせが続く。大塩平八郎の乱が起きるなど、時代の大きなうねりの中で、権力の横暴に耐え、清冽な生き方を貫こうとする広瀬兄弟。理不尽なことが身に降りかかろうとも、諦めず、凛として生きることの大切さを切々と訴えた歴史長編。
紺屋の女将・紫屋環は、三ケ月前に亭主が殺された事件の真相を知るべく、大店の東雲屋を探っていた。環は、同じく東雲屋ゆかりの者に恨みを持つ女たちと出会い、四人で協力して東雲屋に挑むことに。しかし、それぞれの愛憎や思惑、環に惚れる同心、藍の産地である阿波藩のお家騒動なども絡み、事件は意外な様相を呈していく…。二転三転する展開と謎。気鋭が描く、痛快さと人情味に溢れた長編時代小説。
人生は笑って、楽しんだ者の勝ち!―東京の下町・葛飾区新小岩。分譲マンションの管理組合理事長・高倉と、管理会社の癒着が発覚!?住人の麻丘と南は、漫画原作を生業とするパパ友・葉山を参謀役に迎え、謎の風俗嬢をも巻き込んで、高慢で小悪党の理事長を懲らしめるべく「大人のいたずら」を仕掛ける!笑芸作家が人生の妙味を笑いでつつみ込んで描いたノンストップ・エンターテインメント。
あの夏、私たちは「家族」だった―。息子を事故で亡くした絵本作家の千紗子。長年、絶縁状態にあった父・孝蔵が認知症を発症したため、田舎に戻って介護をすることに。そんな中、事故によって記憶を失った少年との出会いが、すべてを変えていく。「嘘」から始まった暮らしではあるものの、少年と千紗子、孝蔵の三人は歪ながらも幸せな時を過ごす。しかし、破局の足音が近づいてきて…。ミステリ作家が描く、感動の家族小説。
父の汚名をすすごうと上総国から江戸へ出てきた古橋笙之介は、深川の富勘長屋に住むことに。母に疎まれるほど頼りなく、世間知らずの若侍に対し、写本の仕事を世話する貸本屋の治兵衛や、おせっかいだが優しい長屋の人々は、何かと手を差し伸べてくれる。家族と心が通い合わないもどかしさを感じるなか、笙之介は「桜の精」のような少女・和香と出逢い…。しみじみとした人情が心に沁みる、宮部時代小説の真骨頂。
江戸で父の死の真相を探り続ける古橋笙之介は、三河屋での奇妙な拐かし事件に巻き込まれる。「桜の精」のような少女・和香の協力もあり、事件を解決するのだが…。ついに父を陥れた偽文書作りの犯人にたどり着いた笙之介。絡み合った糸をほぐして明らかになったのは、上総国搗根藩に渦巻く巨大な陰謀だった。「真実」を突き付けられた笙之介が選んだ道とは…。切なくも温かい、宮部みゆき時代ミステリーの新境地!
刑事だった父は、本当に冤罪を生んだのか―。京都府警捜査一課の川上祐介は、妻を殺したと自白しながら、黙秘に転じた被疑者に手を焼いていた。そこへ、京都地検から「不起訴」の連絡が届く。それを決めた担当検事は、父が違法捜査を疑われて失職した際に別の家の養子となった弟の真佐人だった。不起訴に怒る祐介に、真佐人は意外な一言を返す。刑事と検事の信念がぶつかる連作ミステリー。文庫書き下ろし。
花を愛でながら余生を送っていた老人・秋山周治が殺された。第一発見者の孫娘・梨乃は、祖父の庭から消えた黄色い花の鉢植えが気になり、ブログにアップするとともに、この花が縁で知り合った大学院生・蒼太と真相解明に乗り出す。一方、西荻窪署の刑事・早瀬も、別の思いを胸に事件を追っていた…。宿命を背負った者たちの人間ドラマが展開していく“東野ミステリの真骨頂”。第二十六回柴田錬三郎賞受賞作。
大名や幕臣から進物を買い取り、転売するのが仕事だけに、役人たちの裏の裏を知り尽くしているのが献残屋。その手代・佐吉は得意先である浦賀奉行所の役人が抜け荷に手を染めていることを知り、悪事を暴こうとする―。壁にぶつかる佐吉の前に現われる肝の太い男、そして情の深い女。一本筋が通った男である佐吉は、彼らの力を借りつつ、敢然と悪徳役人に立ち向かう。痛快さと人情味が味わえる長編時代小説。
江戸の根津宮永町に、鯖縞模様の三毛猫が一番いばっている長屋があった。人呼んで「鯖猫長屋」。この美猫の名前はサバ。飼い主は、三十半ばの売れない画描き―。炊きたての白飯しか食べないわがままものの猫様が“仕切る”長屋に、わけありの美女や怪しげな浪人者が越してくる。次々に起こる不可解な事件に、途方に暮れる長屋の面々。謎を解くのは、いったい…。心がほっこりあたたまる、大江戸謎解き人情ばなし。
「死の商人」「戦争屋」と世間に罵られながらも、一代で財閥を築き上げた男がいた―新潟から江戸に出て、乾物屋を営んでいた大倉喜八郎は、幕末の不穏な空気をいち早く感じとり、鉄砲商へと転身する。コネもカネもない喜八郎は、どんな仕事も体当たりでこなしていくが…。戦前、排日運動が高まる中にあっても、蒋介石、張作霖、段祺瑞ら中国の要人からその死を悼まれた男の生涯を描いた、感動の長編小説。
逆さまに咲くチューリップはありますか?―京都府立植物園の新米職員の神苗健は、ある母娘から質問を受ける。戸惑う神苗に助け舟を出したのは、その場に居合わせた「植物の探偵」を名乗る女性。彼女は西陣にある「なごみ植物店」の店員だと言うのだが…。蛍が集まる草って何?源氏物語に描かれた薔薇の秘密とは?植物にまつわる謎と京都の風物詩が絡み合う、優しい連作ミステリー。
その男の奏でる調べは、武士の時代への鎮魂歌か―。西郷隆盛と大久保利通の後継者と目されていた村田新八は、岩倉使節団の一員として渡欧、パリにおいて、西郷が大久保と袂を分かって下野したとの報に接する。二人を仲裁するために帰国し、故郷・鹿児島へと向かったものの、大久保の挑発に桐野利秋らが暴発。ここに、日本史上最大にして最後の内戦・西南戦争の火蓋が切って落とされた。著者渾身の長編小説。
「美」は魔物―。たかむら画廊の青年専務・篁一輝と結婚した有吉美術館の副館長・菜穂は、出産を控えて東京を離れ、京都に長逗留していた。妊婦としての生活に鬱々とする菜穂だったが、気分転換に出かけた老舗画廊で、一枚の絵に心を奪われる。強い磁力を放つその絵の作者は、まだ無名の若き女性画家だったのだが…。彼女の才能と「美」に翻弄される人々の隆盛と凋落を艶やかに描く、著者新境地の衝撃作。
幼少の頃に農家へ預けられ、「九条の黒姫さま」と呼ばれるほど活発な少女として育った節子。その利発さと健やかさを評価され、皇太子妃として選ばれたことから、明治、大正、昭和をつらぬく節子の激動の人生が始まった。病に臥せることの多かった大正天皇を妻として支え、母として昭和天皇を見守り続けた貞明皇后が、命をかけて守りたかったものとは。大正天皇と皇后の知られざる実像に迫った傑作長編。
“美濃のマムシ”斎藤道三の娘で織田信長に嫁いだ帰蝶。残虐さをあらわにしていく夫と、従兄の明智光秀の間で苦悩しつつ、織田家の奥を取り仕切る帰蝶を支えたのは…。時代の波に翻弄されつつも、戦国の世をたくましく生きる帰蝶の生涯を描く力作長編。
ある東北の村から日本橋の酒問屋に招かれた、不思議な目を持った少女・イオ。酒問屋の跡取り息子・央介は、その目を見たことで激しい良心の呵責に襲われ、かつて自分が犯した罪を贖おうとする。やがて更生した央介とイオは、彼女の目を使って、江戸で起こる数々の事件を解決していくことになるが…。青年と少女の交流と成長を通して、「罪と向き合う」ことの意味を描いた、感動のファンタジー時代小説。
京都府警が擁する「人外特別警戒隊」、通称「あやかし課」。化け物から神仏まで、あやかしが絡むあらゆる事件を人知れず解決するのが彼らの任務である。そんなあやかし課に入隊したばかりの新人女性隊員・大。個性豊かなメンバーとともに仕事に励む大だったが、実は彼女には人には言えないある事情があって…。街の平和を守るために、古都を奔走する若き隊員たちの活躍を描いた傑作現代ファンタジー!
眉目秀麗、将来有望な蘭学医の卵・真吉。その心中事件に秘められた衝撃の真相とは―。親思いで優しく、蘭学所からの信頼も厚い彼は、長崎への留学を控えていた。そんな折、女を狙った凄惨な連続殺人が起こり、真吉が先生役を務める寺子屋の少女も犠牲になってしまう。彼は自ら犯人を捕まえようと立ち上がるが、その直後、真吉自身にも思わぬ容疑がかけられる。嫉妬と愛憎渦巻く、一気読み必至の長編時代小説。
書店に勤める青年、月原一整は、人づきあいは苦手だが、埋もれていた名作を見つけ出して光を当てることが多く、店長から「宝探しの月原」と呼ばれ、信頼されていた。しかしある日、店内で万引きをした少年を一整が追いかけたことが、思わぬ不幸な事態を招いてしまう。そのことで傷心を抱えて旅に出た一整は、ネットで親しくしていた、桜風堂という書店を営む老人を訪ねるため、桜野町を訪ねるのだが…。
「誰かの大切な居場所は、守らなきゃいけないんだ」―入院中の店主から桜風堂書店の店長になってほしいと頼まれた月原一整は、迷いながらもそれを受け入れる。そして彼が見つけた「宝もの」のような一冊を巡り、彼の友人が、元同僚たちが、作家が、そして出版社営業が、一緒になって奮闘し、ある奇跡を巻き起こしていく。田舎町の書店で繰り広げられる、本を愛するすべての人に読んでほしい温かい物語。
情報が氾濫している現代社会だからこそ、著者は「スロー・リーディング」を提唱する。「量」より「質」を重視した読書経験は、5年後、10年後にも役立つ教養を授け、人生を豊かにしてくれるだろう。夏目漱石、森鴎外、フランツ・カフカ、川端康成、三島由紀夫など不朽の名作から自作の『葬送』まで、深く理解することが可能になる、知的で実践的な読み方を紹介する。
日本一ソフトウェアの大人気夜道探索アクションゲーム『夜廻』公式ノベライズ、待望の文庫化!夜の町に消えた愛犬と姉を探すため、幼い少女はひとり闇を彷徨う。
ある地方都市で起きた放火事件を通して、自意識過剰な人間の滑稽さを見つめた「石蕗南地区の放火」、過食に走った美人の姉と、姉に歪んだ優越感を覚える妹の姿が鬼気迫る「贅肉」。また、事故死したはずの兄が生きているのではないかと疑いを抱いた妹の葛藤を描く「おたすけぶち」など、読んで心がざわつく、後味が悪いミステリー。人気の女性作家六人の、結末が衝撃的な作品を収録したアンソロジー。
牛スジ、葱鮪、トマト、蟹面といった名物おでんや、牡蛎のカレー煮、蒸しイチジクの甘味噌かけなどの美味しい小料理…東京・四谷の「めぐみ食堂」は、女将の恵が一人で切り盛りするおでん屋だ。元・人気占い師の恵は、ある事情があって今は“見る力”を失っていたが、結婚のさまざまな悩みを抱える常連客と接するうちに、“男女の縁”が見えるようになって―。ときにほろ苦くも心あたたまる新シリーズ第一弾。
元芸妓のもも吉は、わけあって今は祇園で甘味処「もも吉庵」を営んでいる。一見さんお断り、メニューは「麩もちぜんざい」のみの小さな店だ。そんな店を訪れるのは、舞妓になるために十五歳で祇園へやってきた少女、妻を亡くして一人で京都を旅する中年男性―さまざまな悩みを抱えた人たちへのもも吉の言葉は、ときに辛口だが、彼らの心を解きほぐしていく。京都の四季に彩られた感動の連作短編集。
六六〇年、唐・新羅連合軍によって百済は滅亡、王とその一族は長安に送られた。遺された王族は倭国へ亡命していた豊璋ただ一人―。新羅の金春秋、高句麗の泉蓋蘇文、倭の蘇我入鹿、葛城皇子(のちの天智天皇)…各国の思惑は入り乱れ、東アジアは激動の時代を迎える。大化の改新、朝鮮半島の動乱、そして白村江の戦いへと連なる歴史の裏でうごめいていた陰謀とは。圧倒的スケールで感動必至の長編小説。
晩年に建仁寺の「雲龍図」を描いた男・海北友松の生涯とは。―友松が若くして心ならずも寺に入れられた後、近江浅井家に仕えていた実家・海北家が滅亡する。御家再興を願いながらも絵師の道を選択した友松だが、その身に様々な事件が降りかかる。安国寺恵瓊との出会い、明智光秀の片腕・斎藤利三との友情、そして本能寺の変へ。武人の魂を持ち続けた桃山時代最後の巨匠と呼ばれる絵師を描く歴史長編。
戊辰戦争の際、官軍と奥羽列藩同盟の間で武装中立を目指した長岡藩家老・河井継之助は、「英雄」として語られることが多い。しかし、彼は本当にそうだったのか―。藩を救うために諸国を巡った若き日、妻・すがとの絆、会津藩公用方・秋月悌次郎や仙台藩隠密・細谷十太夫、そして武器商人エドワード・スネルとの親交を通して、動乱の時代を峻烈に生き抜いた人間・河井継之助の、真の姿に迫る感動の長編歴史小説。
岡っ引きの茂七が、謎めいた稲荷寿司屋台の親父が出す料理をきっかけに事件の真相に迫る「お勢殺し」(宮部みゆき)、菓子屋の跡取り息子なのに、菓子作りが下手な栄吉の葛藤と成長を描く「餡子は甘いか」(畠中恵)、風邪で寝込んだお勝が本当に食べたかったものとは何かを探る「鮎売り」(坂井希久子)など、江戸の料理や菓子をめぐる短編六作を収録した、思わずお腹がすいてくる時代小説アンソロジー。
単独で麻薬密売ルートを探っていた刑事が銃殺された。千葉県警刑事部捜査一課の高頭班が捜査にあたるが、事件の真相を知った警部・高頭冴子は真犯人に陥れられ、警官殺しの濡れ衣を着せられる。自分の無実を証明できるのは、事件の目撃者である八歳の少年のみ。少年ともども警察組織に追われることになった冴子が逃げ込んだ場所とは!?そして彼女に反撃の手段はあるのか!?息をもつかせぬノンストップ・ミステリー。
東京の臨海都市・綿津岬への引っ越しをきっかけに、怪現象に悩まされるようになった雨宮志朗。ある日彼は、廃墟のような喫茶店「ニライカナイ」に入ってしまう。そこには「お茶のお代に怪談を聞かせてほしい」という風変わりな店主がいた…。店に持ち込まれる怪異の謎が解かれるごとに、人々が怪異に襲われる理由、店主の意外な正体、そして街全体に関わる恐るべき秘密が浮かび上がっていく。
藤原氏が設立した施薬院の仕事に、嫌気が差していた若き官人・蜂田名代だったが、高熱が続いた後、突如熱が下がる不思議な病が次々と発生。それこそが、都を阿鼻叫喚の事態へと陥らせる“疫神(天然痘)”の前兆であった。我が身を顧みず、治療に当たる医師たち。しかし混乱に乗じて、お札を民に売りつける者も現われて…。第一五八回直木賞にもノミネートされた、「天平のパンデミック」を舞台に人間の業を描き切った傑作長編。直木賞&吉川英治文学新人賞ダブルノミネート作品。
庭師「室藤」は、薬種問屋から、暴風雨で荒れた庭普請の依頼を受ける。職人たちの世話をする、室藤の一人娘・お紗代はある日、垣根で隔てられた今は使っていない離れの庭から、子供の声がすることに気がつく。つられて足を運ぶと、そこには真っ赤な鶏頭の花が咲き乱れていた…。家族の確執から遺った念、紛れ込んだあやかしなど、庭に関わる不思議な事件を、お紗代が解決する感動の時代小説。文庫書き下ろし。
犯人も割れ、自白も取れた傷害事件に、独り納得できない新人刑事の安積は…「熾火」(今野敏)、タクシー強盗事件に隠された意外な真相とは「帰り道は遠かった」(黒川博行)、新宿署の鮫島と、殺人事件の重要な情報を寄せてきた中国人美女の思惑が交錯する「水仙」(大沢在昌)など、確固たる信念で事件に挑む警察官の姿を描いた六篇を収録。警察小説の旗手たちの人気シリーズから名作を選出した豪華アンソロジー。
大食いチャレンジに失敗したものの、お金を持っていなかったカエデは、居合わせた久留米斗真に救われる。彼は警視庁所属の警部で、カエデは運転技術を見込まれ、そのお抱え運転手となった。捜査と言いながら、高級レストランや美食家が集まるパーティーに行ったりするばかりの久留米にカエデは驚くが、不思議とそれが事件解決の手掛かりとなり…。おいしいものと謎が絶妙に絡み合う連作ミステリー。文庫書き下ろし。
大陸から海を渡ってきた胡人の父から医術を学んだ娘・瑞蓮が、腕を見込まれ、京の都の後宮へ。御簾の向こうの姫や女房達の身体や心の治療にあたるうち、瑞蓮は後宮に渦巻く陰謀に巻き込まれていく。共に働くのは若き医官の樹雨、そして陰陽寮の学生・安倍晴明も現われて…。百花繚乱の後宮で起きる様々な事件に、若き女医(薬師)が医学の知識を駆使して果敢に挑む、平安お仕事ミステリー。文庫書き下ろし。
日本全国津々浦々を愛猫のつづみを連れて巡りながら、小さなスペースを間借りしたり、ギャラリーやイベントの一角に招かれたりして、出張カフェ「迷い猫」を営んでいる如月たんぽぽ。占い師としての顔も持つ彼女は、ご当地のお茶、お菓子を出しつつ、訪れる客の悩みを聞いていく。そして彼女自身も各地で「あるもの」の行方を探していた…。心がほんのり温かくなる癒し系連作短編集。文庫書き下ろし。
蠱師の一族・麻績家ニ生まれた高校一年生の澪は、ある呪いのため、幼い頃より「長野から出るな」と言われて育った。しかし家族に内緒で出かけた京都で邪霊に襲われ、地元の高校生・高良に助けられる。呪いを解く鍵がこの地にあると考えた澪は、下宿屋「くれなゐ荘」で暮らすことになったが、そこに従兄の漣も駆けつけ…。高良の正体、そして澪の呪いの秘密とは?京都を舞台にした呪術幻想譚。
「立川談志」の落語に魅せられた杉崎は、安定した職を辞め、落語家を目指した。異例ともいえる七年の前座修業の後、なんとか二つ目になり、“山水亭錦之助”を命名されるも、食えない日々が続く。「人生の選択を誤ったな」と嗤う同窓生らを後目に、がむしゃらに高座に上がる錦之助に、末期ガン患者の前での落語の打診があり…。真打ち目指して奮闘する落語家の、笑いと涙の、心に沁みる人情物語。
「54字の物語」。
この「9マス×6行」の原稿用紙につづられた超短編小説が、今までにない新感覚の読書体験を提供します。子供から大人まで50万人を夢中にさせて、テレビやSNS等で話題沸騰!
このたび新作10編に加え、イラストも刷新し、装いも新たに待望の文庫化。
あなたは、この物語の意味、わかりますか――?
◆先日研究室に送ってくれた大きなエビ、おいしかったよ。話は変わるが、例の新種生命体のサンプルはいつ届くのかね?
◆「ただいま」と言えば「お帰りなさい」と返ってくる新生活が始まった。家賃も安いし、こんな一人暮らしも悪くない。
◆「やあ、私は未来から来た。今は戦前か?」「いや、戦後から七十年は経っているが」「ということは二十二世紀だな」
他の物語&物語の解説は、ぜひ本書でお楽しみください!
※『54字の物語1』(PHP文芸文庫)は2018年3月にPHP研究所から刊行された『意味がわかるとゾクゾクする超短編小説 54字の物語』に、新たな作品を10編収録し、加筆・修正を行ない、改題したものです。
八代将軍・徳川吉宗は、ひどい身体の凝りに悩まされていた。熱海の湯を江戸に運ばせることで、その苦しみを癒していたが、どうしたわけか、急に湯が届かなくなる。さらに熱海だけでなく、草津、箱根の湯にも異変が起きたらしい。吉宗の一大事に、お庭番とくノ一が調査へと向かうことに。一方、江戸では独自の「湯の神信仰」を説く天一坊なる者が現れ、町奉行の大岡越前がその素性について探索を始めるが…。新シリーズ第一弾。
昭和十一年、満州。南満州鉄道株式会社資料課の詫間耕一は、総裁・松岡洋右の命を受け、密偵の辻村とともに社内で頻発する書類紛失事件を調査することに。しかし調査対象だった人物が殺され、容疑者を追って乗り込んだ哈爾浜行きの急行列車の中で、さらなる殺人事件が…。謎の中国人美女、関東軍、ロシアのスパイらの思惑や陰謀が渦巻く中、詫間は真相に辿り着けるのか!怒涛のエンタメミステリー。
この男なくして「住友」は語れない!幕末、志士として活動後、司法官となった伊庭貞剛は、叔父で総理事の広瀬宰平に招聘され、住友に入社する。しかし当時の住友は、別子銅山の煙害問題を抱え、さらには宰平の独断専行が目にあまるほどであった。住友財閥の中にありながらも、住友を破壊せんばかりの覚悟を持って改革に臨んだ、“住友中興の祖”とよばれる経営者の生涯を描き切った傑作長編小説。
十六歳の北一は、亡くなった岡っ引き・千吉親分の本業だった文庫(本や小間物を入れる箱)売りで生計を立てている。やがて自前の文庫を作り、売ることができる日を夢見て。ちょっと気弱で、岡っ引きとしてはまだ見習いの北一が、相棒となる喜多次と出逢い、親分のおかみさんなど、周りの人に助けられながら、事件や不思議なできごとを解き明かしていく物語。宮部ワールドの要となる新シリーズ、待望の文庫化。
中学生の頃から悪さばかりしてきた、新谷凱。彼が、唯一興味を持てたもの―それは「人工知能」の世界だった。携帯電話会社でのアルバイトや電気機器メーカーでの企画開発などを経て、AIに携わる仕事に就いた凱。その企業で彼は、ある事件の捜査に協力することになる。その事件とは、自動運転技術が搭載された試験中の車が、人を轢いたというものだった…。人工知能の未来に警鐘を鳴らす、傑作サスペンス。
奥様は幽霊!?―昭和五年。田舎から東京に出てきた天涯孤独の少女・結月は、次々と女中が辞めてしまうという天方家で雇われることに。主人の怪しい仕事を手伝わされたり、息子の式神に見張られたり、庭の大蝦蟇に話しかけられたり、子犬の霊につきまとわれたりと、結月の日常は奇怪な出来事に大忙し。しかし天方家には、さらに何か大きな秘密があるようで…。感動の傑作和風ファンタジー。
高原の保養施設「風神館」に集まった十人の男女。彼らの目的は、自分たちを不幸に陥れた企業の幹部三名に、死を以って償わせること。計画どおり一人目を殺害した彼らが目にしたのは、仲間の一人の変わり果てた姿だった。誰かが裏切ったのか!?このまま復讐計画を進めるべきなのか!?皆が疑心暗鬼にかられる中、さらに仲間が殺されてしまう…。信頼と猜疑が交錯する密室ミステリの秀作。
“今世紀最強の霊媒師”とうたわれる櫛備十三は、実は霊を“祓う”ことができない。助手の美幸に叱られながら、持ち前の洞察力とはったりを駆使し、心霊現象の問題解決に奔走するが、事態は毎回思わぬ方向に転んでいき―。記憶を失くしたサラリーマンの霊、マンションの一室に取りついた十七歳の少女の霊…インチキ霊媒師が明らかにする、霊たちの秘密とは?異色の除霊ミステリー堂々開幕!
ちょっとした着眼点の違いで、小説はもっと面白くなる!本書は、『蹴りたい背中』『ゴールデンスランバー』など、現代の純文学やミステリー、古典などを題材に、作品をより深く楽しく味わうコツを、人気小説家がわかりやすく解説。小説を読んだ後、SNSで、作品の感想を書いたり、意見交換ができるようになる1冊です。文庫版では自著『本心』と『罪と罰』の解説を特別収録!PHP新書版を加筆・修正し再編集。
幼少期の人質時代から、運命を分けた数々の戦を経て、天下人として世を統べるまで―。初陣や桶狭間の戦いなどを通して、なぜ家康が自ら調薬を行うようになったかを描く「薬研次郎三郎」(宮本昌孝)、鎧を作る具足師から見た、三方ヶ原の戦いでの家康の変貌「大名形」(武川佑)、関ヶ原の戦いを前に、家康と石田三成が交わした密約とは「人を致して」(伊東潤)など、人気歴史作家六人による傑作アンソロジー。
医者の英雄と一見、幸せな結婚生活を送る絵里は本当の名前を咲花子といい、英雄が元夫を殺した証拠を探していた。一年半前、咲花子は刑事から当時の夫が転落死したことを知らされる。しかし夫殺しの容疑者だった英雄の不起訴が確定。彼女は真相を探るべく、顔と名前を変えて英雄に近づいた―復讐のために、人はどこまで非情になることができるのか?一人の女の情念を描いたサスペンス・ミステリ!
時は明治、女子が写真を学ぶ学校として設立された「女子写真伝習所」。伝習所に通う銀・基美・シズの三人組は、ある日新宿高野に「バナナ」という南国の果物が輸入されたと聞きつけたが、三人のお小遣いを集めても手が届かない高級品。どうしても諦められない銀は“写真よろづ相談所”を立ち上げ、お金を稼ごうとするも…。写真師になることを夢見る少女たちの“美味しい”ミステリー!文庫書き下ろし。
老舗を救うのは革新の味か、伝統の味か―。傾きかけた京都の料亭「糺ノ森山荘」を継いだ明美のもとに、亡き父の紹介状を携えた初老の料理人が訪れた。この男、腕は確かだが、つくる料理は古風なものばかりで、現場の板長との衝突が絶えない。そこで明美はどちらが料亭に相応しい料理をつくれるか、板長の座をかけた料理対決を提案する。イワシ、筍、鱧…旬の食材を用いた勝負の行方、そして男の正体とは。文庫オリジナル。
坂本龍馬が認めた男・陸奥宗光は、明治維新後、外務大臣として欧米列強と対峙し、不平等条約の改正に尽力する。そして、日本の尊厳をかけて強国に挑まんとする陸奥を支え続けたのは、妻の亮子だった。本書は、著者が最期に「これだけは書いておきたい」と願い、病と闘いながら綴った物語。未完ではあるが、著者の歴史作家としての信念を感じ取れる貴重な作品である。坂本龍馬の姉を描いた短篇「乙女がゆく」を特別収録。
鉄道マニアの公務員・小日向はある日、廃駅で立ち入り禁止となっている地下鉄銀座線萬世橋駅へと潜り込む。そこで出会ったのは、政府の“ある事情”により地下で生活する謎の集団「エクスプローラー」だった。その集団内で起こった殺人事件をきっかけに、小日向は捜査一課と公安の対立も絡む大事件に巻き込まれていく…。エクスプローラーが抱える秘密とは?殺人犯は誰か?東京の地下で縦横に展開するノンストップミステリー!
宮部みゆき、辻村深月、宇佐美まこと、篠田節子、王谷晶、降田天、乃南アサ 著/細谷正充 編
旬の女性ミステリー作家によるイヤミス・アンソロジー。見たくないと思いつつ、最後まで読まずにはいられなくなること請け合います。
衝撃の結末に心がざわつき、いやな後味が残るミステリーが「イヤミス」。
本書は、好評を博した第一弾『あなたの不幸は蜜の味』と同じく、女性作家による鳥肌必至の「イヤミス」傑作短篇を集めたアンソロジー。
自分で気づかないうちに生徒を傷つけていた人気教師の身に、十三年後に起こったことを描く「パッとしない子」(辻村深月)。
都心のマンションから郊外の公社住宅に「都落ち」した一家が遭遇した人間関係の闇に、読む者の身の毛がよだつ「コミュニティ」(篠田節子)。
東京という都市の持つイメージに絡めとられ、破滅した二人の女性を描く「裏切らないで」(宮部みゆき)など、読み出したら止まらない、「嫌度数」マックスの作品が揃いました。
人間の「怖い」本質に、目を背けることなく立ち向かいたいあなたにおすすめの一冊。
書き下ろし二作を加え、さらにパワーアップした「イヤミス傑作選」第二弾!
いま話題の女性時代作家が勢ぞろい!
桜、あじさい、朝顔、菊、椿……言葉にできない思いを花に託した、美しくも切ない時代小説アンソロジー。
●「吉原桜」(中島要)
吉原一の人気花魁・唐橋は、妹分の紅鶴と間夫を別れさせる。悲しみに沈む紅鶴に着せるために、唐橋が仕立て直しを頼んだ百花繚乱の“いろはの打掛”とは。
●「桜の森に花惑う」(廣嶋玲子)
猫の姫様の庭である桜の森に迷い込んだ人間の久蔵は、涙にくれる華蛇族の娘・初音に出会う。恋をしなければならない一族なのに、いまだ恋ができずにいる初音に対して久蔵は……。
●「あじさい」(梶よう子)
御薬園同心・水上草介は、元同僚から相談を受ける。祝言を挙げることになったが、剣術道場の兄弟子が頼んでいないのに仲人をやる気だという。隠居の身である兄弟子は、道場では少々煙たがられ、さらに息子の嫁からも厳しい態度を取られているようで……。
●「ひとつ涙」(浮穴みみ)
蔵前の札差の娘・おまきは、縁談がなかなかまとまらず嫁き遅れといわれるも、七歳のときの初恋の相手が忘れられない。そんな中、四年前に行方をくらました幼馴染の助五郎が現れる。やさぐれた魅力を持つ助五郎は、どうやらわけありのようで、おまきは助五郎に協力することになる。
●「縁の白菊」(諸田玲子)
君江は意中の相手と菊見をするために、待ち合わせ場所の茶屋で相手を待つが、突如、狼藉者が茶屋を襲撃する。狼藉者が居座る茶屋を抜け出した君江だが、茶屋の娘に懇願され、ある男を探すことになり……。
●「侘助の花」(宮部みゆき)
掛け行灯をつくる際に侘助の花を描く看板屋が、その理由を尋ねられ、一度だけ“生き別れの娘を探すため”という作り話をする。しかし、存在しないはずの実の娘を名乗る女が現れ……。
四季折々の花を背景に、江戸の人情を描いた短編六作を収録。
「ほかに好きなひとができた」―次から次へと女性とつきあい、すぐにそう別れを告げる男・神崎登吾。唐突な別れを受け入れられない萠は、姿を消した彼を追い、自分より前の交際相手、登吾の同級生、親戚などを訪ねて回る。彼に運命を捻じ曲げられた人々の証言から、徐々に浮き彫りになる登吾の過去。そして萠が最後に辿り着いてしまった、衝撃の真実とは。戦慄の傑作サスペンス。
妻と離縁をしたいが、持参金を使い切ったために別れられずにいる乾物屋の主人。食べすぎで出戻ってきた姉を大喰い会に参加させることで、賞金を稼ごうとするが…「福袋」(朝井まかて)、つわりで食べられなくなった年下の義母のために、流行の猪鍋屋を訪れた定町廻り同心の千蔭。評判通りの味に義母の食も進むが、千蔭は猪鍋屋の騒動に関わることになり…「猪鍋」(近藤史恵)他、江戸の美味を描いた傑作五編を収録。
人気女性時代作家が贈る、さまざまな動物と人間との交流を描いたアンソロジー。出奔した女中が可愛がっていた鳩をきっかけに、事件が解き明かされる「迷い鳩」(宮部みゆき)、新たな店子が入らず、取り壊しの危機に陥った長屋のために三毛猫“サバ”がひと肌脱ぐ「色男、来たる」(田牧大和)、動物の言葉がわかる修行僧の少年と、彼に拾われた犬が禅の公案に挑む「犬に仏」(小松エメル)など、珠玉の五編を収録。
芸術という名のタイムカプセルが、いま開かれる―。京都国立博物館研究員の望月彩のもとに、レイモンドと名乗るマカオ博物館の学芸員が現れた。彼に導かれ、マカオを訪れた彩が目にしたものは、「風神雷神」が描かれた西洋絵画と、天正遣欧少年使節の一員・原マルティノの署名が残る古文書、そしてそこに記された「俵…屋…宗…達」の四文字だった―。天才絵師・宗達の名画“風神雷神図屏風”を軸に描く冒険譚。
雷神と風神が結んだ数奇な縁とは―。織田信長の命を受け、天正遣欧少年使節と出立した宗達。苦難の航海を経て、一行はついにヨーロッパの地を踏んだ。そこで彼らを待ち受けていたのは、絢爛華麗な絵画の数々と高貴な人々、ローマ教皇との謁見、そして一人の天才絵師との出会いだった。謎多き琳派の祖・俵屋宗達とバロックの巨匠・カラヴァッジョ。芸術を愛する者たちの、時空を超えた魂の邂逅の物語、ここに完結。
あの世とこの世の境にあり、「会いたい人に会わせてくれる」と噂のカフェ・ポン。天寿を全うした猫のふー太は、「仕事を5回達成すると、会いたい人に会える」という報酬につられ、店主・虹子のもとで働くことに。亡くなった父に個展を見てもらいたい絵本作家、生まれなかった我が子を思い続けている保育士など、彼らが「会いたい」人からの言葉を“伝言猫”が伝えるべく奮闘する、感動の連作短編集。文庫書き下ろし。
南町奉行・鳥居耀蔵に江戸から追放された七代目市川團十郎は、復讐のため鳥居に襲い掛かる寸前で、浪人・鶴松に気絶させられた。目を覚ました團十郎は、鳥居に冤罪をかけられて父を失ったという鶴松とその仲間から、ある計画を聞く。鳥居は富くじの裏で百万両を溜め込んでいるらしく、それを残らず奪おうというのだ。團十郎と鶴松は手を組み、その算段を立てるが…。一気読み必至の傑作時代エンタテインメント!
1923年に完成した帝国ホテル二代目本館、通称「ライト館」。“世界一美しいホテル”“東洋の宝石”として絶賛された名建築だが、完成までの道のりは、想像を絶するものだった――。二十世紀を代表する米国人建築家、フランク・ロイド・ライトによる飽くなきこだわり、現場との対立、難航する作業、襲い来る天災……。次々と困難が立ちはだかったが、男たちは諦めなかった。ライト館の建築に懸けた者たちの熱い闘いを描いた、著者渾身の長編小説!
悩んでいる人の前にあらわれると噂の喫茶店・ソムニウム。亡くした飼い猫に後悔を抱く女性、他人を優先しすぎて恋愛ができない男性、夢をかなえた結果、母親を失望させてしまったタクシー運転手…。そこでは、わだかまりを抱えた客たちの「胸に咲く花」を対価に、不思議な店主が願いを叶えてくれるという。「胸に咲く花」とは何か、そして店主の意外な目的とは―。切なくも心あたたまる連作短編集。
愛情深い父母の元、平凡な毎日を送ってきた稲野家の三兄弟。しかし彼らは、ある日突然、両親を交通事故で亡くしてしまう。そんな三兄弟の家に、ほとんど面識のなかった母方の祖母がやってきた。彼らは戸惑いながらも祖母と暮らすうちに、近隣の住民のトラブルや、自分たち兄弟の関係、そして亡き父母が遺したとんでもない「秘密」とも向き合うようになり…。ハートフル小説の名手が紡ぐ、感動の家族小説。
穏やかでお菓子作りが上手な母・茜と、法律事務所に勤めるしっかり者の娘・七。ある日、茜は夫から離婚を言い渡されてしまう。突然のことに傷つき、離婚後も落ち込む茜。茜の生き甲斐を取り戻そうと、七と商店街の友人たちは手作りケーキの販売を持ちかけ…人生へのリベンジをかけ、母娘二人の洋菓子店が開店する!奮闘する母と娘の絆を、スイーツと共に温かく描く感動作。
京都市中京区の薄暗い路地にある「中京こころの病院」。心の不調を抱えて病院を訪れた患者に、妙にノリの軽い医者が処方するのは、薬ではなく、本物の猫!?戸惑いながらも、猫を「服薬」する患者たち。気紛れで繊細、手がかかるけど愛くるしい猫と暮らすことで、彼らの心も変化していく。そして医者が猫を処方するのには、ある理由があって―。猫と人が紡ぐ、ハートフルストーリー!
藩の上役の奸計によって家族を亡くし、遊女に落とされた伊勢国津藩の武家の娘・凛。復讐を誓う彼女は、津藩江戸屋敷に出入りする町医者・栗山千歳に身の上を偽って近づき、彼の弟子となった。しかしその千歳は、かつて恨みを買い、命を狙われている「仇持ち」であった―。凛、千歳、千歳の助手として凛を警戒する隻腕の佐助。わけありの三人が織り成す人情時代小説シリーズ第一弾。
忘れられないあの味や、味とともに蘇るあの日の思い出―。作家や料理研究家、デザイナーなど、様々な分野の第一線で活躍する著名人が、「思い出のごはん」をテーマに綴ったエッセイ集。家庭の味から海外で食べたひと皿、さらには「どうしてこうなった!?」という珍品まで、多種多様な料理が登場。きっと共感する一編があるはず。ときにほろりと涙が流れる、味わい深い三つ星級のエッセイを75作収録。