キノベス!2019 第1位『そして、バトンは渡された』
瀬尾まいこ さん 特別寄稿そして、バトンは繋がれた
私は小さいころから、教師になるのが夢で同時にとっとと結婚してたくさん子どもがいる家族を持ちたいと思っていました。実際に中学校で働く経験をし、一人娘ではありますが親となり子どもと生活する今、教師も親も想像していたよりもずっとすてきなものだと実感しています。
子どもでも中学生でも、若い世代はまぶしくいじらしく、そばにいるだけで自分では生み出せない気持ちが心の奥底に沸き立ってくること。世話がかかるし面倒なのに、一緒にいられるのが幸せでならないこと。血のつながりなどはたいして関係ないこと。
『そして、バトンは渡された』は書いているうちに、自分が感じていた気持ちが詰まった一冊になりました。大切な人とともにいるときに得ることができる、自分の想像を超える愛おしさや幸福感。私はこういう気持ちを書きたかったんだと、この話が出来上がって気づきました。
自分でも大好きな1冊となったこの作品をキノベスの1位に選んでいただき、とてもうれしく思います。
今回、書店に伺う機会が何度かあり、書店員の方々が愛情をもって大切に本に携わってくださっていることを知りました。そんな書店員の方の思いが、読者の方に本を届けてくださるのだと感謝しています。だからこそ、書店の方々にこの本を選んでいただけたことがありがたく、光栄に思います。
関西に住む私にとって、紀伊國屋書店梅田本店は、待ち合わせ場所の定番です。そんな目印となるところに、本を並べていただけるかもと想像するとワクワクします。
何も用事はないですが、友人と紀伊國屋の前で待ち合わせをして、1位に選ばれたことをさりげなくアピールしようかなと考え中です。このたびはすてきな賞をありがとうございました。瀬尾まいこ (せお まいこ)
1974(昭和49)年、大阪府生まれ。大谷女子大学国文科卒。2001(平成13)年、「卵の緒」で坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、翌年単行本『卵の緒』で作家デビュー。2005年『幸福な食卓』で吉川英治文学新人賞を、2008年『戸村飯店 青春100連発』で坪田譲治文学賞を受賞する。他の作品に『図書館の神様』『優しい音楽』『温室デイズ』『僕の明日を照らして』『おしまいのデート』『僕らのごはんは明日で待ってる』『あと少し、もう少し』『春、戻る』『君が夏を走らせる』など多数。*プロフィールは当時のものです。
キノベス!2019
(2017年12月〜2018年11月出版の新刊/第16回)
*推薦コメントの執筆者名に併記されている所属部署は当時のものです。現在は閉店している店舗もあります。