キノベス!2014
(2012年12月〜2013年11月出版の新刊/第11回)
キノベス!2014 第1位『想像ラジオ』
いとうせいこう さん 特別寄稿奇遇なもので、私が講談社に入社した際、新入社員の書店研修で何日も通ったのが紀伊國屋だったはずだ。吉祥寺店ではなかったか。ワイシャツにネクタイ、ズボンといういでたち、その上にエプロンをかけて新刊の棚を作る自分の写真があったように思う。
その後、小説が書けなくなった長い期間のうち、雑誌連載にも嫌気がさして辞めてしまった私は、ブログで好きなように植物エッセイを書き出した。やがてとある友人のおかげで、それを紀伊國屋のサイトにも転載させてもらい、同時に自分のサイトでも続ける流れになった。会員制サイトと無料サイトで同時に同じエッセイを載せる、いかにもネット的な快挙を私は強く望んでいたのだった。
その文章がまとめられ、『ボタニカル・ライフ』として紀伊國屋書店から出版された。そしてなんと講談社エッセイ賞をもらった。またも紀伊國屋と講談社。奇遇である。深い縁のようなものだ。
その上、である。河出書房新社の『想像ラジオ』は野間文芸新人賞を与えられた。すなわち古巣の講談社から再び、である。さらに今回のように、栄誉ある「キノベス!」をいただくことにもなった。紀伊國屋の皆さんから、である。からみあう縁がなんだかもうぐにゃぐにゃ結びあって動いている気がする。いとうせいこう
1961年東京都生まれ。作家、クリエイター。早稲田大学法学部卒業後、出版社の編集を経て、音楽や舞台、テレビなどの分野でも活躍。
1988年『ノーライフキング』で作家デビュー。1999年『ボタニカル・ライフ』で第15回講談社エッセイ賞受賞。2013年、1997年に刊行された『去勢訓練』以来、16年ぶりの小説となる『想像ラジオ』を刊行。同作で第35回野間文芸新人賞、第2回静岡書店大賞を受賞。
他の著書に『ワールズ・エンド・ガーデン』『解体屋外伝』『存在しない小説』などがある。最新作は『未刊行小説集』(「いとうせいこうレトロスペクティブ」シリーズ)。*プロフィールは当時のものです。
キノベス!2014
(2012年12月〜2013年11月出版の新刊/第11回)
*推薦コメントの執筆者名に併記されている所属部署は当時のものです。現在は閉店している店舗もあります。