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本のない人生なんて。
世界最大のニューヨークブックフェアの裏側から見る
本を探し、本を売り、本を愛するブックセラーの世界。原題:THE BOOKSELLERS/D・W・ヤング監督作品/アメリカ映画/2019年/99分/16:9/5.1ch
字幕翻訳:齋藤敦子 配給・宣伝:ムヴィオラ、ミモザフィルムズ
内容:
世界最大規模のニューヨークブックフェアの裏側から、ブックセラーの世界を捉えたドキュメンタリー。
業界で名を知られるブックディーラー、書店主、コレクターや伝説の人物まで、個性豊かな人々が登場。
社会の多様化やデジタル化で本をめぐる世界は大きく変わったが、本の魅力は絶対になくならない!
4.23(金)ヒューマントラストシネマ有楽町/新宿シネマカリテ/UPLINK吉祥寺 ほか全国順次公開
4月23日(世界 本の日)より、映画『ブックセラーズ』が日本公開となります。
ブックセラーズ、直訳すれば「本を売る人たち」ですが、もちろん彼らは単に本を売るだけではなく、<本を探し、本を売り、本を愛する>人たちです。本作のキャッチコピー「本のない人生なんて。」は私たちにも共通する世界観です。この機会にあらためて書店の魅力を知っていただければと思います。
紀伊國屋書店では、毎年スタッフがお客様におすすめしたい本を投票で選ぶ「キノベス!」を企画しております。このページでは当社の“ブックセラー”たちが選んだ2003年から2021年までの「キノベス!」大賞受賞作をご紹介いたします。
キノベス!とは……
「キノベス!」は過去1年間に出版された新刊を対象に、紀伊國屋書店で働く全スタッフから公募した推薦コメントをもとに選考委員の投票でベスト30を決定し、お客様に全力でおすすめしようという企画です。
当社のスタッフが自分で読んでみてほんとうに面白いと思った本ばかりを自信を持っておすすめします。
店頭で、ぜひお手にとってご覧ください。
※推薦コメントを書いたスタッフの所属は当時のものです。
※受賞当時の単行本が入手できなくなっている作品もあるため、文庫化されているものは文庫版をご紹介しています。
キノベス!2003 第1位
あらかじめ失われることが前提の物語は、おとぎ話というにはあまりに切なく暖かい。毎日記憶がリセットしてしまう老数学者と,そこに通うことになった家政婦の私、阪神タイガースファンの息子10歳。3人で過ごした奇跡のような1年とその後。最初のページから予感にあふれています。美しい物語です。いつかすべてを忘れ去ったとしても、たとえ別れの日が来ようとも、他人をここまで大切に思えるなら、あのやさしい日々は確かにあったし、思い出せばいつでも暖かな気持ちになれる。そんな出会いがこの本の中にはあります。
キノベス!2004 第1位
羨ましいと私は思った。夜を徹して歩き通す歩行祭。たった一夜の出来事が、特別なものに変わるそのことを彼らは感じる事ができたから。「あの頃」をあっさり卒業してしまった私は損をした気分になる、ほんとうに切なくまぶしい物語なのです。
ただ歩くだけでは奇跡は起こらなかった。一緒に歩いたひと、これまで一緒に歩んできた人達がいたからこそ、貴子と融にとって奇跡の一夜となった。読後、共に歩んだ親友に会いたくなった。
80kmという長い距離を夜通しひたすら歩き続ける苛酷な学校行事「歩行祭」。登場人物たちはその行事の中で、それぞれ思いや悩みをかかえて歩いていきます。部外者がまぎれこんだり、誕生日をむかえたり、秘密の賭けを実行したり。ただ歩くだけの行事の中に、様々な驚きや発見や変化や友人と時間をわかちあう喜びがあり、すべてを歩き終えた後には清々しい達成感を感じることができます。自分の学生時代を思い返さずにはいられない素敵な青春小説です。
この本には「青春」がぎっしりと詰まっている。俵万智の有名すぎるデヴュー歌集のなかに「青春という字を書いて横線の多いことのみなぜか気になる」という歌があるのだけれど、そういう青春の混沌というかぐちゃぐちゃさ加減を、美しく、ほほえましく描ききった秀作。共学、とくに公立の進学校に通った人たちにはぜったいツボだと思います。
キノベス!2005 第1位
「やはり活動家・上原一郎は只者ではなかった!」息子の二郎ならずともそう叫びたくなる父の破天荒ぶりには脱帽する。だがラストシーンは「やはり父・上原一郎は偉大だった」と言わしめるくらいの男気と家族愛が強く私の胸を打ちつけた。
「父は元過激派だ。」それが自分の父親だったら?そんなのは絶対にイヤだ!でも友達の父親だったらすごくイイ!東京、そして西表島を舞台に友情と家族愛を綴りつつ、著者お得意のドタバタ(喜!?)劇も健在。読後に古い友人に手紙でも書こうかと思わせる一冊。
キノベス!2006 第1位
読み終えて、書店員としてこの本をどう伝えればいいのだろう、と思った。端正で、後書きにもあるとおり抑制の利いた文章。しかし語られる物語は、なんとも苛烈で、想いに満ちている。主人公の職業「介護人」とは何かは、あえて言うまい。このような職業を、世界を、物語を産み出されては我々にはそれを味わうしかないのではないか。
打ちのめされた。ラスト30ページの重さと言ったらない。明かされる残酷な真実。「特別な人間」である主人公たちの悲しみが、まるで自分のもののように胸を襲って、しばし呆然としてしまった。そして考えた。私にとって、この世界にとって、大切なこととは何だろう、と。読み終わった今も、ずっと。本当にこの1冊には、否応なしにそうさせてしまう、すごい力があるのだ。本を閉じてからも物語が続いているような、この余韻はこの本でしか味わえない。
キノベス!2007 第1位
叫びそうになった。しかし、喉の奥で詰まった。涙が浮かんだ。でも、流れ落ちはしなかった。そんな驚愕とやるせなさ。青空の下、誰のために駆け抜け、何のためにペダルに力を込めるのか。犠牲という存在に、それを乗り越えてゆくということに私たちは何かを感じずにいられない。
何が起こったのかわからなかった。ラストに向かう手前、全ての真相、真意がわかった途端に、涙があふれ出た。読み返しながらも、泣きやむことが出来ず、かなりの間、泣いていた。自転車競技に対する知識などないままに読み進め、少しずつ引っかかりを感じながらも、ぐいぐいと読まされた。誰を信じたら良いのか判断できぬまま主人公の動きを追いかけた。人に犠牲を与えてもらっていた彼が犠牲にしたもの、それが何のためになのか。全ての伏線を頭の中でつなげた時の衝撃はいまだ覚めていない。
自転車ロードレースの世界で、アシスト達はエースを勝たせるためだけに走る。それはまさしく犠牲。エースもまた、すべてを引き受けて走る。それもまた犠牲。様々な犠牲がある中で、ラスト最大の犠牲が現れる。その真相は、とても重くて苦しくて…。けれど何故か清々しい。前を向いて歩いていこうと思わせてくれる何かがあるのだ。言いたいことは1つだけ。とにかく読んで欲しい。
キノベス!2008 第1位
書いてくれてありがとう。そんな気持ちになれる作家はあまりいない。飯嶋和一はそう思わせてくれる数少ない作家の一人だ。4年ぶりの新作のテーマは「島原の乱」。誰もが一度は耳にした変えられぬ史実から、飯嶋氏はいつも新たな事実を教えてくれる。一作読むと虜になることまちがいなし。ぜひ仲間になってほしい。
「黄金旅風」から4年、待ち焦がれた新刊の重さはなんと600グラム!島原の乱をテーマに権力者たちの愚劣ぶりを痛烈に描くが、叛乱軍を美化せず、その崩壊を緻密にたどりながら、ドロップアウトした寿安に希望を託すところがすばらしい。重さ以上に充実の大傑作!!
キノベス!2009 第1位
読んだ後しばらくたっても、登場人物たちの言葉が胸にうずまいている。人の数だけ「世界」はあって、しかし生きてゆく「世界」はただひとつだということ。それが圧倒的に悲しい。初の長編作にして、生きる悲しみという答えの出ない問いに正面から向き合った作家に拍手!
キノベス!2010 第1位
「さみしい」という孤独な四文字のことばに、嘘ややましさ、なにかごちゃごちゃとしたどぎつくカラフルなもの、たくさんの不純物を混ぜてこねると、この小説が生まれる気がします。もちろんその「さみしい」はとてもヘンな形をしているのですが、だからこそ愛おしく、大切だと思えるのです。
洗面器で水泳を教える女性、玄関から27歩以上歩けない女性、この本に登場する人々は少し滑稽だけれど、愛すべき人々。彼らは人を愛しては孤独になる。でも、さめざめと嘆いたりしない。それぞれの、新たなひとりぼっちの場所を見つけてゆく。それは、間違いなく希望の場所なのだ。
※集計対象期間変更のため、キノベス!2011はございません。
キノベス!2012 第1位
熱い。とにかく熱い!! 舞台は出版社、出てくるのはいい大人ばかり。けれどもこの作品は青春小説と言って良いのではないでしょうか。すごいアクションがあるわけでも激しい言葉のやりとりがあるわけでもない。だけども熱量過多。例えるなら、青い炎の様な。そう、熱い魂がビシビシ伝わってくる作品なんです。『だれかの情熱に、情熱で応えること』 自分もそんな風に生きてみよう。力強く前向きな気持ちをくれる、三浦しをん先生の最高傑作です!
読みはじめて数ページで夢中になり、一気に読みきってしまいました。1冊の辞書をつくりあげる。その編集部に関わる魅力的な登場人物達の葛藤や熱意、言葉を紡ぐようにつながっていく人間模様に、じんわり心があたたまります。言葉という生きた広い海、そこから言葉を掬いあげて辞書という舟をつくりあげていく。地味なようで壮大なこのお話を読み終わった時には、きっと日本語がもっと好きになっていると思います。読んで良かった。自信を持って言える素敵な1冊です。
キノベス!2013 第1位
感想を言葉にする前に、心が、体が、深く満たされて素晴らしさを実感する、小説であるのに言葉がたちうちできない、そんな作品だ。ひとは、人と人との間にあるから人間というのだと聞いたことがある。愛しさやもどかしさ。汗のにおい、涙のきらめき。他人とつながることで自らの感情は溢れ、感覚は冴え、心と体の輪郭を意識する。自分という存在が、生きるということが確かなものになる。人間であるとはどういうことかを作品にした、実はとんでもないことをやり遂げた小説だと思った。だから理屈じゃなく根源的なところが揺さぶられる。西加奈子はすごいことになった。
ふくわらいをするように目隠しと手さぐりで選んできた今までを振り返ってみて、それが失敗してもいびつでも、まるごと笑って認めて愛してあげられたらいいと思う。西さんありがとう。私も世界を愛せるかもしれません。
キノベス!2014 第1位
読んでいる最中、わたしの耳にも想像ラジオが聴こえてこないか、ずっと耳を澄ませていた。電波でつながっている人々の心強さ。聴きたい人の声が聴こえない、その切なさ。読むのを中断することができなくて、ページをめくる手が止まらなかった。
読み終えてから、しばらく経ちます。それでもときどき、ふとした瞬間に、チューニングが合う時がある。ざわざわとしたノイズが、自分のからだの中やこころの奥にある、ということ。そしてもちろん、自分じゃない誰かにもある、ということ。そのことを、忘れたくない、と思う。そういう視点をこの本は、私にくれたように思うのです。
キノベス!2015 第1位
震災の本だ、と思わないでほしい。これは、生きることに、働くことに、誰かの役に立てることに一生懸命戦う人々の話だ。仲間を助け、頼り、守ろうとする、挑戦の話だ。しかも彼らはフィクションではない。彼らが実際にいる、と思うだけで、これからの未来にも勇気がもらえる気がする。
被災地復興は、現場の「名もなき人」によって支えられている。ニュースにはならない、地道な努力による「復興」。その姿が、石巻工場を舞台に描き出されています。心からの敬意と感謝が湧き起こる一冊です。
実は、「出版業界の内輪褒めだったら嫌だなあ」と思ってなかなか読めないでいました。誤解でした。製紙工場の人たちが「つなげ」ているのは紙だけじゃない。これはもっと普遍的な、心奮い立つ一冊です。
キノベス!2016 第1位
調律師の青年と、羊と、ふたごと、森の物語。音と自然、言葉には表せない美しさが本の中に広がっている。そして美しいものを信じて歩む人たちの力強さに心奮わされる。「特別」ではなくても生きていく、生きようとする。そんな意志への肯定と祝福に満ちた物語だ。胸の内に入り込む言葉が読み返すたびに加わっていく。それはきっと今、必要な言葉がこの本にあるからだ。
感想は言いません。この美しい小説を、先入観なく読んでほしい。宮下奈都という作家の名を、多くのひとに知ってほしい。「才能があるから生きていくんじゃない。そんなもの、あったって、なくたって、生きていくんだ」。
新人のピアノ調律師として日々過ごす外村青年。彼が成長していく中で感じる小さな小石のような輝きがいつしか胸の内でダイヤモンドの煌きに変化していく。タイトルの絶妙さは読後にじんわり染みて来ますよ。
キノベス!2017 第1位
「足だけを使って、水の中で何かを探すこと」「だれか来ているのではないかと期待して、何度も何度も外に出て見てみること。」ことばを観察すればそれを使う人々がどんなカタチで世界を切り取っているかがわかる。しかし、この本に載ることばはカタチすらうまく把握できない。だからこそ世界中の国や人々、その生活・文化・心情などに想いを駆け巡らせてくれる。感性を豊かに刺激してくれる一冊。
日本語に訳す時、ひと言で翻訳できない言葉を世界中から集めた絵本。日本語も素晴らしいように、他の国の言語も素敵だと気づきます。"この感覚"を一語で表せる言葉達を見ていると、それぞれの国柄も分かるような気がしてきます。イラストも可愛く大切にしたい本です。
ページを開くたびに色彩豊かで素敵なイラストが目に飛び込みます。その横に、訳すときに言い表すのが難しい言葉が書かれています。そんな新しい単語集は、見るたびに「こんな言葉があるんだ」「良い言葉だな」と不思議な気持ちになります。素敵な言葉との出会いを作ってくれる1冊です。
キノベス!2018 第1位
電車の中で読みながら、恐ろしさに何度も本から顔を上げてしまった。
これは、「小説」だよね。本当のことじゃないよね。
周りの乗客はスマホに夢中で、家に帰れば、テレビでは世界の貧困やテロのニュースが流れている。これは、本当のことじゃない。今は、まだ。
この本を読んでいるとき、現実とリンクしすぎている気がして恐ろしくなった。私たちの見ている現実、流れるニュースは本当に真実を映しているのだろうか。この物語が、予言の書ではないと、信じたい。
キノベス!2019 第1位
この物語は家族の成長の物語ではない。「家族」という外枠が変わってしまうことはあるけれど、その中で変わらないことを描いた物語だ。「父」「母」「娘」という言葉がとけてしまうような信頼のかたち。ラスト数ページ、物語の視点は変わる。未来へ"バトン"を渡そうとする想いをもつことの幸福に包まれる。
三番目のお父さん[森宮さん]がいい! 朝から進級お祝いにかつ丼作ったり(自分は食べない......もたれるから)、父親たるもの娘の合唱祭の歌は歌えないと! とこっそり練習したり(ものすごく上手に歌える)。全く血のつながってない優子ちゃんを育てることは「自分の明日と、自分より沢山の可能性を含んだ明日がやってくる事。親になるって未来が2倍になるって事」なんだと語る。バトンを受け取るか迷っている人の背中を優しくそっと押してくれる1冊だ。
17年間で7回も家族の「形態」が変わった優子。とはいえ優子の家族はいつもどんな時も全力で、想像を超えるような表現もままあるが愛を以て応えてくれている。幸せのカタチはその家族の数だけ、存在している。
キノベス!2020 第1位
肌の色、貧富の差、価値観の違い......日本でも日々、格差や分断が進む中で自分とは異なる他者を受け入れる事が何故こんなにも難しいのか、誰かを憎んだり疎ましく思うこの気持ちはどこから来るのだろう? 我が身を振り返って考えさせられました。「あいつの事嫌いだったけど、話してみたら意外と良いヤツだった」という事が子供にも大人にも起こるのが人生ってやつなんだよ、と教えてもらった気持ちです。
発売当初から、紀伊國屋書店がいま一番読んでほしい本! とお薦めし続けている作品。「最初の1章・10分だけでも良いので読んで下さい」と出版社の言葉を信じて読んでみた所、エッセイが苦手な自分でも、とても読みやすく、息子君の言葉一つひとつが心に突き刺さり、気付けば最後まで読み終える。個人的には、息子君の言葉をまとめて本にして欲しい位です。
小気味よくユーモアセンスのある親子の会話に笑いつつ、涙ぐみながらも、自分自身の思考は偏りのあるものになっていたかもしれない、とどきりとする瞬間もあった。しかしそれらは決して押しつけがましいものではなく、寄り添ってくれるような心地よさを感じた。凝り固まった思考を柔らかくほぐすように、私のスイッチを回してくれた一冊です。
キノベス!2021 第1位
この物語はきっと多くの人を救うと思うけれど、それは単なる癒しや慰めではなく、自分の人生の根源といやおうなしに向き合わされた果ての希望そして諦念。希望と幸福と滅びが同時に存在して輝いているラストシーンの美しさはこの先もずっと忘れられないと思う。
容赦なく残酷なのに優しさが溢れてる不思議な小説。世界の終末は、それぞれの生きづらさと向き合うためのきっかけに過ぎない。その葛藤が読み手の記憶にそっと触れてくるから、私はこの物語を近くに感じるのだろう。
ラスト1ページ、最高のボルテージで立ち上がってくる、絶望と希望が無秩序に入り混じった生命の煌きを、全身で受け止めるために読み進んできた。どうしようもない理不尽さにあふれたこんな時代に、この物語が生まれるその偶然と必然があまりに胸を締めつける。
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