※ブックフェアは終了しました。ご来店ありがとうございました。
たくさんの復刊リクエストありがとうございました。紀伊國屋書店では全国の15店舗で復刊書目を集めたブックフェアを開催いたします。※フェア開催期間は店舗により異なります。ウェブストアでもご注文・お取り寄せいただけますのでぜひご利用ください。
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書物復権 2022
2022 年、第 26 回目の 11 社共同復刊、今回も多数のリクエストをいただきありがとうございました。2 月 28 日までの期間中に、紀伊國屋書店内公式サイト、復刊ドットコムの特設サイトおよび FAX で、受けつけたリクエストは総数約 8,098 票、最多書籍には 163 の票が寄せられました。いただいたコメントには、それぞれの書目に対しての皆さまからの熱心な要望が伝わっており、各発行出版社はこの結果を元に、復刊書目の選定をいたしました。今回の共同復刊で実現できなかった書目からも、各社独自の方法で復刊を予定している場合もあり、1 点でも多くの品切れ書の復刊の実現にむけて努力してまいりますので、今後の各社の復刊情報にご注目くださるようお願いいたします。
今回、各発行出版社の判断により復刊を決定した書目は 47 点 47 冊。書籍は 5 月下旬より全国約 200 の協力書店店頭にて展示されますので、足をお運び頂けましたら幸いです。
今年も充実した復刊ラインナップができました。来年以降も、読者の皆様のご期待に添えるように活動を継続させて参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。
新規性と普遍性の狭間で
詫摩佳代
(たくま・かよ)1981 年生まれ。2010 年、東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。博士(学術)。関西外国語大学外国語学部専任講師などを経て、現在、東京都立大学法学部教授。主な著書に『人類と病』(中公新書、サントリー学芸賞受賞)、訳書にホッテズ『次なるパンデミックを防ぐ』(白水社)がある。
学問研究とは先行研究を土台に、新たな発見や解釈を積み重ねていくものであり、独創性や新規性が重要な位置付けを占める。実際、研究者の仕事においては、次々と発表される新しい論文や書籍と付き合う時間が自ずと長くなる。デジタル化の普及に伴い、文献との付き合い方も変わった。筆者も iPad で PDF 化された論文を読み、電子書籍も活用している。
大量の書籍やファイルを持ち歩かなくてもよく、また大量のファイルの中から必要なものを見つけ出し、検索機能を利用して、簡単に特定の箇所を読み返すことができる。便利な世の中である。それでも、書き込みが入った古い本をたびたび手にする。大学院生の頃には、ひたすら大学出版会や岩波の全集などの分厚い専門書を何冊も持ち歩き、赤線や付箋を貼って勉強したものだ。それらの本の中には、今となっては電子書籍化されているものもあるが、あえて購入していない。共に歳を重ねていくパートナーのような存在で、その本自体に愛着があるからだ。
個人的な愛着を超えて、古い本の魅力とは、古いように見えて実際には、新しい本よりも示唆に富んでいたり、繰り返す歴史の中で、問題の根本をあらためて教えてくれたり、同じ苦難に対して、経験を共有してくれるからではなかろうか。我々の社会は、とりわけテクノロジーの面では確実に進化を遂げてきた。他方、ウイルスをいかに克服し、また共存するのか、世界政府が存在しない国際社会において、いかに秩序を維持するのかといったテーマは、時代を経ても居座り続けている。
ロシアのウクライナ侵攻に際しては、昨今の国際情勢分析に関する文献に加え、トゥキュディデスからクラウゼヴィッツ、岡義武や高坂正堯など、およそ新しいとは言えない書物を読み返した。入江昭による『20 世紀の戦争と平和』には、「個々の戦争は国家が始めるものだが、戦争そのものは民衆が作るものである」という、イギリスの政治学者の言葉が紹介されている。
ロシアの力づくの行動に対しては、ウクライナの人々が「祖国を守る」という強い思いのもと、善戦し、またロシア国内でも弾圧を恐れず、反戦の声を上げる人々がいる。まさに民衆が戦争を作っている。マルクス・アウレリウスの『自省録』も筆者と共に歳を重ねてきた本の一つだが、戦争と疫病、飢饉という数々の苦難の中で執筆されたものだ。極限の状況の中でも自己と対話し、人間としてのあるべき姿を探り続ける様子は、2000 年の時を経て、21 世紀の我々と重なるものがある。
書物とは、時代を超えて我々人類を連帯させる数少ない手段である。繰り返す歴史の中で、先人たちの知恵や経験が参照されるのであれば、同じ危機でも、より良く対応することができるかもしれない。困難な時代だからこそ、書物の役割が大きいと感じる今日この頃である。
読者からのメッセージ
■〈書物復権〉で復刊される本は歴史に残る名著ばかりでありがたいです。こうやって定期的に復刊していただけると嬉しいです。(41 歳・大学教員)
■アイヌ民族の文化が危機に瀕しているいま、過去の侵略・占有の歴史を克明に記録した『辺境から眺める』(みすず書房)は、残され読み継がれるべき書物と思ったから。
■最近は、電子版のみの書籍も多いのですが、書物=紙の本の世代としては、貴重な書籍を復刊していただけるありがたい企画と思っております。(52 歳・会社員)
■もう一度読みたい本がたくさんあります。(48 歳)
■手元にあってほしい本が絶版になっており高くて手に入らないことがよくあるので、とても良い企画だなと思います。(学生)
■少部数でも多くのひとの手に渡るよう応援しております。(52 歳)
■このような企画は大変意義があることと感じています。電子書籍はたしかに便利ですが、この企画に参加されている出版社のような学術的な本は、併読することが多く、その点では(紙の)本に軍配が上がります。これからも続けていただけると嬉しいです。(36 歳)
■若い頃はお金がなく、図書館で借りて専門書を読んでいました。成人してから改めて「自分のお金で買おう」と決心していましたが、絶版となってしまった本が多々あります。こうした企画は、他の出版社さんにも広がって欲しいと思います。
■通常時でもリクエストできるともっと良いなと思います。(59 歳)
■可能ならもっといろんな出版社を巻き込んでほしい。(23 歳・大学院生)
■この 11 社のものに限らず、復刊してほしい作品が沢山あります。時の流れは早く、国内外含めほんの数年前のものだとしても手にするのが困難になってきているものがあります。優柔不断で買い逃しをしてしまう私にとって、そして未来に生まれその書物を手にすることを切望する方々にとって、非常にありがたい試みです。(21 歳・学生)
■『妊娠中絶の生命倫理』(勁草書房)は倫理学における中絶論争を理解するために絶対に必要な基本論文集で、学生時に生命倫理のゼミで読み込みました。是非復刊してほしいです。(25 歳)
■この数年、1960 ~ 70 年代の良書が候補に上がっていないのは残念。恒常的なリクエスト復刊を!(64 歳)
※内容についてのお問い合わせは発行出版社までお願いします。