紀伊國屋書店スタッフが全力でおすすめする2023年のベスト30「キノベス!2024」
(2022年12月~2023年11月/第21回)
2003年に始まった「キノベス!」は、過去1年間に出版された新刊(文庫化タイトル除く)を対象に、紀伊國屋書店スタッフが「自分で読んでみて本当に面白い、ぜひ読んでほしい本を選び、お客様におすすめしよう」という企画です。毎年、選考委員が、紀伊國屋書店の全スタッフから公募した推薦コメントを熟読し、決定しています。 当社のスタッフが自信を持っておすすめする本。店頭で、ぜひお手に取ってご覧ください。
キノベス!2024 第1位『成瀬は天下を取りにいく』
宮島未奈さん特別寄稿『成瀬は天下を取りにいく』の第一話は「ありがとう西武大津店」です。2020年に閉店した実在のデパートを舞台に、中学二年生の成瀬あかりがローカル番組の生中継に映り込みにいくというお話です。
カバーイラストには在りし日の西武大津店が描かれています。わたしが2020年に撮った写真をもとに、イラストにしてもらいました。「44年間のご愛顧、誠にありがとうございました」の赤い横断幕が閉店間際であることを伝えています。
出版後、当時の西武大津店の店長にお会いする機会がありました。横断幕を張るとき、「この写真がどこで使われるかわからないから、きれいにまっすぐ張ろう」と言っていたそうです。その写真が小説のカバーイラストになり、10万部も刷られることになろうとは誰が想像したでしょうか。西武大津店にはかつて紀伊國屋書店がありました。隣の大津パルコにも紀伊國屋書店があったのですが、こちらも2017年に閉店しています。できることならご当地大津の紀伊國屋書店に『成瀬は天下を取りにいく』が並んでいるところを見たかったのですが、叶わぬ夢となりました。
しかしながら、全国の紀伊國屋書店が『成瀬は天下を取りにいく』を応援してくださいました。Xにアップされた写真を見ていると、宮城にも、埼玉にも、東京にも、大阪にも、岡山にも、福岡にも、成瀬がたくさん並んでいました。西武大津店に本を並べることはできませんでしたが、全国の書店に西武大津店を並べることができたのです。おまけにキノベス!2024第1位というすばらしい栄誉にあずかりました。おすすめしてくださったスタッフの皆さまに感謝申し上げます。
『成瀬は天下を取りにいく』の続編、『成瀬は信じた道をいく』にはさらにパワーアップした成瀬あかりが登場します。二百歳まで生きると豪語する成瀬ですから、その歴史はこれからも続いていくことでしょう。今後とも、末永くよろしくお願いします。
Ⓒ新潮社宮島未奈(みやじま みな)
1983年静岡県富士市生まれ。滋賀県大津市在住。京都大学文学部卒。2021年「ありがとう西武大津店」で第20回「女による女のためのR-18文学賞」大賞、読者賞、友近賞をトリプル受賞。2023年、同作を含む『成瀬は天下を取りにいく』でデビュー。
▶2024 小冊子 PDF版 ▶キノベス!キッズ2024 ▶紀伊國屋じんぶん大賞2024
▼「キノベス!2024」選考委員が選ぶ!2023年の収穫
ベスト30を選んだ選考委員に、キノベス!2024では惜しくもランク外になってしまったものの個人的にはとってもオススメしたい1冊を挙げてもらいました。
キノベス!2024
(2022年12月~2023年11月/第21回)