紀伊國屋書店:紀伊國屋じんぶん大賞2021 読者と選ぶ人文書ベスト30

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紀伊國屋じんぶん大賞2021 読者と選ぶ人文書ベスト30

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紀伊國屋じんぶん大賞2021 大賞

『ブルシット・ジョブ–―クソどうでもいい仕事の理論』デヴィッド・グレーバー

ブルシット・ジョブ―クソどうでもいい仕事の理論

訳者 酒井隆史さん 特別寄稿「受賞のことば」

デヴィッド・グレーバーが好んだフレーズに「資本主義とはコミュニズムのまずい組織化である」というものがあります。ここにはかれの破格の視野の捉えた世界、挑発的な常識転覆法、支配的言説ルールの破壊をおそれぬ勇気ある精神のすべてが集約されているとおもいます。「資本主義」もコミュニズムという人類にとっての普遍的基盤なしに一ミリも作動することはない。かれは資本主義そして国家が知にとって不可侵とされていく世界において、それを根源から問うことをやめませんでした。そのような精神が「ブルシット・ジョブ」という破天荒のアイデアを大展開させたのです。とはいえ人文的な知に携わるひとならば、多かれ少なかれこのフレーズは実感できるとおもいます。わたしたちの人文知は「能力に応じて(貢献し)、必要に応じて(利用する)」という原則によって成立しているからです。これまでのすべての知に著作権が付与され使用に対価が必要だったとしたら、あるいは本の売り上げ、著者の「人気」がそのまま知としての価値に直結する世界であれば、おそらく人文知の発展はなかったでしょう。かれのテキストほど「人文知の力能」を感じさせるものはありませんでした。そこでは、見慣れた名よりは個別領域における地道な発見や発展、それに人類のあらゆる実践と知が取り上げられ、この世界のおそるべき豊かさが浮き彫りにされていました。しかし、訳者がかつて日本の人文知に感じていたのもこれだったようにおもいます。だからくすんだ古書店が輝いてみえていたのだ、と。藤田省三は敗戦直後の日本史学者たちに言及しながらこういいました。そこでは「未来のあるべき姿に仕えようとする精神に満ち満ちて」おり、そのような精神の彩りが知に弾みを与えていた、と。世界をみれば、このような「ユートピア」の精神が人文知をふたたび彩りつつあるようにおもいます。グレーバーはその大きな転換のひとつの声だった。それが日本語環境で多くの読者をえたのは、なんらかの変化を示唆しているのであろう。そうねがっています。

デヴィッド・グレーバーさん©Aadam Peers
©Aadam Peers

デヴィッド・グレーバー
1961年ニューヨーク生まれ。文化人類学者・アクティヴィスト。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授。著書に『アナーキスト人類学のための断章』『資本主義後の世界のために─新しいアナーキズムの視座』『負債論─貨幣と暴力の5000年』『官僚制のユートピア─テクノロジー、構造的愚かさ、リベラリズムの鉄則』『民主主義の非西洋起源について─「あいだ」の空間の民主主義』(すべて以文社)、『デモクラシー・プロジェクト─オキュパイ運動・直接民主主義・集合的想像力』(航思社)など。

酒井隆史(さかい たかし)
1965年生まれ。大阪府立大学教授。専門は社会思想、都市史。著書に『通天閣─新・日本資本主義発達史』(青土社)、『暴力の哲学』『完全版 自由論─現在性の系譜学』(ともに河出文庫)など。訳書にグレーバー『負債論』(共訳)、『官僚制のユートピア』(ともに以文社)のほか、マイク・デイヴィス『スラムの惑星─都市貧困のグローバル化』(共訳、明石書店)など。

芳賀達彦(はが たつひこ)
1987年生まれ。大阪府立大学大学院博士後期課程。専攻は歴史社会学。

森田和樹(もりた かずき)
1994年生まれ。同志社大学大学院博士後期課程。専攻は歴史社会学。

「紀伊國屋じんぶん大賞」は、おかげさまで第11回目を迎え、今回も読者の皆さまから数多くの投票をいただきました。誠にありがとうございます。投票には紀伊國屋書店社内の選考委員、社内有志も参加いたしました。投票結果を厳正に集計し、ここに「2020年の人文書ベスト30」を発表いたします。

* 2019年12月~ 2020年11月(店頭発売日基準)に刊行された人文書を対象とし、2020年11月1日( 日)~12月10日(木)の期間に読者の皆さまからアンケートを募りました。
* 当企画における「人文書」とは、「哲学・思想、心理、宗教、歴史、社会、教育学、批評・評論」のジャンルに該当する書籍(文庫・新書含む)としております。
* 推薦コメントの執筆者名は、一般応募の方は「さん」で統一させていただき、選考委員は(選)、紀伊國屋書店一般スタッフは所属部署を併記しています。

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紀伊國屋じんぶん大賞2021 👑 大賞 👑

推薦コメント
この世の中に本当にどうでもよい仕事は存在するか? 『負債論』の著者によるこれまでありそうでなかった「どうでもよい仕事」についての画期的な論考。世界中のブルシット経験談に基づき炙り出される経営管理主義という虚構のシステムを描いて見せた本書は、間違いなくどうでもよくはない、重要な指摘をなしている。
(選)井村直道

ホワイトカラーがますます富み、ブルーカラーがどんどん窮していく。アメリカ発の格差問題はあっという間に対岸の火事ではなくなり、日本国内でも、働いていられさえすれば許される or 報われることはなくなった。この希望の書を手に、まっとうな社会でまっすぐに働き、ふつうに幸せに暮らしていけるようになりたい。
ハルタさん

社会人になって最初のうちは、無駄なことがたくさんあることが目についたが、いつの間にか、そういうものだと思うようになった(目につかなくなった)。それが、本書によってそれぞれ名前を付けられて、ブルシットジョブが発生する過程まで文字化されたことで、改めて新鮮な目で仕事ができるようになった。
メルド氏さん

昨年急逝した文化人類学者の遺作。コロナ禍で注目された医療従事者などエッセンシャルワーカーとは対照的 に、その仕事が消えても社会がそれほど困らない「クソどうでもいい仕事」を多くの証言から明らかにした傑作。
黒沢正俊さん

2位

推薦コメント
まずは挑発的な冒頭の「SDGs はアリバイ作り」で「SDGs」に何となく眉唾だった私の心はグッと.まれました。最晩期のマルクスが求めていたのは、無限の経済成長ではなく、地球を〈コモン〉として持続可能に管理するコミュニティであった。もう「脱成長コミュニズム」しかないと納得させられた怪著。
佐藤サトムさん

異常気象という言葉すら耳にしなくなった「気候危機」の時代。もはや、私たち、一人一人がどんなにエコロジーに暮らしても資本主義というイデオロギーの中ではこの危機は回避できない。その答えを「資本論」以後のマルクス思想から発掘する快著。未来に向けた一筋の光を見た。
片桐幹夫さん

今年の若手の著書の中ではダントツでおもしろかった。具体的で分かりやすく、たくさんの人に読んでほしいと思った。そして、具体的に何かしたいと思えた。
清水健史さん

3位

推薦コメント
頭が悪い、根性がない、すぐ忘れる、ありとあらゆるヘタレのために捧げられた勇気と知恵の書。そして、何故だろう、読書猿さんの言葉に涙が出てくる……そんな優しさの書でもある。厚さに恐れ慄く読者もいるかもしれないが、一度に通読する必要がないつくり。心が惹かれる項目から辞書を引くように摘み読みしてみて下さい。困りごと索引は秀逸です。何かを学びたい、知り続けることを改めて楽しめるようになりたい、何かを変えたいと思う人にぜひ勧めたい本です。
厚地ヨウコさん

人々の学びをサポートするための実用書でありながら、従来の学習本ではあまり取り上げられなかったトピック、なぜ人は学ばなければいけないのか、学ぶ対象を探すにはどうすればいいのかという点を掘り下げて書いた人文書でもある。知識が早く陳腐化する現代において、学習する意味と方法に大きな道標を作った本です。
宮本和昇さん

「勉強したい」想い。その切実な痛みは誤魔化されがちだ。地球上、稀なる高性能創造物にもかかわらず、その可塑性を錆びつかせ成長鈍化にも慣れてしまうヒト。挫折の果ての「変わりたい」声に応え、個人を尊重し、学びの自立を支援する実学書「独学大全」。愛で出来た、ペンの力の最強の武器。
池本裕子さん

4位

推薦コメント
現代日本は高度に発達し、健康的で清潔で道徳的で秩序だっている。しかし、恩恵を受ける一方で社会に適合するために多大なコストを払っており、適合できないものは疎外されていく。そんな社会状況を露わにし、疑問を投げかける。これからの社会の目指す姿を考える上で必読の書。
sicroさん

5位

推薦コメント
いわゆる成功とは程遠い無名の人生ですが、思い返せば贈与をしてくれる人がいた人生というのはそれだけで十分幸福なのだとこの本に教えられた気がいたします。そしてそれに気づくと今度は自分が贈与せずにはいられなくなる、また同時に、贈与したい人がいる幸せな人生を自分が生きていることにも気づかされるという本です。難しい部分もありますが、多くの人が暖かい気持ちになれるはずです。
inonuさん

6位

推薦コメント
偽書とか歴史好きにはたまらない内容。が、本書を教訓としなければならないのは現代社会とそこに生きる我々。人間どうしても自分たちに都合の良いことに無批判に飛びつきがち。騙そうとする人も、騙されてしまいたい人もいつの時代にもいる。
(選)生武正基

7位

推薦コメント
今年4~5月に講談社学術文庫からでた古典新訳シリーズには伝統ある人文系レーベルとしての「気概」を感じた。サルトル、モンテスキュー、マルクス、アダム・スミスなど――しかも「主著」を取り上げるのではなく、それぞれの領域で『いま読まれるべきもの』に光を当てようという意思があった。シリーズ全体を推薦する意味で、その中でも特に時宜を得ていると思ったベネディクト『レイシズム』を推薦します。
もちづきさん

8位

推薦コメント
「データサイエンス」時代だからこそ、統計学をツールとして使うだけでなく、その正当化の基盤を理解する意味がある。ベイズ主義vs 頻度主義から「深層学習」「因果推論」まで、統計学的思考法を通してヒューム以来の哲学の根本問題に触れる展開がスリリング。
(選)野間健司

9位

推薦コメント
こんにちの写真とは、写真それ自体のシステムのことである。写真は人間のものではなくなったのだ─これが本書の命題である。撮影者も被写体も必要なく、ただ写真の生産と流通、消費がされるシステムのなかで「写真家」はどう生きていくのか。一億総写真家時代に、写真を言葉で語るための実践書。
中山修一さん

10位

推薦コメント
〈里山=清貧〉という固定観念をぶちこわし、欲望にまみれた里山生活を描いたエッセイである。と同時に、「生きることを生きる」ためのマニフェストである。たくさん殺すために、たくさん育む。そこに生の悦びを見出す著者の営みは、果たしてそれほどに倒錯的だろうか? 人は異種生物を食べてしか生きられない。にも関わらず、人間以外との交わりに回路を閉ざした人々のほうが、よほど不健全なのではないだろうか。官能的で、悪魔的な、環境文学。腐敗の書。
池畑索季さん

11位

推薦コメント
読むべき本なんてこの世に一冊もないと思うけど、もしもあるとしたらこういう本であってほしい、と思った一冊でした。青い海、もち米を握る小さな手、なにもかもを抱えて生きる人の背中と、あまりにも重い、冷たい土砂。そらしていた視線を、何度も何度も、引き戻される感覚。読み終わったあとは言葉もなく、ただただ拳を握ってうなだれる。掌に握ってるのは怒りと絶望、そして光。それがこの本から「もらった」ものでした。
我有悠生さん

12位

推薦コメント
「円」ではなく「縁」。藤原辰史さんが、歴史を紐解きつつ、もし食べものに値段がついていなかったら…… という思考実験をします。そうすると、お金の「円」ではない「縁」でつながった食のあり方が見えてくる。また、「縁」といっても生きている人間だけでなく、死者や微生物などさまざまなものと縁を結ぶ。読むと「食べる」という営みの捉え方がガラッと変わる、著者渾身の一冊です。
田渕洋二郎さん

13位

推薦コメント
例えば「あなたのためを思って言っているんだよ」はずるい言葉という。なぜなら本当にためになることを本人に説明できない場合に反論を封じるために使っているから。子どもが、「ずるい言葉」にだまされないようにするためのヒントを伝える本ですが、大人も必読です。
木工本真介さん

14位

推薦コメント
動物の解放と障害者の解放を、対立ではなく交差するものとして考える。障害当事者にして動物解放運動の担い手である著者のナラティブは、しかし、明確な答えを導き出すものではなく、むしろ問いを増幅させる。「ぎこちなく、そして不完全に、わたしたちは、互いに互いの世話をみる」、終章の、このうつくしいフレーズの意味は本書を読んで確かめてみて欲しい。
(選)松野享一

15位

推薦コメント
日本とアメリカ、ソ連で世界文学全集が編纂されていく過程を追っていく事で、この3国の中で文学作品というカノンがどのように成立していったのかを分析していく。「文学」という視点から、各国が「世界」とどのように対峙してきたかが見えてくるのが面白い。
たぬきちさん

16位

推薦コメント
現代日本人哲学者によるオリジナルな哲学書である。永井均・野矢茂樹・森岡正博ら同時代日本人哲学者との呼応も見どころ。この点で本著はコンテンポラリーな著作だ。しかしまた、哲学史の中で変遷してきた「現実性」(これが本著のテーマである)の語義を包摂する本書の到達地点、後に古典となるのではと思わされる完成度。これらを鑑みるにクラシックな著作とも言える。
中尾サーシャさん

17位

推薦コメント
リアル=よい絵? 目で見る美しさが全てではないかもよ、と問いかける優しい(しかし磨き抜かれた)言葉の裏に、「アートの見かたで人生はもっと豊かになることに気づいて!」という筆者の並々ならぬ願いが見える。13 歳の美術の授業から少しアートに遠ざかってしまった全ての人に薦めたい。
(選)花田葉月

18位

推薦コメント
経済史・思想史・日本史をぶち抜くゆるぎなき視座。不思議なことに現在日本で生活する私たちの意識には、どれか一つが抜けがちになる。土着する思想の力強さを思い知ろう。
(選)大籔宏一

19位

推薦コメント
当代きっての著述家による、現代アメリカの、そしてその多くは現代社会に普遍的な、様々な危機を論じたエッセイ集。ひとつひとつのテクストが、美文かつ秀逸なだけではなく、ものごとに真の名前をつける言葉の力を存分に示している。自分もかくありたい、と強く思わせてくれるのだ。
(選)松野享一

20位

推薦コメント
『自然界における左と右』で著名なガードナーによる、知る人ぞ知る「注釈つきアリス」決定版待望の邦訳。意外な元ネタからマニアックな深読みまで、一つの作品を徹底的に読み込む楽しさに満ちている。すべてのアリス好き必読の書!
(選)星正和

21位

推薦コメント
異なる階層、ジェンダーで生きる沖縄の人々の生活を追った社会学的エスノグラフィー。まず、人々の生活に触れるということの圧倒的な生々しさに息を呑みました。今まで知っていた沖縄のイメージが否定されるわけではないけれど、読み終わった後に目や耳にする沖縄は以前よりとても近くに感じることができました。
(選)東二町順也

22位

推薦コメント
語られる「物語」には、切実な現実とそれを乗り越えようとする語り部自身も気付かないような「生きること」への希求が、ひっそりと内包されている。ひとりの人間のもつ世界の、そのあまりの豊かさにハッとさせられ、時に畏れすらも感じさせられた。他者との向き合い方のかたちが様々に変化をしている今、「物語」たちと真摯に向き合う著者の姿勢が読み終えてもなお、心を離れない。
(選)林下沙代

23位

推薦コメント
フランス革命により実現した平等は、身分的差異を超えた交流を可能にした。そこで「常識」とされた事柄は、しかしマイノリティのユダヤ教徒にとっての禁忌を含んでいた。豚肉を伴う食事はその例である。この環境下で、18~20 世紀初めまでユダヤ教徒が共和国にいかに同化していくかを描く。現代に通ずる問題を含む好著。
(選)田伏也寸志

24位

推薦コメント
モダニズム期の英文学をしっかり読み解きながらアクチュアルな問題があぶり出される、文学批評の面目躍如。ポストコロニアルやフェミニズムを百年前に遡って捉えなおす本でもある。
(選)藤本浩介

25位

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昨今、いわゆる「LGBT」本の出版も多くなっています。この本は、ありきたりな教則本ではわからない当事者の声や、その周囲で起こる出来事が記されています。また、そもそもの問題である社会制度や、他ではほとんどされることのない性同一性障害に関する医療への批判なども分かり易く書かれています。書評にも取り上げられ始め、注目を浴びつつある本書ですが、すべての人に読まれるべき内容になっていると確信しています。
山内智さん

26位

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「さわる」と「ふれる」の違いから始まり、「まなざしの倫理」とは異なる「手の倫理」の可能性を論じるという視点が面白いと感じました。議論の射程は幅広く、ケア論・身体論・コミュニケーション論の入門としても優れていると思います。「触れること」が難しくなっているご時世だからこそ、じっくり読んで周りの人と感想を語ってみたくなる一冊です。
前田圭介さん

27位

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「民主主義」というと多数決による議決、というのが通常の認識であるかと思うが、グレーバーは自らも市民運動に飛び込み、人びとと対話を重ねてきた実感から、人類学者としてアナキズムという視点も交えながら、この意味に大きく揺さぶりをかける。「民主主義って一体何なんだろう?」─そう思わざるを得ないニュースが後を絶たない今、この問いはあらためて、切実に響いてくるものではないでしょうか。
(選)林下沙代

28位

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テクノロジーは、私たちの何を変えたのか?既に語りつくされたかのようなテーマに、著者は「さまざまな方法で、手を忙しくしておくことができるようになった」と全く新たな観点から語り始めます。専門である精神分析学を武器に、数々の映画作品上の表現やiPhoneの普及などに見られる「手」にまつわる現象をエキサイティングに分析していく様は、さながら思想界のインディ・ジョーンズ!!
(選)小山大樹

29位

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神仏習合(混淆)から神仏分離へ、何故それは行われ、何故それは、たやすくなされたのか? 神仏分離から日本文化の雑種性を再確認する冒険譚。明治維新(革命?)、宗教、民主主義、資本主義、共生、そして分断。風景ではない今の現実を血肉化する。文章のリズムがうれしい。深く呼吸、頭に酸素が送りこまれます。
傳田元彦さん

30位

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高橋源一郎の、平易だが優しく強靭な文章で編まれた新しい「教科書」。今作は丁寧に何度でも読み直されねばならない。ともすれば忘却し見過ごしがちな知識という宝石を、日常のすぐ近くで発掘する術が散りばめられているからだ。そしてそれらは、コロナや迷走する政治に覆われ混沌とする今日を照らす灯りになってくれる。
(選)土井一輝

じんぶん大賞選考委員が選ぶ! 選外この一冊

推薦コメント
"患者とまず人間として出会う。そして人間同士のあいだで何かが起きるのを待つ"。健常者を目指すことが治療のゴールなのか。町を、人を変えていく精神医療の在り方とは。
池田匡隆/広島店

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コロナ禍により専門家への信頼が揺らいでいる現在、そもそも専門知とは何なのか、から考えてみたい。本書は、専門知の諸相を「専門知の周期表」を起点として緻密に分析した、専門知研究の画期をなす名著である。ここで提起された「対話型専門知」の豊かな可能性は、今後注目されていくだろう。
松野享一/書籍・データベース営業部

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見返りを得ることへの期待を一切含まない、「純粋な贈与」はありうるのか? この実は困難な問題を、古代ギリシャの正義の概念、初期キリスト教の思想、モースやバタイユによる贈与論などを辿りながら考える。贈与という概念の、単純ではない、半ば不可能とも言える在り方にじっくり向き合う一冊です。
藤本浩介/シンガポール本店

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自然科学という船に乗り、フュシス――世界と宇宙、そして自己の正体を巡る、思索と詩作の旅に出る。著者が「世界」という現象を眼差し、そこから生成される瑞々しい言葉たちが、私には巨大で美しい一編の詩に思われた。
土井一輝/中部営業部

推薦コメント
『聖典』とはいかなくとも社会学の「お手本」くらいには大事にされてきた『自殺論』。そこを足場にして一歩進もうとした新しい試み。さらなる考察が望まれる。現代社会を捉えるうえでやはり古典の応用は必須。
生武正基/新宿本店

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メソポタミア文明から現代アフリカ哲学まで、時代と大陸を超えて「哲学する」ことで見えてきた多元的形而上学への道と思想的曼荼羅模様。豊饒な哲学的実践により結実するであろう来るべき世界哲学への扉は、すでにここに開かれている。
中島宏樹/横浜店

推薦コメント
戦後日本の思想史と、アイドルホース(=ギャンブル史)を結び付けて語っているのは、後にも先にも本書だけではないでしょうか。ハイセイコーに、オグリキャップに、ハルウララ。私たちはこれらの競走馬に、一体何を仮託してきたのか? 胸が熱くなる「物語」の背景には、常に私たちの欲望が眠っているということを気付かせてくれる秀逸な一冊。
小山大樹/札幌本店

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アナキズムへの批判も賛同も、すべてはこの一冊からはじめられるべきであろう。どこまでも「人」(自分も他人も)を信ずることができるか、読む者をえぐるのはそこである。傷つきながら読まなければならない。
大籔宏一/ゆめタウン徳島店

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キャッチーなタイトル&ひとにすすめられて読んでみました。「これは『ことば』について書かれた人文書だ。こういうのがあってもいいじゃないか。じんぶんは自由だ!」そういう気分になりました。
東二町順也/新宿本店

推薦コメント
アフリカをはじめ世界中を探訪し、言語学の枠を超えて活躍されてきた西江雅之先生の視座を、書籍の形で後世の人間が手に取ることができるのは本当に有難い。ピジン・クレオルという、人と人との出会いからつくられるからこそ曖昧で、流動的で、そして奥深い言語の世界への誘いとなる一冊。
花田葉月/雑誌営業部

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「女性という枠にカテゴライズされて実力を正当に評価されない」という経験。大なり小なり直面したことのある女性も多いのではないだろうか。ただ時が過ぎるのを待つのではなく、フェミニズムを学び、8年をかけて問題を可視化させた著者に脱帽。「女の子」は飾りでもなければ消費されるべきものでもない。一人の人間だ。
津畑優子/書籍・データベース営業部

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保存と携行のために古代から用いられてきた「干し飯」、実用性抜群な食べられる縄である「芋がら縄」など、まずい戦国レーションを再現して実食する著者に脱帽。そこまでできなくても、とりあえず米と味噌がおいしくなる一冊。
森永達三/本町店

推薦コメント
彼女たちの現場に降りていって、こりかたまった右派男性の言語モードにおさまらない葛藤、フェミニズムにも通じる「ケアの倫理」を見出す著者のアプローチが凄い。最近再び議論になった選択的夫婦別姓も含めて、本書から新たな対話が広がっていくだろう。第20 回大佛次郎論壇賞受賞おめでとうございます!
野間健司/書籍・データベース営業部

推薦コメント
脳とその神経のメカニズムや役割の解明に熱い視線が注がれる今日。日増しに高まる脳神経のプレゼンスを前に、人間の自由なる〈精神〉の縮小は加速する。自己決定する人間〈精神〉の確保を急務とした気鋭の哲学者による神経からの奴隷解放宣言。
井村直道/水戸営業所

推薦コメント
1866年、皇帝に向かって銃弾が放たれる。弾丸は外れたものの、暗殺未遂犯カラコーゾフの思想と行動、そして事件報道と裁判はやがてテロリズムという一つの思想の萌芽となっていく……。カラコーゾフの着衣など、意外な着眼点からこの事件の重大さを炙り出していく手腕がスリリングで、良質のミステリのような味わいが楽しい。
星正和/新宿本店

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本書は3編の中編から成り、どれも他の作家・作品を想起させる。『オルメドをめぐる変奏』と『過ぎし嵐』は話題の中心人物の不在がベケットの『ゴドーを待ちながら』を思わせ、『吐き気』はベルンハルトの祖国への徹底的な呪詛のパスティーシュだからだ。中米サンサルバドルの風俗を生き生きと描いている点も一読に値する。
田伏也寸志/中部営業部

推薦コメント
江戸のベストセラー『北越雪譜』の誕生した経緯に迫る歴史書だが、フィクションのように面白い。田舎の雪国の様子を、都会・江戸の「暖国」に暮らす人々にどうすれば伝わるか。波乱万丈の出版過程で垣間見られる曲亭馬琴、山東京伝といった当時のスター作家の活躍ぶりにも注目。
髙部知史/京都営業部

推薦コメント
著者の奇妙な実体験から、認識のずれについて考察していく本書。こんなにも笑いとスリルに満ちた読書体験、そうあるものではありません……!
林下沙代/札幌本店

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