紀伊國屋書店:紀伊國屋じんぶん大賞2024 読者と選ぶ2023年の人文書ベスト30

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紀伊國屋じんぶん大賞2024 読者と選ぶ2023年の人文書ベスト30

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読者と選ぶ2023年の人文書ベスト30「紀伊國屋じんぶん大賞2024」
(2022年11月~2023年11月/第14回)

「読者の皆さまと共に優れた人文書を紹介し、魅力ある『書店空間』を作っていきたい」――との思いから立ち上げた「紀伊國屋じんぶん大賞」。おかげさまで、毎年たくさんのご応募と推薦コメントをお寄せいただいております。一般読者の方々からいただいたアンケートを元に、出版社、紀伊國屋書店社員による推薦を加味して事務局にて集計し、ベスト30を選定いたしました。

大賞『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』特別寄稿

小野寺拓也さん

 「歴史研究者の仕事は、事実があったかなかったかを見極めて社会に提示すること。それ以降は人びとが各自で判断すればよい」。そう考える方は少なくないのではないでしょうか。確かに事実の確定は重要です。でもそれ以上に歴史研究者にとって重要な仕事は、その事実を「文脈の中に位置づける」という営みだと思います。その事実が時代や社会全体の中でどのような意味を持っていたのかを、適切に判断すること。そのために必要なのが、それまでの研究の膨大な積み重ねと向かい合うことです。そうした「研究史」の蓄積を無視してしまうと、どんな優れた分析能力をもつ研究者であっても、全体像や文脈が見えないまま、個別の事象について誤った判断をしてしまうことになります。

 ナチズムを例にしながら、「歴史的に物を考えるとはどういうことなのか」をできるだけ多くの人びとに伝えたいというのが、私が本書を執筆した一番の動機でした。多くの読者に支えられてこの賞をいただけたことを、何よりも嬉しく思います。

小野寺拓也さん

小野寺拓也(おのでら たくや)
1975年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。 博士(文学)。昭和女子大学人間文化学部専任講師を経て、現在、東京外国語大学大学院総合国際学研究院准教授。専門はドイツ現代史。 著書に『野戦郵便から読み解く「ふつうのドイツ兵」――第二次世界大戦末期におけるイデオロギーと「主体性」』(山川出版社)、訳書にウルリヒ・ヘルベルト『第三帝国――ある独裁の歴史』(KADOKAWA)などがある。


田野大輔さん

 「ナチスは良いこともした」という主張が後を絶たないのは、自分の願望に合わせて都合よく歴史を語ろうとする姿勢があまりにも広まっているからです。人それぞれの立場から過去を見ようとする姿勢は、ある程度は避けられないものですが、だからといって、好きなように歴史を切り取って叙述してよいというわけではありません。著しく妥当性を欠いた恣意的な主張に対しては、専門家がきちんと反論しておかなければならない。さもないと、社会を成り立たせている基本的な価値観まで損なわれてしまう。私が本書を執筆しようと考えた理由には、そうした危機感がありました。

 本書の刊行後、「歴史修正主義と闘う武器を与えてもらった」という感想が寄せられました。巷に蔓延るナチス肯定論に自信をもって反論する手段を提供すること、それが本書を執筆した最大の狙いでしたから、まさに意を得たりという思いです。社会の基盤を守るための「雪かき」にも似た仕事でしたが、そうした努力が多くの方々に支持され、このような賞までいただけたことを、とても心強く思っています。

田野大輔さん

田野大輔(たの だいすけ)
1970年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学。
博士(文学)。大阪経済大学人間科学部准教授等を経て、現在、甲南大学文学部教授。専門は歴史社会学、ドイツ現代史。
著書に『ファシズムの教室――なぜ集団は暴走するのか』(大月書店)、『愛と欲望のナチズム』(講談社)、『魅惑する帝国――政治の美学化とナチズム』(名古屋大学出版会)などがある。

紀伊國屋じんぶん大賞2024(小野寺拓也さん・田野大輔さん)

*「紀伊國屋じんぶん大賞2024」は2022年11月以降に刊行された人文書を対象とし、2023年11月1日~11月30日の期間に読者の皆さまからアンケートを募りました。
*当企画における「人文書」とは、「哲学・思想、心理、宗教、歴史、社会、教育学、批評・評論」のジャンルに該当する書籍(文庫・新書含む)としております。
*推薦コメントの執筆者名は、一般応募の方は「さん」で統一させていただき、選考委員は(選)、紀伊國屋書店一般スタッフは所属部署を併記しています。

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「紀伊國屋じんぶん大賞2024」選考委員が選ぶ!選外この1冊


紀伊國屋じんぶん大賞2024
(2022年11月~2023年11月/第14回)

🥇 1位 🥇

推薦コメント
今年の必読書と言える一冊です。「ナチスは良いこともした」といったセンセーショナルなフレーズをSNS等で見かけることもあるが、なぜそれは誤りと言えるのかを丁寧に解説しています。本書は福祉・経済政策、政治的な行いには意図があり、必ずしも表面には見えてこない思想・結果もあるのだと教えてくれます。歴史修正主義によって過去の事象が捻じ曲げられようとした時、いつでも〝検証〟できる市民でありたい。読後そんな思いを強く持ちました。
鈴木郁美/イトーヨーカドー川崎店
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「確かに悪いこともしたけど、良いこともしたよね」という考え方に潜む危うさを教えてくれる一冊。悪が際立っていると、「良いこと」が逆に目立ってしまうが、そもそもそれは本当に良いことなの? 根っこは悪に基づいているのでは? ということを丁寧に検証していく。ぜひ学生さんに読んでもらいたい本。
千葉拓/横浜店
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ナチスに関して人口に膾炙している俗説を明快な枠組みと研究の蓄積によって丁寧に検証していく良書である。歴史的事実を「事実」「解釈」「意見」の三層に分けて考えるという試みは、人文科学領域における基本的なパースペクティブになりうる重要な指摘と思われる。
匿名希望さん(一般)
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限られた頁数で研究者の知見と成果に触れることができる入門書のお手本のような一冊。歴史修正主義や反ポリコレに対峙するためにこうした丁寧かつ根気強いアプローチが欠かせないことを実感。コメント付きの巻末のブックガイドも理解深化に役立ちそう。
伊藤弘さん(出版関係)
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まさにいま必要な問題意識について、客観的かつ読みやすい内容を、手に取りやすい形式で出版され、素晴らしいと感じました。このタイトルのおかげで、特定の意見や思想を持つ人だけではなく、幅広い人たちが同書を手に取ることができたと思います。
えみさん(一般)
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本書は「ナチスは良いことよいこともした」という言説を、歴史学的アプローチで丁寧に検証している。都合よく歴史を切り取ることや歴史背景への不理解に対して、歴史学は事実ではなく事実性に立脚しなければいけないと説く。あらためてナチスについて学ぶことはもちろん、歴史学の入門書として、廉価なブックレットという体での刊行は喜ばしい。
(選)西口正一郎
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🥈 2位 🥈

推薦コメント
フィリピン・マニラのボクシングキャンプ、再開発のために立ち退きを迫られたスクオッター地区の住人たち。自己のタイミングで生きることのできない貧困世界の人びとは、降り掛かってくる事態の中をいかにして生きているのか。彼らの視点からだからこそ見えてくる貧困と構造的暴力を描き出すエスノグラフィー。
(選)津畑優子
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社会学を志す学生、研究者のみならず、多くの人びとの手にとってほしい一冊。構造的暴力や権力によって自らの「タイミング」を奪われたフィリピンのスラム住民やボクサーに決して同情するのではなく、かれ/かのじょらの実践や抵抗を明らかにしようとする著者の姿から、われわれは何を学べるだろうか。
ゆーさん(一般)
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「書くことは考えることである」という印象的な一文から始まる、記念碑的なエスノグラフィー。フィールドに身をひたし、時間のディテールを確実に描いていく。血の通った文体、引用される文献、「洗濯」に代表される豊かな注、どれをとっても文句のつけようがない、素晴らしい1冊。
柴山浩紀さん(出版関係)
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マニラの貧困世界を生きる人々に流れる「アウェーの時間」に着目した一冊。同情するのではなく、その状況と並走しそこから見える世界をつぶさに描き出す点が本書の特色である。困難な時代を生きてゆくには、「アウェーの時間」を生きる人々のように、自らが飲み込まれた世界を自らの手で対象化することが重要なのではないかと考えさせられた。
(選)山田萌果
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🥉 3位 🥉

推薦コメント
性的マイノリティーに対する認識は近年深まりつつある一方で、誤った知識による当事者への攻撃も絶えない状況が続いています。その中でもSNS上などで度々攻撃の対象となるトランスジェンダーについて簡潔にまとめられた本です。新書という手に取りやすい判型であり、その後より専門的な分野を学ぶきっかけともなる良書だと思います。
ゆうさん(出版関係)
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トランスジェンダーに対する差別の高まりに心を痛めているものの、どこから勉強したらよいのかわからず、どうしようかと思っていた折に、この本が出版されました。あまりに悲惨な統計データの数々は読んでいて苦しくなりますが、様々な論点がコンパクトにまとまっていて、入門書としてとても良かったです。
聶さん(一般)
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最初に知ってほしいこと。この一言に、尽きている。平明で、噛んで含めるような、冷静な筆致に、「これは、最低限の知識」「話はそれからだ」という思いが伝わってくる。「入門」の書がいま、書かれた意味、書かれなければならなかった意味を、われわれは深く受け止めなければならない。
Fuppuさん(一般)
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4位

推薦コメント
多様性という言葉が飛び交うなか、不寛容だと感じることも多いこの頃、訂正可能性の哲学にはそれを乗り越える力があると感じました。どう生きるかという個人的な問題から国家はどうあるべきかという大きな問題まで、多くの人が本書を読み、考えることがよりよい時代を創る糧になると感じました。より多くの人に手にとっていただけますよう、推薦致します。
長谷川名さん(金沢ビーンズ明文堂書店)

5位

推薦コメント
冒頭から、ハラリやジャレド・ダイアモンド、スティーヴン・ピンカーなど、日本でも人気のある著者たちを「ポップ人類史」と一刀両断。未熟でも無垢でもない、遊戯可能性に満ちた人類の祖先の姿を縦横無尽に描き出す。これからの人類史は、本書を避けて通ることはできないだろう。
斎藤哲也さん(出版関係)

6位

推薦コメント
ここまで書けるのかと素で驚いた一冊。現場に深く入り込んだ著者の文と写真は、暗黙知そのもののような庭の美学を実践の克明なドキュメントの中で表現する。一つ一つの石の配置、道具や環境との向き合い方を通して、庭師が庭をつくるというより「あってないような庭」が立ち上がるプロセスに立ち会える幸福。
(選)野間健司

7位

推薦コメント
停滞感が覆う資本主義世界に対する処方箋。限りある地球の資源を無限に収奪する資本主義への対案としてのマルクス再解釈。未来への希望をつなぐかなりスケールの大きな論。正直難解ではあるが確かに内在する可能性を感じた。
(選)生武正基

8位

推薦コメント
様々な形で生きづらさを生み出す「能力社会」について、まさにときほぐしながら、立ち止まって考えるきっかけをくれた。絶対的なものとして受け止めがちな「能力」を問い直し、社会を見つめ直す一冊。やわらかな文体で、足元から社会のあり方を考えていくような視点が光っていた。
匿名希望さん(一般)

9位

推薦コメント
サントリー学芸賞を受賞し、様々な知識人から絶賛され話題になった『土偶を読む』を徹底検証した一冊。果たして土偶の謎は解明されたのか。専門知軽視へ警鐘を鳴らし、現代の考古学研究の最前線も俯瞰できる意欲作。
坪井謙典/天王寺ミオ店

10位

推薦コメント
発売即一気読み。道徳の教科書、聖人、正しすぎて何も言えなくて困る、といったイメージで勝手に塗り固められていたナイチンゲール像を、とにかくぶち壊してくれる一冊。ガラスの天井どころか時代の天井を破った人とはどういうものか、相変わらず破壊力と魅力あふれる文体で描ききっている。読み始めたら止められない作品。
岸山征寛さん(出版関係)

11位

推薦コメント
依存症とは何か? 精神科医であり依存症から回復した当事者でもある筆者は、その答えを見い出すべく、科学や政治、経済、哲学、宗教、そして、それらの間の「溝」にまで目を向ける。依存症の歴史を訪ねることは、自分は何者か、何を欲しているかを問う、著者自身を訪ねる旅でもあった。そこには根深い執着もあったといい、回復過程の10年という歳月が、調査・執筆のために当てられた。『ニューヨーカー』ベスト・ブックス・オブ・2022に選出された1冊。
あんさん(一般)

12位

推薦コメント
日本の右派についての調査・報道・研究において、右派がジェンダーにまつわるトピックを集中的に攻撃してきたことはしばしば見過ごされてきた。本書は、圧倒的な情報量でその欠落を補ったもの。現在のトランス排除・性教育攻撃を理解するためにも本書から学ぶべきことはあまりに多い。
高井ゆと里さん(一般)

13位

推薦コメント
様々な主張が正義に紐づけられ、他者との対立に安易な正当性が与えられてしまう。これは、非常に憂慮すべきであり、SNS的なコミュニケーションの一形態に思われる。この状況をうまく描き出しながら、公正に関する哲学的議論と接続させる上手さ、その説明の簡便さとわかり易さに脱帽するばかりです。
おもむきむきさん(出版関係)

14位

推薦コメント
「一汁三菜」を毎食つくるのは難しい。ついおざなりにしがちな食生活だが、まずは考え方を改めることから始めてみたい。自分のために料理をつくるということは、自分の人生としっかり向き合うということだ。せわしない日常の中で、ふっと肩の力が抜ける現代人への希望の書。
(選)池田匡隆

15位

推薦コメント
『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』の名コンビを中心とした、もう一つのナチス論。〈悪の凡庸さ〉という概念は、アイヒマンに対し歯車的な誤ったイメージを喚起していたが、シュタングネトや著者らによる再検討を経て、実はそのような人物ではなかった可能性が導かれる。第二部では、学術的な討論の様子がありのままに伝えられ、こちらも興味深い。
(選)小山大樹

16位

推薦コメント
ありふれた日常生活の中での、何気ない人との言葉のやり取りに潜む心の動きを言語化してくれる。特に意識することなく私たちが行なっている〈ふつう〉の相談が持っている深い慰めと励ましの力。人間の心の働きを再発見させてくれる一冊。
(選)林愛希生

17位

推薦コメント
「しっそうは、失踪と疾走のあわいに位置する。」知的障害者の兄とそのしっそう、そしてわたしの物語。人類学、障害(学)、ボランティア、農業、そして既に忘れられかけているコロナ禍の日常が、兄のしっそうを軸に時空をあちこちしながら綴られていく。ラスト数ページの余韻が忘れがたい。
(選)松野享一

18位

推薦コメント
ロラン・バルトやフーリエ、石原吉郎といった書き手たちの思考を丁寧に辿りながら、様々なテクストに潜む「食客」や「パラサイト」という不思議な存在から社会のあり方や生き方を考える本です。「読むこと」の倫理を生きる著者の姿勢に感銘を受けました。
KMさん(出版関係)

19位

推薦コメント
お二人の対談はセクシャルマイノリティ当事者の実感が溢れており、ジェンダーの知識に乏しい自分でも、引き込まれて一気読みした。性、恋愛、結婚、家族、子孫、幸福など様々な切り口で話題が展開していくので、読者がどういった属性であれ、自分との比較で興味関心を持ちやすいと思う。「クィア」の意味を知りたい方に、この1冊から入門してほしい!
ペンネーム希望さん(出版関係)

20位

推薦コメント
オノマトペを皮切りに、子どもはどのように言語習得するのか、なぜ人間は言語を持つのかといった「言語の本質」に迫る一冊。何の知識も持たずに、一から言葉を吸収していく子どもの学習能力は本当にすごい。いつか自分が人の親になった時に、きっとこの本を思い出すんだろうなと感じました。
竹谷かれん/関西ライブラリーサービス部

21位

推薦コメント
当時の女性記者たちが自らの存在意義を示し、居場所を獲得するためのなりふり構わぬ『闘い』の痕跡を、当時の掲載記事から丹念に拾い集めた一級の資料。でありながらも、なんとなく笑えたり情けなかったりするペーソスが詰まっている。近代女性史であると同時に、日本のジャーナリズム黎明期の批判的検証としても大変興味深い。
Besucherさん(一般)

22位

推薦コメント
LGBTQという言葉に代表されるように様々な性的指向に対する知識は広まってきつつあります。その中ではまだそれほど知られていないアセクシュアルという性的指向について当事者のインタビューをまとめる形で紹介している画期的な本です。類書の少ない点も評価されるべき点だと思います。
ゆうさん(出版関係)

23位

推薦コメント
日本の性教育をまとめた本として、これ以上のものはないと思います。私たちが性教育を語るとき、自分たちの受けてきた時代を基軸にしてしまうものですが、本書を読むと、性教育の歴史というのはもっともっと分厚いということがわかります。「なかった」と思うとき何が起こっていたのか、今後はどうなっていけるのかが網羅的に書かれているほか、希望も感じる一冊です。
よかちさん(一般)

24位

推薦コメント
「もう海には住めない――」人新世の時代、ソロモン諸島で「海の民」にとっての自然をいかに民族誌的に記述するか、という意欲作。海面上昇の現実のなか、島の日常で進行しつつある感覚を「不穏」と表現し、人類学の新しい知見・理論を反映しつつも、フィールドワーク日誌や人々の生活の様子が随所に描写されることで、強く想像をかき立てられ、その世界にひき込まれた。
大田光穗/ブランド事業戦略部

25位

推薦コメント
これまで何の疑いもなく「戦後に現れたもの」とされてきた「消費者」もしくは「消費社会」というものを、近世から明治にかけての概念の発生からその定着までを描き、戦前から戦後を貫く消費者像を浮かび上がらせた力作であり、現代社会を考えなおすうえでも必読の書。
SOUZさん(出版関係)

26位

推薦コメント
コモンの再生などオルタナティブが提示されつつも、心のどこかで「資本主義はまだ大丈夫」と思っている方々へ(あるいはそんなこと全然考えてもいない方々へ)。コロナ禍を経た、資本主義オワコン論の決定版!
(選)髙部知史

27位

推薦コメント
日常に張り付いている「謝罪」という行為、その「ごめんなさい」言葉だけではとらえきれないものがありますが、冷静に腑分けしてみるととても奥深くて面白かったです。
荒木駿さん(出版関係)

28位

推薦コメント
自由と公的権力との相互関係性、および、消費と浪費との違いについて、哲学的に考究している講義録として読めて、質疑応答も載っているので、専門性は高いが同時にかなり読みやすい本でもある。
@weary_samuraiさん(一般)

29位

推薦コメント
それなりの分厚さがあるが、縁のある地域から読んでも良し、今まで行った場所、これから行く場所について読んでも良しと、とにかくどこから読んでも面白い。著者自身や旅の同行者の深すぎる知識と、先々で起きるトラブルの両方を楽しめる良質な紀行文。
倉橋奈生/学校教育営業部

30位

推薦コメント
「障害」があることと「女性」であることの二つの交差する地点にある人びとの語りから、差別を生み出す社会構造をあぶりだす。目を向けられることのなかった彼女らの「生きづらさ」が言葉にされること自体に大きな意味があり、本書は確かな第一歩となっている。
(選)山田萌果

「紀伊國屋じんぶん大賞2024」選考委員が選ぶ!選外この1冊

推薦コメント
日々ネット上でつぶやかれる何万もの「死にたい」を、社会の視点からみつめた一冊。「死にたい」を解きほぐすためには、「死にたい」を言葉にすることが可能な親密な関係が必要である。痛ましい事件を繰り返さないために、どのような人間関係を構築するのか、どういった社会を目指すべきなのか、改めて考えたい。
山田萌果/札幌本店

推薦コメント
著者が身につけた哲学を実践する様子が鮮明に描かれている。哲学の抽象的な議論と日常生活の具体的な話が高いレベルでシンクロしていて魅力的だ。また、言語哲学を用いることで、会話や映画、漫画にゲームなどの一場面が単なる印象に留まることなく、深い理解を伴う現象として立ち現れていく様が爽快だ。
林愛希生/札幌本店

推薦コメント
人気YouTubeチャンネル「ゆる言語学ラジオ」の初書籍。今までも定期的に「日本語ブーム」は来ていたが、この2~3年の言語学・文化人類学ブームは彼らの影響によるところが大きいのではないだろうか。アカデミアに属さない在野の「言語オタク」がこのようなブームを起こせることが昨今の時代を象徴している気がする。
東二町順也/新宿本店

推薦コメント
人類学という学問が歩んできた歴史をとおして、問うことの大切さを深く考えさせられる一冊。西欧中心主義のもと飛躍的に発展した学問がある一方で、人類学者たちは自分たちの役割に対して、時に自己批判を繰り返しながら真摯に向き合ってきたことがわかる。これまでの世界があたりまえではないこと、これからの世界をどうしたいのか、私たちも問い続けなければならない。
西口正一郎/横浜店

推薦コメント
「差別する人」に焦点をあてることで浮かび上がってくるものは何か。丹念な実証研究に基づく知見は説得力にあふれる。理論書も大事だが、実証研究の大切さにあらためて気づかされる佳作。
大籔宏一/梅田本店

推薦コメント
「15歳から」とのタイトルから中高生向けの本と侮ってはいけない。中流層が激減した現代日本において、社会保障は一番身近なセーフティーネットであり、われわれ大人こそが読むべき本である。本書に登場する10人のストーリーは決して教科書の題材などではない。明日の自分だと想像することも本書の場合は特に大切だろう。巻末の相談窓口リストは、自宅玄関の壁に貼って毎日見ることをお勧めする。
武内一貴/グランフロント大阪店

推薦コメント
前作「マザリング」で衝撃を受けた中村佑子さんの新刊。ヤングケアラーを取材していく中で、著者が自身の傷と向き合い葛藤する様が赤裸々に綴られる。自己の消滅と保存を繰り返しながら、犠牲や依存を寄りかかりあって行う。ケア的主体の本質にじっくりと向き合った良書だった。
池田匡隆/ゆめタウン下松店

推薦コメント
今年の大賞はナチスに関する歴史書となったが、こちらは細部から同テーマに向かう一冊。特異な美術史家として知られるディディ=ユベルマンによる、アウシュヴィッツ=ビルケナウ探訪記。自身もユダヤ人である著者が、その場所に残された過去の痕跡を写真と文章によって辿る。やや難解な著者の方法論の入門としても読める。
藤本浩介/シンガポール本店

推薦コメント
ホラーやオカルト、特に心霊ものが大好き。でも幽霊なんて本当はいないと思ってるし、霊感はただの気のせい・思い込みだと思ってるし、心霊写真は全部合成。だからこそ、合成っぽくなくて「本物にしか見えない」映像や心霊写真は怖いしワクワクする。心霊に対してこんなスタンスの方へ、本書を強烈におススメします。心霊スポットがどのように語られ/出来上がるのかの道筋を、民俗学のアプローチで解き明かします。
小山大樹/北海道営業部

推薦コメント
ひねくれ者、天の邪鬼、へそ曲がり。みんなと違うオレってなんかカッコイイ? ……マジョリティに与することを否定する理由は何か? また社会的な存在意義とは? 著者とともにタイムマシンに乗り、今ではネガティブな印象も強い「逆張り」について、2010年代を巡る冒険はとても楽しいものでした。
髙部知史/京都営業部

推薦コメント
ドイツが専門の「文学研究者」と発達障害の「当事者研究者」、2つの顔を持つ著者。日本各地をテーマに現在―過去を渉猟し、様々なテクストを引用しつつ、時に俯瞰し、時に寄り添いながら「脳の多様性」を論考する一冊。生きづらさを克服するヒントが得られるかも。
滋野峻也/京都営業部

推薦コメント
習い事として人気のあるピアノ。でも、なぜフルートでもトランペットでもないのだろう? そのルーツを文明開化期から丁寧に紐解く。良妻賢母思想との密接な結びつきになるほどと思い、一方で、専門職として活路を見出そうと希望や葛藤を抱き苦悩する女性たちに心を動かされた。西洋音楽の受容をジェンダーの視点から描く非常に興味深い一冊、おすすめです。
津畑優子/学術和書部

推薦コメント
とてもわかりやすいことばで、でも、わかりやすくはない、なにかひじょうに大切なことが語られている。トランスジェンダー/ノンバイナリーの当事者による、時にとまどうくらい赤裸々で、誠実なナラティブ/テクストは、読む者の同一性=アイデンティティを激しく揺さぶる。あなたはどうなの、と。
松野享一/学術和書部

推薦コメント
索引は、中近世の情報爆発の中で発達し、マジメな読書家の懸念、図書館学の夢を背負って、今日のネット検索にいたる。書物史の才人による本書は、情報論の視野と文学的な人間探求を兼ね備えた稀有な読み物。知と効率を求める人間たちの面白エピソードが満載。本文を読み終えた後も……本書の主役は索引、その心憎い仕掛けをお楽しみあれ!
野間健司/学術洋書部

推薦コメント
「尊王攘夷」対「公武合体」など、学校で習った歴史認識が研究の最前線では覆され、同時代の国内情勢は世界史の文脈で把握されるようになっている。中堅若手の研究者たちは、史観に拠ることなく実証研究を進め、日本の歴史をダイナミックに叙述していることをぜひとも知っていただきたい。
山﨑均/西日本設備営業部

推薦コメント
聖書が……進化論が……という宗教系海外ニュースはたまに聞く。だがその宗教論争にこんな歴史的経緯があり、これほど激化しているとは知らなかった。無神論者と創造論者、両者の対立は言説の域を越えて明らかに現実に影響を与えるところまできている。また、海外宗教事情を知るだけでなく、日本社会の宗教に対する姿勢とその位置を再確認することができる今こそ必要な本。
生武正基/営業企画部

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