「こんなアンソロジーを編んでみたい」という探偵小説研究会会員の発想から生まれた、架空アンソロジーの見本帳です。何しろ架空なので、実際のアンソロジーを編む時なら意識せざるを得ないページ数や価格の制限などを気にすることなく、会員がのびのびと夢を語っています。(千街)
探偵小説研究会が毎年刊行している、本格ミステリの年間ベストを選出する企画。アンケートで決まるランキングだけでなく、毎年異なる特集(今年は暗号特集)、作家インタビュー、映像やゲームや演劇やライトノベルや周辺書などの盛り沢山なコラムにも要注目です。(千街)
2010年までの十年間の本格ミステリを紹介していた『本格ミステリ・ディケイド300』に続き、いよいよ直近の約十年間の本格を、座談会、同人誌や復刊の紹介などさまざまな角度から紹介する一冊が刊行されました。「特殊設定ミステリ」「多重解決」などの用語説明も役立ちます。(千街)
第16回本格ミステリ大賞評論・研究部門を受賞した同人誌『ミステリ読者のための連城三紀彦全作品ガイド【増補改訂版】』のさらなる増補改訂版。全作品レビューと評論・コラムで、不世出の天才ミステリ作家・連城三紀彦の全体像を見渡す連城三紀彦ガイドの決定版です。(浅木原)
ディストピアに関連した様々な多くの物語を論じた本です。監視社会、同調圧力、分断、ジェンダー、ポスト真実……。古典からここ数十年の話題作、文学からエンタテインメント、一部に映像や音楽なども含め、今ここを考える手がかりとなる作品について語っています。
本の表紙にある著者の名前よりも、帯に記された推薦者(綾辻行人さん!)の名前のほうがずっと大きいのは、版元の販売戦略上、当然の判断でしょう。仕事で付き合いのある編集者諸氏から、「自分は××冊読んでいた」という報告のメール多数。局所的反響が大きかった。(佳多山)
副題は「ミステリーアンソロジー」とだけ。帯の宣伝を見ても、裏表紙の内容紹介を読んでも、何をコンセプトに作品を集めたものか敢えてわからなくしています。もし僕が初心者の昔に返って本書を開けば……こんなにも次から次と騙される自分にきっと不安になります。(佳多山)
江戸川乱歩が幼少期から思春期までの15年間を名古屋で過ごしたという事実は、あまり知られていません。しかし、乱歩作品の重要なモチーフであるパノラマ館や見世物、八幡の藪知らず(迷路)を彼が体験したのは、実は名古屋時代のことでした。本書は、従来等閑に付されてきた感のある乱歩と名古屋の関係を調査し、地方都市の近代化と探偵小説の黎明期を複眼視して考察しています。(小松)
ミステリは怪異現象を合理主義で解決する志向性を持ちながら、怪談の話型と非常に近しい語りの構造を有しています。本書は、明治から令和にわたるバラエティ豊かで具体的な作品分析を通して、怪談における「恐怖」とミステリにおける「謎」とが交錯する物語構造の魅力や問題点を、読者にわかりやすく伝える論文集です。(小松)
クトゥルー神話ってなんかいっぱい神様の種類がいて分かりにくいし、マニアはいろいろうるさくて面倒そうだし、そもそも「クトゥルー」なの? それとも「クトゥルフ」なの? 一見にはちょっと――と諦めているあなた。本書で基本を学び、紹介されている作家・作品を読めばクトゥルー恐るるに足らず。Let's Try!(笹川)
捕物帳というジャンルを確立した岡本綺堂『半七捕物帳』の中から、本格ミステリの傑作を一八本セレクトしました。編者解説は、綺堂が「近代に入り失われていく江戸の面影を残すために捕物帳を書いた」という定説に疑義を唱えるなど、従来とは違う『半七捕物帳』論になっています。(末國)
『源氏物語』のアレンジ(田辺聖子、瀬戸内寂聴)、歴史小説(永井路子)、ミステリ(森谷明子)、伝奇小説(澤田瞳子)と、紫式部・『源氏物語』に関係する短編を五作選びました。赤染衛門が語り手の永井紗耶子「栄華と影と」は書き下ろしです。二〇二四年の大河ドラマ『光る君へ』の予習にいかがでしょうか。(末國)
ミステリ小説や漫画の映像化で行われる改変は、どんな理由に基づくものなのか。アガサ・クリスティー、横溝正史、東野圭吾らの映画化やドラマ化を通して、今世紀のさまざまな原作つきミステリ映像の改変に込められた意図を細かく読み解く評論です。(千街)
かつて本格ミステリは映像化には向かないと言われていましたが、その状況は近年になって一変しています。映画、ドラマ、アニメ、バラエティ番組など、さまざまな映像ジャンルから本格ミステリの傑作・秀作を紹介する、類例のないガイドです。(千街)
この本では、探偵小説・小川洋子・吉田健一・芥川賞選評・人形愛文学・軽井沢文学・ニート文学について書いています。どれかひとつでも気になるかたには、ほかの話題もおもしろく読める本になっています。騙されたと思ってぜひ!(千野)
文学理論・自己啓発・心理学・宗教・ビジネス書などいろんな分類をされた本。高校・大学入試や模試の国語の問題にもよく使われています。千野帽子の著作中いちばん愛されてる本であることは間違いありません。プレゼントに最適!(千野)
青崎有吾や斜線堂有紀など二〇一〇年代デビューの気鋭の作家を、特殊設定ミステリといったジャンル内の発展を踏まえつつも、縦横無尽に論じた作家論集。探偵小説研究会の法月、円堂が選んだメフィスト評論賞受賞者も参加しており、新鋭評論家の新しい視点にも注目頂きたい。(蔓葉)
ライフワークとなりつつある「法月綸太郎ミステリー塾」シリーズの第四巻。平成本格の俊英たちを後方支援しながら、昭和時代のレジェンド作品へさかのぼり、そこから海外ミステリの歴史に視線を転じていく三部構成で、表題作は二十年ぶりに書いた渾身のロスマク論です。(法月)
日本文学や映画の研究者による論文集です。第一部には日本ミステリの歴史とその変容を概観できる論文を集めました。第二部は「日常の謎」や最新のガジェットなど、様々な角度から作品に切り込む各論です。第三部には北海道在住の作家・評論家による座談会を収録しています。(諸岡)
年間の優れた本格ミステリ小説と評論・研究を顕彰する「本格ミステリ大賞」。その小説部門の歴代受賞作を論じることで、今世紀に入ってからの本格ミステリの歴史そのものを振り返る企画です。読み応えのある力作評論が揃っています。(千街)
講談社のMRC(メフィスト・リーダーズ・クラブ)でLINE連載されていた、評論家や書店員による講座の書籍化。新本格、古典、ライトノベル、社会派、特殊設定、警察小説などテーマ別のブックガイドになっており、わかりやすい語り口も読みどころです。(千街)
七人の書評家が事前の打ち合わせなしで毎月の月間ベストを選ぶという、「翻訳ミステリー大賞シンジケート」の名物連載「書評七福神」の書籍化です。一つの作品に票が集中する時あり、七人全員がバラバラの作品を推す時あり、月ごとに予想の出来ない結果が出るので楽しめます。(千街)
綾辻行人ら多くの作家を世に送り出し、「新本格の生みの親」と呼ばれた講談社の名編集者・宇山日出臣の業績を振り返る一冊。故人の人柄を偲ぶことが出来る追悼文のほか、探偵小説研究会会員の佳多山大地・千街晶之・巽昌章による座談会なども収録されています。(千街)
基礎として読んでおくべき巨匠と、ここ十年でデビューして活躍中の勢いのある新鋭に絞って、国内・海外合わせて二十人の作家を紹介するという、今まで存在しなかった着眼点のミステリ・ガイドです。クリス・ウィタカー、月村了衛のインタビューにも要注目。(千街)