紀伊國屋書店:キノベス!2014 紀伊國屋書店スタッフが全力でおすすめする2013年のベスト30

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キノベス!2014 紀伊國屋書店スタッフが全力でおすすめする2013年のベスト30

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キノベス!2014 第1位『想像ラジオ』
いとうせいこう さん 特別寄稿

想像ラジオ

 奇遇なもので、私が講談社に入社した際、新入社員の書店研修で何日も通ったのが紀伊國屋だったはずだ。吉祥寺店ではなかったか。ワイシャツにネクタイ、ズボンといういでたち、その上にエプロンをかけて新刊の棚を作る自分の写真があったように思う。
 その後、小説が書けなくなった長い期間のうち、雑誌連載にも嫌気がさして辞めてしまった私は、ブログで好きなように植物エッセイを書き出した。やがてとある友人のおかげで、それを紀伊國屋のサイトにも転載させてもらい、同時に自分のサイトでも続ける流れになった。会員制サイトと無料サイトで同時に同じエッセイを載せる、いかにもネット的な快挙を私は強く望んでいたのだった。
 その文章がまとめられ、『ボタニカル・ライフ』として紀伊國屋書店から出版された。そしてなんと講談社エッセイ賞をもらった。またも紀伊國屋と講談社。奇遇である。深い縁のようなものだ。
 その上、である。河出書房新社の『想像ラジオ』は野間文芸新人賞を与えられた。すなわち古巣の講談社から再び、である。さらに今回のように、栄誉ある「キノベス!」をいただくことにもなった。紀伊國屋の皆さんから、である。からみあう縁がなんだかもうぐにゃぐにゃ結びあって動いている気がする。


いとうせいこう
1961年東京都生まれ。作家、クリエイター。早稲田大学法学部卒業後、出版社の編集を経て、音楽や舞台、テレビなどの分野でも活躍。
1988年『ノーライフキング』で作家デビュー。1999年『ボタニカル・ライフ』で第15回講談社エッセイ賞受賞。2013年、1997年に刊行された『去勢訓練』以来、16年ぶりの小説となる『想像ラジオ』を刊行。同作で第35回野間文芸新人賞、第2回静岡書店大賞を受賞。
他の著書に『ワールズ・エンド・ガーデン』『解体屋外伝』『存在しない小説』などがある。最新作は『未刊行小説集』(「いとうせいこうレトロスペクティブ」シリーズ)。

*プロフィールは当時のものです。

 

キノベス!2014

(2012年12月〜2013年11月出版の新刊/第11回)
*推薦コメントの執筆者名に併記されている所属部署は当時のものです。現在は閉店している店舗もあります。

🥇 1位 🥇

推薦コメント
読んでいる最中、わたしの耳にも想像ラジオが聴こえてこないか、ずっと耳を澄ませていた。電波でつながっている人々の心強さ。聴きたい人の声が聴こえない、その切なさ。読むのを中断することができなくて、ページをめくる手が止まらなかった。
グランフロント大阪店/豊島寛子
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読み終えてから、しばらく経ちます。それでもときどき、ふとした瞬間に、チューニングが合う時がある。ざわざわとしたノイズが、自分のからだの中やこころの奥にある、ということ。そしてもちろん、自分じゃない誰かにもある、ということ。そのことを、忘れたくない、と思う。そういう視点をこの本は、私にくれたように思うのです。
札幌本店/林下沙代
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🥈 2位 🥈

推薦コメント
生きること、尊厳を守ること。母国ではないところで母国語ではない言語を求める切実さ。孤独と不安の中でもがき、言葉を手に入れようとする姿に心を動かされずにはいられない。サリマが息子の学校で語る拙いながらも迫真の作文。生きるという、本当に根源的な力強さを思い知らされる。
グランフロント大阪店/奥野智詞
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考える。発する。人間にとって言葉とはなんだろう。ただ生き伸びてきた女性が新しい土地で言葉を獲得する。おずおずと友人を作り、内にある物語を書きあらわす。自らを見つけ、他人と繋がる「言葉」。それを今、自分は握っているのだと意識した彼女たちの、語ることの力強さといったら。生きることの眩しさといったら。筆からほとばしる熱が、いつのまにか私の身体をかけめぐり、言葉にはならないものがあふれてきた。日本語による移民文学の、新しい地平は切り開かれた。
新宿本店/今井麻夕美
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🥉 3位 🥉

推薦コメント
小説という世界の枠から飛び出したような、リズムで読む、音を感じる、本の形をした世界そのもの。わたし自身の物語であり、あなたの物語でもあり、知らない誰かの物語でもある。繋がり、続いていく世界の広さは、何度も何度も繰り返し読んでしまう不思議な魅力にあふれた本でした。
横浜みなとみらい店/安田有希

4位

推薦コメント
雪の降る夜には音があり、太陽の傾いた秋の夕景にも音がある。感情の機微はすべて足音に表れ、桂子のあるいは和彦の台詞も、ひとつひとつ音色は異なっている。どれも聞いたことのない音ばかりなのに、僕はこの作品を読みながら、記憶の中の音の抽斗をずっと漁っていた気がする。文章を読み、音を探る。それがこの物語の読み方だろう。フランシスがたとえこの世のものでなくとも、読者にはこの水車の回る音が聞こえる筈だ。そういう、現実と虚構の沫いの中にこそ、この小説を手にした愉悦があるのかもしれない。
新宿南店/竹田勇生

5位

推薦コメント
よく経済学は必要かといろんな本に書かれている。ビジネスにとっては必要だと思う。
哲学・評論はどうなのだろうか。例えば浅田彰さんと東浩紀さんとでは読まれ方が違っていた。千葉雅也さんはもっと違っていると思う。この30年の時の流れについてこの本を読みながら 「違い」は何かを考えてみるのもいいかもしれない。
梅田本店/北村貴克

6位

推薦コメント
ある工場で働く人々を描いているのだが、この工場様子がおかしい。何の工場なのか誰も知らず、仕事も「一日中シュレッダーをかける」等。工場内の様子が細かく描かれるほどにずれていく日常の感覚。そしてラストシーンがあらわすものは。
本町店/萩本愛子

7位

推薦コメント
野球が好きだ。98年のベイスターズの強さを鮮明に覚えている。その後のチーム作りに疑問がある。そもそも大洋・横浜というチームはちょっと不思議だ。そんなあなたならきっと楽しめる、チーム愛に溢れた笑いあり涙ありの球団史。
札幌本店/福田桂

8位

推薦コメント
やってくれました、万城目節、またまた大炸裂!!本の厚みもなんのその、ふんだんにちりばめられた仕掛けににんまりしながら読み進めていくうちに、私もひょうたんに取り憑かれたかページをめくる手が止まらない!もう一気読みでした。そして何度も読んでしまうこの面白さ、奥深さ、ほんまたまりません。
丸亀店/大石麻未

9位

推薦コメント
ことばはなくても伝わる思い、通じ合う心、まさに「ことばはいらない」。マルと一茶くんの表情にほっこり癒され、なぜだかちょっと泣きたくなる、優しい愛にあふれた写真集です。下を向いてしまいがちな忙しい日々を過ごしている方に是非手に取って頂きたい、写真集の醍醐味がたっぷり詰まった一冊です。
堺北花田店/道越保江

10位

推薦コメント
国家とか民族とか宗教とか。短篇でこんな大きな話をするとはね!しかも読む方向によって違うものが見える、プリズム作品群。今年一番惚れた本です。こういう果敢な若手作家は、全力で応援したい!
新宿本店/小出和代

11位

推薦コメント
人は不幸ならばそれに向き合うだけだ。例え幸せが見えたとしてもその分悩み苦しみは増える。これは夢物語だ。しかし夢見がちなわけではない。おぞましい事ばかりが起こる。しかし、この上なく美しい。これはありもしない世界。いや、本当にそうだろうか?そうか。私は2,730円で一つの星を買ったのだ。正直高いと思ったが、安い買い物だった。
札幌本店/今須陽子

12位

推薦コメント
最初はアフリカ・ソマリア珍道中といった趣でスタートしますが、とんでもない。その分厚さに見合ったすごい内容のノンフィクションでした。いわゆる民主主義によらず、世界最悪の治安状態というソマリアにおいて独立国家を作り上げたソマリランド。ルポの領域を超えて研究書といっても良いと思います。
横浜店/鈴木郁美

13位

推薦コメント
NHKの「未解決事件」でも取り上げられた尼崎の監禁・変死事件。再現ドラマで角田美代子を演じた烏丸せつこの存在・演技が本当に恐ろしかったです。人間が、同じ人間に危害を加える、破滅させる...その悪意がなぜ、どのように生まれるのか、彼女の自殺によって何もわからなくなってしまいました。こんなに恐ろしい、はかり知れない一人の人間の悪行を忘れてはいけない、またその心の中について考えて欲しいと思いました。
梅田本店/紀ノ川奈穂子

14位

推薦コメント
なにげない日々の中で交わされる、コトバ。それぞれの人物のさりげないコトバだけど、読んでいくと、少しずつ心にじんわりとくるものが……。登場してくる人物たちの優しさが、ちらちらと見える、連作小説です。
久留米店/矢山美紀

15位

推薦コメント
宝石で出来た身体で、脆く粉々になっても戦う少女たち、仏像のような姿の敵……。一度見るとクセになる、耽美な絵柄と不思議な世界観。サブカル系耽美異世界少女漫画の最先端。この先の展開が楽しみな一冊です。
札幌本店/田中さおり

16位

推薦コメント
綿矢りさはすごいところに行った。きっと全身傷だらけで、血まみれだろう。人は閉ざされた関係性のなかで爆発するのだと知った。その爆発の言葉ひとつひとつが、狂気で暴力的な矢となって私を襲う。そこが世界の割れた裂け目にあるから、なおさらに深々と私を射る。その矢が私から抜けることはないだろう。そして、私はきっと忘れない。痛いからではなく、狂気を、私も持って生きているからだ。
ゆめタウン徳島店/安倍香代

17位

推薦コメント
物語のラストをしめくくる「形見の歌」は、かつて独立した詩編として「新潮」に掲載された。そのときにも、随分胸打たれたが、時が経ち、それがいかに浅はかな感傷であったかを思い知らされる。
物語の大筋としては作者が目の当たりにする現実と、同時に創造しうる平行世界が奇妙にリンクする、まさに大江スタイル。
ただ、今作ほど作者の肉体的現実を切実に描写したものは過去なかった。
大江さんは事実、憲法や原発といった負の遺産を残すまいと肉体の限りを尽くして戦っている。
けれど、自分に残された時間では戦い尽くせないことも痛感されている。
だからこその「形見の歌」なのであり、だったのである。
精神で、文章で、肉体を凌駕し戦い続ける。過去は未来の福音となり、我々はこれからも本を開くたび、新しい大江さんの「形見の歌」を聞くだろう。
これこそ、小説家としての身の処し方であり、そしてそれは朽ちてゆく肉体を持つ我々の新しい生き様ということになりはしないだろうか。
新宿南店/竹田勇生

18位

推薦コメント
ぼくたちは過去をやり直すことができるのか。
そもそもアメリカは、清教徒たちが理想の実現を求め「国家のやり直し」としてはじめた国だ。そんな国が辿ってしまったすさんだ現代の歴史を、タイムトラベルでケネディ暗殺を阻止し、やり直す――これは直球の娯楽作であると同時に、アメリカについての深い思索と愛のこもった小説だ。かの国の自由と音楽に憧れたすべての人にすすめたい。
首都圏西営業部/原元太

19位

推薦コメント
戦争により彼に刻み込まれた傷は、彼を彼自身から逸脱させ彼自身とした。その裂け目から詩人は這い出る。存在し、生き、思考し、叫び、愛することを可能とした傷。そこから生み出される文章の官能に身を任せる快楽を味わうべし。
梅田本店/浜村和孝

20位

推薦コメント
自称読書家のみなさん、自省しましょう。
情報システム部/四井志郎

21位

推薦コメント
ああそうか、小説って楽しいものだったよな。そんな根本的な思いが読後にふつと沸き起こる。本屋には残念ながらランチメニューはございませんが、ランチのお供にぜひどうぞ。元気とビタミン、入ってます。
ゆめタウン徳島店/朝加昌良

22位

推薦コメント
動物園の人気者パンダ。そんな彼らには秘密があります。それは...なんと銭湯!はたしてパンダ達は銭湯で一体何をしているのか?それは読んでからのお楽しみ。読めばパンダを見る目が変わる!?あなたの知らないパンダの世界がここにあります。
堺北花田店/金成彩子

23位

推薦コメント
2巻で完結する世界的に有名な画家、フィンセント・ファン・ゴッホと弟のテオドルスの物語。
伝えられているゴッホ兄弟像とは全く異なりますが、才能溢れる兄を裏で支えた弟の愛情や嫉妬する様を通してどんどん物語に引き込まれてしまいました。「人はただ生きているだけで美しい」ということを世間に伝えようとした、兄弟の懸命さに切なくも心温まる作品です。
小樽店/樋口斐

24位

推薦コメント
芥川賞作家の、「なんでもありの短編集」......という言い方だと、なんだか面白くなさそうな感じがしますよね? この本はそこらの「なんでもあり」とは違います。それぞれの短編は、モノや動物が普通にしゃべったり、しれっと超能力や超常現象が出てきたり、怪奇小説やSFみたいな話だったりと自由奔放ですが、その芯には一本スジの通った「美学」と「抑制」があるのです。それがこの本を美しくしているのです。
新宿本店/藤本浩介

25位

推薦コメント
苔を愛して生活してきたわたしの人生のなかに、とんでもない本が現れた。その名も『胞子文学名作選』。苔、羊歯、きのこ、カビなど、胞子によって増殖するものたちが登場する文学作品のアンソロジーである。いったい誰がこんな企画の実現を想像したであろうか。大事件である。収められた作品群は薫り高く極めて高純度の胞子を撒き散らしながら、密やかで、果てしなく中毒性の高い夢を見させてくれる。 このうっとり感もまた、芳醇である。
新宿本店/梅﨑実奈

26位

推薦コメント
ここに書かれた映画をとにかく片っ端から『観たい!』と思わせる解説を書く町山氏に脱帽。その解説は時に映画本編より興味深い。「恋愛は勝ってはいけない」という言葉も印象に残る。苦手な恋愛映画に体当たりした町山氏の恋愛オンチっぷりがとにかく笑える。
新宿本店/天羽雅代

27位

推薦コメント
この作品集が表わすのは紛れもない「今」だ。淡々と綴られる日常の風景に、ふと裂け目が現れ、足をとられる。そこにのぞくのは、震災後とくに際立ってきた不穏な空気や同調圧力。なんというところに私たちは立っているのだろうと、胸のざわめきがおさまらなかった。いまだ、この一文を忘れることができない。〈もうふつうなんてなくなっちゃったんです。〉
新宿本店/今井麻夕美

28位

推薦コメント
「エライ人たちはみんな読んでるのに、なぜか一般の人たちには知られていない研究者」。このお題でまっ先に挙がるのが濱口桂一郎さんです。雇用や福祉の問題を考えたい人は、ほかのすべてを置いといて本書を読もう。
梅田本店/浅山太一

29位

推薦コメント
難解な現代詩はわからないままでいい。わからないということはとても自由なのだと、目をみひらかれた。単なる詩論をこえて、表現について、日本語について、女について、孤独についてと考察が広がってゆく。詩を語ることはなんと豊かなことなのだろう。
新宿本店/今井麻夕美

30位

推薦コメント
北大路公子様 あなたは3~40代独身女性(実家暮らし酒好き人見知り)たちの目標です。憧れです。希望です。...と、読み終わった瞬間に思った人と私はお友達になりたい。
厚別店/浅野加奈子

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