中国語を一通り勉強した。さて、台湾の原書を読んでみたいけど何から手をつければ?
台灣紀伊國屋書店の本好きスタッフに、手に取りやすいマンガ・文学・人文分野から、「これ面白い!」を選んでもらいました。最初の一冊のご参考に!
*書籍の紹介は刊行の新しい順です。
*価格は2023年7月時点での概算価格です。
為替レートにより変動しますのでご承知おき下さい。
中文書のご注文はお近くの紀伊國屋書店各店舗で商品コードをお伝え下さいませ。
南方,寂寞鐵道 我們在時光列車上相遇
蕭菊貞/大塊文化
蕭菊貞監督は2017年以降、中央山脈東側の南迴線のビデオ撮影を続け、ドキュメンタリーフィルム《南方,寂寞鐵道》を製作。そしてこの屏東と台東を結ぶ南迴線は2020年、ついにディーゼル車両の運行を正式に停止した。監督が撮影過程と取材内容をまとめたのが本書である。本書には鉄道電化前の沿線の美しい風景、そして台湾人とこの鉄道との物語が書き留められている。
張瑋/中文部
2023年6月刊行
4,682円
採集人的野帳 (01)-(03)
英張/蓋亞出版
1924年、今の台北植物園の内に、台湾最古にして最も豊富な資料を所蔵する植物標本館「腊葉館」が落成しました。台湾原生植物の調査が盛んになった年代で、採集家たちがどのような苦労を経て薬草や草花を標本へと作っていったのか。採集から鑑定、研究と記録、一つ一つの標本を作るのに、採集家や研究者の溢れんばかりの夢や熱量が垣間見えてきます。本作品では、そのような植物採集家の知られざる日常を描き、大正13年の台湾原生植物研究の大躍進時代へいざないます。
何安琪/微風店
2021年1月〜2023年2月刊行
2,032円(01・02)・2,189円(03)
素直設計Book Design 楊啟巽作品集1996-2022
楊啟巽/大辣
著者が自ら装丁した本のデザインを一冊にまとめ、デザインした当時のコンセプトやその見方を解説。書店で働く者としては、この一時代の本の出版史をあらためて眺めるよう。この本を通して、心動かされる本とのあらたな出会いがあるといいなと思います。
張瑋/中文部
2023年2月刊行
15,633円
走向內在 四國遍路、聖雅各朝聖道、AT&PCT,三大洲萬里徒步記
Josie/大塊文化
世界の有名な4つの長距離トレイル(四国遍路、サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路、アパラチアン・トレイル、パシフィック・クレスト・トレイル)の踏破記録。 実用的な情報を提供するだけでなく、旅の途中で遭遇した出来事も描いており、旅に出ようという人には参考書としても読めるし、居心地のよい安全圏から跳び出す勇気のない人には旅文学としても楽しめます。
張瑋/中文部
2023年2月刊行
3,127円
『守娘 (上+下)完』
小峱峱/蓋亞出版
富家の娘である潔娘は婚期に達するも、幼少より奔放な彼女は纒足もしておらず、嫁に行くつもりもない。兄嫁を見ていても、嫁いでからは男児を産めないことに日々苦しむばかりで、女の子を産んだ直後にさえ、次には男児が産まれるようにと「換胎」という民間治療まで施されるのである。ある日外出の折、潔娘は見えない霊に憑かれ、また思いもよらず不思議な女道士に出会うことになるが…。清朝時代の台湾の女性に対する蔑視や陋習からは、女として生まれる事の虚しさややるせなさを感じさせる。やや重いテーマだが、時代背景や服飾史に関する作者の周到な調査に、オカルトな題材を組み込んだ事で、とても内容が解り易くなっており、ぜひ皆さまにお薦めしたい一作です。
王秀分/海外部
2022年10月刊行
3,674円
秋刀魚變溫柔了
盧怡安/重版文化
遊び心ある文章に隠れた奥深さ:のんびりゆったりとした文章で日常の食を描いた本書は、行間にたくさんの料理のコツを隠し、本書ならではのレシピも加え、気楽に読書を楽しむと同時に、驚きを解き明かす喜びも味わうことができます。穏やかなお茶の味わい、立ち上る焼き魚の匂い、野菜を炒める熱気、鮮やかな表現に思わず喉が鳴りそうです。日常を信仰に昇華させ、家庭料理がもたらす安らぎと趣。著者が綴る言葉の魅力は、自身の目を通して読むことでより一層その独特な癒しの力を感じることができるでしょう。
張倫瑋/微風店
2022年10月刊行
3,283円
異人茶跡 (01)-(05) 完
張季雅/蓋亞出版
1865年、19世紀頃の台湾はいかにして烏龍茶を世界へと広めていったのでしょうか?本作品では茶葉の栽培、製茶、鑑定、包装出荷までを描き、台湾の烏龍茶が普及していく様子を見ることができます。お茶商売を思い至った英国商人トッドと厦門の買弁李春生らや、茶農家との協力、艋舺地方の勢力争いなど、「ご当地感」満載な作品です。血なまぐさい過激な内容は無く、登場人物のやり取りや感情変化が鮮明に描かれている、とてもおすすめできる一作です。
何安琪/微風店
2013年7月〜2022年7月刊行
1,720円(01)・1,876円(02)・2,032円(03)・2,189円(04)・2,345円(05)
揚子堂糕餅舖
光風/蓋亞出版
笑美子の「ごめんなさい」の一言で、京都の和菓子店でのワーホリを引揚げ、地元台中に帰り叔父のお菓子屋で働く事になった徐安群だが…。この本は太陽餅と和菓子をめぐり、優しく温かみのあるタッチで台湾と日本の菓子職人の世界を描き、伝統の継承と個々の夢の追求は相補って成り立つもので、どちらも粘り強さと決意が必要だという事をゆっくりと伝えてくれます。たとえ誰であれ、どんな道であれ、自分の人生の夢を懸命に追い求める事こそが大事であると教えてくれる、迷いから抜け出し、安定へと向かうための心の糧になる一作です。
劉美芳/中文部
2022年7月刊行
2,345円
一周七天,晴天雨天 寫給每一個為生活努力的你
yoyo/今周刊
人気インスタグラマーによる、日常生活の見方を変える癒しのメッセージ集。この本には華やかな言葉や美しい言い回しはありませんが、心に響く言葉をたくさん見つけることができます。年を重ねて振り返り思うのは、「青春の素晴らしさは後になって分かるもので、まだまだ時間はたっぷりあると思っているうちに、突然、もうとっくにその頃には戻れなくなっている事に気付かされる」ということ。日々の生活には好い日も悪い日もあり、自分の課題は自分で対処し、たとえつらい事があっても自分を癒やすことを忘れずに、勇気を持って日常の生活に立ち向かわなくてはいけません。
劉美芳/中文部
2022年5月刊行
2,814円
如果理想生活還在半路
柯采岑/精誠資訊
私たちは変わりない日々を各々過ごしていく中で、これは自分が望んだ生活なのだろうか?生活とはなんだろうか?と考えてしまう事があるでしょう。たとえ簡素な生活でも、作者の優しく力強い言葉で描かれたさまざまな体験を経て、少しずつ成長して、少しずつ自分のことを好きになれる。生活とは、自分の愛する物事から、流れゆく時間を十分に楽しみ、大切に思う全てを慈しむ事を学ぶ事なのです。
張倫瑋/微風店
2021年7月刊行
2,970円
用一頓飯的時間旅行 享受美食,把小日子過得閃閃發亮
高靜芬/遠流
本作は、作者の溢れんばかりの情熱で描かれる食事の経験や豊富な知識によって、まるで共に食卓を囲んでいるかのように思えます。食事のひとときに、味や匂いを楽しみ、舌鼓を打つ。お腹を満たせば視界も開け、本作に込められた哲学も加え、知識の蓄えとなる。「お気に入りのキッチンカーに出会えたら、機会を逃さず、しっかりと味わうに限る。そうすればこの先、再び巡り合うことが無くとも、後悔はない。人生もきっとそういうものなのでしょう。」「同じお米でも、手間をかけて炊けばより美味しくなる。同じ日々でも、心を込めて過ごせば、より豊かなものになるでしょう。」
劉美芳/中文部
2020年8月刊行
2,814円
送葬協奏曲
韋蘺若明/蓋亞出版
思いがけず納棺師の仕事に就いた主人公の林初生。初めは接待業務くらいと思っていましたが、実際は葬儀に深く携わることになります。一つ一つの依頼案件を経て、初生は少しずつ成長していき、依頼主と家族の間の絆や思い、死に対するそれぞれ異なる考 え方を知っていきます。終章を迎えても、初生は自身の家族とのわだかまりを解決できないままでいますが、生きていればきっと可能性はあるはずです。台湾の葬儀文化について知りたい、あるいは身と心を癒したい方には、おすすめの漫画です。
王悅書/海外部
2020年2月刊行
1,876円
* 邦訳 『葬送のコンチェルト』 串山大・訳 KADOKAWA
2023 年6月刊行 880円
ISBN 9784046824257
小丑醫生 最後一次說再見
柯宥希(顆粒)・漫画/逢時・作/尖端漫畫
重病の妹が亡くなる瞬間、傍にいてあげられなかった17歳のヒロインは、妹がノートに残したメッセージを見て自責の念に苦しんでいたが、病院で子供達を楽しませるクリニクラウンに出会い、その道を目指す事を決心する。実際の特殊専門的な職業を元に描かれたもので、私もこの作品を読むまでは、こんな仕事があるなんて全く知りませんでした。これはホスピスの子供たちへの心のケアであり、その短い一生の中で、最後の時をより多くの笑顔とともに過ごせるのだとしたら、子供たちにとってのささやかな幸せと言えるのかも知れない。最後の「さようなら」をどう伝えればいいのかを問い続けるこの作品は、読んだ者の涙をそそります。すっきりと透明感のある絵柄に、恋愛要素もあり、美男美女も登場し、それでいて少し特殊なテーマの漫画を探している方におすすめです。
蔡依庭/海外部
2020年1月刊行
1,720円
大城小事 (01)-(05) 完
HOM(鴻)/時報
「都会の片隅で起こるこれらさまざまの小さな物語は、いずれもあなたと私の共通の人生経験かもしれない」─愛、友情、家族愛に関するささやかな出来事を積み重ね、ネット上での正義感や多様な家族構成などの問題も抱える台北の都市風景を描きます。こ のシリーズは全5巻から成り、生活、仕事、愛情などを含むさまざまな物語で構成されています。これらの物語は、あなたや私の身の周り、あるいは名も知らぬ街角で今まさに起こっている事かも知れません。そこにはこの社会に対する作者の期待も感じられます。気軽に読めると同時に、深く考えさせられる漫画です。
吳玉晴/海外部
2015年8月〜2019年7月刊行
2,110円(01・02・03)・2,345円(04)・2,501円(05)
傷心咖啡店之歌(50萬冊紀念版)
朱少麟/九歌
一度本を開き読み始めれば、瞬く間にその世界に引き込まれ、まるで自分も作中の一人になった気持ちになります。作者の描く人物はそれぞれ個性豊かで、読み進むうちに、共に迷い、共に失い、共に探し求める中で、自分が本当に望んでいるものはなんだろう?必要としているものはなんだろう?と作中の彼らと共に考えるきっかけを与えてくれます。またこの本を読むのは、長い旅をしているかのようで、旅路の途中ではしきりと行き先を思い描き、旅の終わりにようやく、大事なのは最後に得られた答えではなく、道すがらの風景であると思うことが出来るでしょう。
張倫瑋/微風店
2014年11月刊行
2,736円