第5回ことばと新人賞受賞作!!
映像や3DCGを扱う制作プロダクションに勤めるうつヰの一日は長い。今夜バスタオルで体を拭くのを忘れないようメモするアプリケーションには何が最適か。部長の言うユーキューは「有給」なのか「有休」なのか?仕事を終えると「プリンセサイザ」にログインする。京王線沿線の各駅に配置された王女たちと、仮想空間システムを渡り歩けるソーシャルVRの中で交流するのだ。
選考会で激賞された第5回ことばと新人賞受賞作「フルトラッキング・プリンセサイザ」ほか、一年後をつづった「メンブレン・プロンプタ」、うつヰの学生時代を描いた「チェンジインボイス」を収録。
著:池谷和浩
価格 ¥1,980(本体¥1,800)
出版社:書肆侃侃房(2024/05/23発売)
【著者プロフィール】
池谷和浩(いけたに・かずひろ) 1979年6月生まれ。
栃木県立宇都宮高等学校卒。筑波大学日本語・日本文化学類卒。東京都在住、会社員。現職はデジタルハリウッド株式会社の執行役員として大学事業を統括。
「フルトラッキング・プリンセサイザ」で第5回ことばと新人賞を受賞。
説明されずに放り出されていること、細かく描写されていること、その極端ともいえるバランスが得難い読書体験を生んでいるように思える。
ぎっちりと詰め込まれた文章によるバーチャルとリアリズム、バーチャルのリアリズムをひたすら追いかけてゆくことで、次第に主人公「うつヰ」の日常が構築されてゆく。
また「うつヰ」がログインしている架空のVRチャット「プリンセサイザ」も、京王線沿線の駅に存在する王女という設定、そして互いを尊重しながら交流したり歌を歌ったりする様が良い。
表題作のほか「チェンジインボイス」「メンブレン・プロンプタ」も、「うつヰ」をメインにしながらAIなどテクノロジーを絡め、人間関係の広がりや深まりを感じさせる。
どこか奇妙な爽やかさや温かさのある読後感は、この作品独特のものだ。
(ウェブストアスタッフM)
池谷和浩さんの選書コメントをまとめたフリーペーパーはこちらから!(PDF937 KB)