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紀伊國屋じんぶん大賞 第1位
『布団の中から蜂起せよ
―アナ-カ・フェミニズムのための断章』高島鈴高島鈴 さん 特別寄稿
このたびは大変大きな賞をいただき、ありがとうございます。『布団の中から蜂起せよ』を支えてくださった布団の中のみなさまに、まずは感謝を申し上げたいと思います。私はこの本を、あらゆる意味で揺らぎのある生を生きる人のために、今生きているのがしんどいと感じている全ての人のために書きました。そのような人たち─もしかするとあなた─に向けて、本書は黙って開かれた扉として、誰かが飛び込んでくるのを待っています。
副題にあるアナーカ・フェミニズムとは、アナキズムとフェミニズムが合体した言葉で、国家をはじめとするあらゆる権力を否定し、またあらゆる差別を否定する思想を指します。アナーカ・フェミニズムの革命は流動的で水平的な共同体をいくつも作り出し、人の生存を最大限に尊重するでしょう。
国家・差別がない社会は想像できないとおっしゃるでしょうか? それを可能なものとして想像する営為こそ、アナーカ・フェミニズムのパワーなのだと思います。まず信じなければ、何事も始まらないからです。まずは今の世の中とは違う形の世の中が可能であると、共に想像して欲しいのです。そのように現状に対する抵抗の意志を持って生き延びることは、すでに/常に革命的なことです。だからこそ私はくりかえし「生存は抵抗だ」というスローガンを掲げ、読者を生へと扇動します。私を含め、日々布団の中に力なく横たわって拳を握りしめるほかない人たちこそ、革命の主体であると信じています。
今、この政治・社会状況は、人が生きていることの価値をまったくもって軽視しているようにしか私には見えません。このような状況の中で、「あなたに死なないでほしい」というアジテーションを振るうのは、とても無責任かつ暴力的なことだと自覚しています。それを自覚したうえで、それでもあなたに生きていてほしいと言いたいです。生き延びて、新しい社会を共に作りましょう。
撮影:熊谷円高島鈴(たかしま りん)
1995年、東京都生まれ。ライター、アナーカ・フェミニスト。「かしわもち」(柏書房)にて「巨大都市(メガロポリス殺し)」、『シモーヌ』(現代書館)にてエッセイ「シスター、狂っているのか?」を連載中。ほか、『文藝』(河出書房新社)、『ユリイカ』(青土社)、『週刊文春』(文藝春秋)、山下壮起・二木信編著『ヒップホップ・アナムネーシス―ラップ・ミュージックの救済』(新教出版社、2021年)に寄稿。中世社会史研究者としては、本名である杉浦鈴名義で方法論懇話会編『療法としての歴史〈知〉―いまを診る』(森話社、2020年)に寄稿している。
「読者の皆さまと共に優れた人文書を紹介し、魅力ある『書店空間』を作っていきたい」―との思いから立ち上げた「紀伊國屋じんぶん大賞」は、今年で13回目を迎えました。おかげさまで、本年もたくさんのご応募と推薦コメントをお寄せいただきました。一般読者の方々からいただいたアンケートを元に、出版社、紀伊國屋書店社員による推薦を加味して事務局にて集計し、ベスト30を選定いたしました。
*2021年11月以降に刊行された人文書を対象とし、2022年11月1日~11月30日の期間に読者の皆さまからアンケートを募りました。当企画における「人文書」とは、「哲学・思想、心理、宗教、歴史、社会、教育学、批評・評論」のジャンルに該当する書籍(文庫・新書も可)としております。
スタッフの熱意が詰まった小冊子、著者の特別寄稿もお楽しみください! ※「紀伊國屋じんぶん大賞」店頭配布小冊子に関する誤植のお詫び・訂正のお知らせ
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「紀伊國屋じんぶん大賞2023」ブックフェアは、2023年2月に全国の紀伊國屋書店にて開催し、期間中、受賞者の著者サインまたはイラストがプリントされた特別レシートを発行いたしました。※終了しました。
紀伊國屋じんぶん大賞2023贈賞式は、2023年2月28日(火)に新宿・紀伊國屋ホールにて開催いたしました。
当日の様子はこちらからご覧いただけます。⇒受賞者からのメッセージ「キノベス!2023/キノベス!キッズ2023/紀伊國屋じんぶん大賞2023/第10回 紀伊國屋書店ベストセラー大賞」贈賞式の模様を公開いたします(2023年2月28日 紀伊國屋ホール)
▼「紀伊國屋じんぶん大賞2023」選考委員が選ぶ! 選外この1冊
*推薦コメントの執筆者名は、一般応募の方は「さん」で統一させていただき、選考委員は(選)、紀伊國屋書店一般スタッフは所属部署を併記しています。